ARアプリはどのように開発する?開発に必要なものや手順、注意点などを解説

近年、ARを活用したマーケティングに注目する企業が増えています。この記事では、ARアプリを開発し、自社のマーケティング戦略に活用したいという企業のマーケティング担当者に向けて、AR開発に必要なものや、ツール、開発の具体的な手順などについて解説します。自社でのARアプリを開発する際の参考にしてください。

AR開発に注目が集まる背景

ARが企業に注目されている要因の一つとして、マーケティングとの相性の良さが挙げられます。以下では、相性が良いとされる理由を解説します。

AR市場は成長している

総務省の「平成30年版 情報通信白書のポイント」によると、AR関連サービスの市場規模は、2020年には30億7,000万ドルと、2016年の約10倍以上も拡大すると予測されています。2021年現在、ARはおもに、企業のプロモーションやマーケティングなどの領域で活用されています。

※参考:平成30年版 情報通信白書のポイント|総務省

消費者に特別な体験を

ARは企業の情報を消費者に伝えるための手段としてだけでなく、消費者に対して特別な購買経験を与えます。特別な購買経験は企業のイメージアップや信頼性などにもつなげられるため、マーケティングにARを導入するのは効果的でしょう。

特別な購買体験を提供すべき理由として、次の3つが挙げられます。

①ブランドのこだわりやストーリーを伝える

1つ目は、企業やブランドの沿革やこだわりなどの抽象的な情報をわかりやすく消費者に伝えるという点です。

ARを活用し、消費者の目の前に存在するような映像をうつしだせれば、企業やブランドをより身近に感じてもらえるようになるでしょう。たとえば、ドミノ・ピザでは、「ワールド10AR」というARゲームを新商品のピザのプロモーションとして活用し、ユーザーに楽しい経験を提供しています。さらにARとインフルエンサーを組み合わせた展開をすることで、大きな話題を集めました。

②試着や試し置き

2つ目は、ファッションアイテムや家具などの試着・試し置きを体験してもらうためです。3Dによって、自宅に家具を出現させる、洋服の試着イメージを確認できるなどの体験を与えることによって、購買率の向上や購入後の返品率の低下も期待できるでしょう。

ニトリが運営する生活雑貨ブランド「デコホーム」では、好みのデザインのエプロンを自由に試着体験できるARアプリを提供しています。このように、ECサイトや小売ビジネスのネット販売などの分野では、コロナ禍で実店舗での買い物ができない消費者の囲い込み施策として、ARの需要が高まっています。

③IPやキャラクターの活用・愛着を生むコミュニケーション

3つ目は、オリジナルキャラクターなどの活用により、ユーザーとの双方向のコミュニケーションを実現できるためです。ARであれば、3Dでキャラクターを現実世界に出現させられるため、ユーザーにより愛着を感じてもらえます。

三重県四日市市では、自治体のマスコットキャラクターがスマートフォン画面のタップで反応を楽しめるAR体験を提供しています。

ARの代表的な認識方法

ARを現実世界に出現させる条件の違いによって、主に「画像認識型」や「空間認識型」「GPS型」などに分類できます。それぞれの特徴について解説します。

画像認識型(マーカー型)

画像認識型とは、動き出すトリガーとなる画像やバーコードを「ARマーカー」として設定し、マーカーに向けてカメラをかざして認識させることで、プログラムされた情報を表示させるARのことです。

以下の動画のように、静止画の画像で表現されたTシャツの柄がきっかけ(マーカー)となって立体的なオブジェクトが表示されるなど、印象的な体験を提供することができます。

 

3Dアニメーションの表示だけでなく、静止画が動画になったり、静止画を認識して音声を流したりすることも可能です。

マーカー型は、以前はQRコードのように四角形などの形状をした以下のような特定のマーカーを読み込ませることでARを出現させていました。

ARマーカー

ですが、2021年現在ではマーカーとなる画像の自由度が低くなってしまうのであまり使われていません。

現在は、上記の動画のように風景などの写真や印象的な画像を認識してARを出現させる方法が主流になってきています。静止画であればある程度は何でもARを出現させるきっかけとできるため、比較的自由度が高い方法といえます。ただし、旧来のマーカー型に比べると画像の特徴点が不十分(シンプルすぎる)だと体験が起動しないなどの問題が生じたり、あるいはARの出現までに時間がかかる傾向にあるなど注意点もあります。

そのため私たちARマーケティング・ラボでは、自由度の高い画像データを活用した画像認識AR(マーカー型)を開発する場合には一般向けにリリースする前に入念なテストをすることをお勧めしています。

空間認識型(マーカーレス型)

空間認識型とは、手元のスマートフォンで現在撮影している現実空間の机や壁などを認識して、その地形に合うように情報を表示するARです。

特別なマーカーなどを必要とせずに目の前の空間情報を認識して立体的な表現ができるため、ユーザーがどこにいてもすぐに体験できる手軽なコンテンツに向いている他、家具などのお試しに最適です。家具最大手のIKEAでは、いち早く空間認識を活用した家具の試し置きARを提供しています。

デメリットとしては、白い背景や単色の表面など認識しずらいケースがあることです。そのため、空間認識のARにおいても一般向けにリリースする前に入念なテストが重要です。

空間認識型(LiDAR型)

なかでも、「LiDAR(ライダー)」は、空間認識において注目を集めている技術の1つです。

LiDARには、センサーを使用して対象物との距離や空間上の配置場所、形状などを正確に把握できるという特徴があります。これまでのカメラの性能では把握できなかったほど詳細に空間を認識できるため、例えばTiktokでは以下のように人の肩やソファに紙吹雪が乗っかるような演出をLiDARを活用したARで展開して話題を集めました。

LiDARのメリットとしては、空間にどのようなものがあるのかを把握するためにこれまで必要だった「十分な明るさ」さえも必要とせずに空間を把握できるようなメリットもあります。iPhone12proではLiDAR技術が搭載されており、これからiPhoneやiPad端末を中心にLiDARを活用したさまざまなアプリケーションが登場してくるでしょう。

ロケーションベース(GPS型)

ロケーションベース型とは、その場所ならではの場所に紐づくAR体験を提供する方法です。GPSにより提供された位置情報を活用してARを出現させる方法が主なアプローチになります。実店舗を訪れた人を対象とした店舗限定のAR体験などでよく活用されています。そのほかでは、観光名所などの出現エリアを絞り込んでARを出現させる観光目的のコンテンツや、道案内アプリなどにも使われやすいです。

Googleマップではすでに高精度なARを活用したナビゲーション機能も搭載されており、未来を感じさせます。

ロケーションベース(VPS型)

これまではGPSにより提供された位置情報を活用してARを出現させる方法がメインでしたが、さらに「VPS」と呼ばれる画像から位置を特定する技術にも近年注目が集まっています。以下は株式会社OnePlanetによる「住宅街にくじらが出現し、建物につっこんでいく」というAR体験のサンプル動画です。高度な技術を取扱いできる専門業者と連携することで、こちらの動画のように、これまで体験したこともないような高度なロケーションベースのAR体験を提供できるようになってきています。

AR開発に必要な開発環境・使用される言語

ARの開発環境は、AR以外の通常のアプリケーションの開発環境と基本的に変わらず使用する言語に合わせて利用する開発環境を選択します。

例えばスマホ向けのARアプリの開発であればAppleが提供するXcodeや、Googleが提供するAndroid Studioのほか、もともとはゲーム開発の用途が主だったUnityやUnreal EngineもVR・ARに強みを持っていたり、あるいはMicrosoftが提供するVisual Studioなども挙げられます。

Xcode

XcodeはApple社が提供する開発者向けの開発環境です。MacやiPhone、iPad向けのアプリ開発に向いています。Xcodeの対応機種はMacのみです。Macを所有している人であれば、無料でダウンロードできます。

Android Studio

Android StudioはGoogleが提供する開発環境です。Androidアプリを開発する際に便利です。WindowsだけでなくMacでも使用できるため、新たにパソコンやOSのパッケージなどを購入する必要がありません。

Unity

UnityはUnity社により提供されているゲーム開発のための開発環境です。使用できるOSの種類に制限はありません。C#や、JavaScript、Booなどの言語で開発できます。年商10万ドル以下の小規模の企業までは、無料で利用可能です。

Unreal Engine

Unreal EngineもUnityと同じくゲーム開発のための開発環境です。Epic Games社より開発されたゲームエンジンです。Unreal Engine を使用して AR アプリケーションを構築するための「Unreal Engine AR フレームワーク」が提供されており、iOS と Android の両方に対応しています。

ARの開発に使用される言語

ARの開発に使用される言語は、iOS向けにはSwift、Android向けにはKotlinやJavaが挙げられます。またUnityを使用する場合はC#、アプリではなくWebでARを実装するWeb ARの場合はHTML+JavaScriptが主になります。

開発するARによって使用する開発環境が変わるため、まずはAR開発の目的や、ターゲットとなるデバイスを明確にしましょう。

なお、Web ARについてはAR.jsや8th wallなど様々な方法があり、詳しくは以下の解説していますので併せてご確認ください。
WebARとは?国内外の最新事例12選と共に、WebARの概要やメリット・作り方まで詳しく解説

AR開発に必要なライブラリ

ARの開発には開発環境のほかに、汎用的に使うプログラムをまとめた「ライブラリ」と呼ばれるものも必要です。

ARスマホアプリを開発するのか、ARグラスのアプリケーションを開発するのか、WEB ARを開発するのか、開発予定のARの用途に併せてライブラリを選択する必要があります。また、開発予定のARが決まったとしても、ライブラリによって機能面での特徴が異なるため、慎重にライブラリを選んでいく必要があるでしょう。

特別に複雑な機能を搭載したいなどの理由がなければ、まずはプラットフォームを提供する企業の公式ライブラリを利用するのをおすすめします。

以下ではAR開発に関するおもなライブラリを紹介します。

ARKit

ARKitはApple社が提供するiPhoneやiPadなどのiOS端末を対象としたARライブラリです。床や壁、天井などを認識したうえで、ラベル付けします。また、人の動きを自動で感知してキャプチャできる機能のほか、ARコンテンツが人の前や背後を通り過ぎるなどの動作を可能にする機能などがあり、リアリティのあるARを実現できます。

ARCore

ARCoreはGoogleが提供するARプラットフォームです。モーショントラッキング機能により、壁やテーブル、床などがある空間を正確に把握できます。光の量を表す光度も測定できるため、照明の明るさによって異なる表現の提案も可能です。ARCoreは、Androidだけでなく、iOSにも対応しています。

Amazon Sumerian

Amazon SumerianはAWSが提供するARコンテンツを作成するためのライブラリで、Webページに埋め込めば、仮想ルームなどの3Dシーンの作成が可能です。必要なものはブラウザだけで、ソフトウェアやプログラミングなどの専門知識も不要です。AndroidとiOSで利用できます。

Vuforia

Vuforiaは画像認識型のマーカー型、マーカーレス型の両方に対応しているライブラリです。サンプルの種類が豊富なため、誰でも作成しやすいという特徴があります。マーカーを自由に変えるなどのカスタマイズも可能です。さまざまなOSに対応しており、自動で変換されるため、OSごとに開発するなどの手間を省けます。

Snapchat Lens Studio

Snapchat Lens StudioはSnapchatというアプリを提供しているSnap社が開発したAR専用のソフトウェアで、SNS「Snapchat」の上での利用が可能です。Snapchatとは、自分の顔を変形させたり、画像を装飾したりするなどの機能を楽しめるアプリです。アプリ内のARフィルターの作成に活用できます。スマートフォンだけでなく、パソコンでも使えます。

Spark Studio

Spark StudioはFacebookによってオープンソースが公開されているAR開発用のアプリケーションです。FacebookやInstagram、Messengerでの使用を目的としたAR開発を想定しています。高度なコーディングの知識や技術が不要なうえに、直感的な操作が可能です。なかでも顔認識に優れており、顔の動きを再現できるオブジェクトを作成できます。

Magic Leap Toolkit

ARグラス、MRグラスなどと呼ばれるヘッドマウント型のデバイス「Magic Leap」専用のARライブラリです。Magic Leap向けのコンテンツを開発する際に必要となる機能が最適化されており、Unityに取り込んで使用します。

Magic Leap向けコンテンツの開発はC系言語やHTML+JavaScriptにも対応していますが、提供されているライブラリはUnityのみになります。

Mixed Reality Toolkit

Microsoftが提供するヘッドマウント型のAR/MRデバイス「HoloLens」のために用意された開発フレームワークです。

HoloLens向けのコンテンツはUnrealまたはUnityで行ないますが、HoloLens向けのフレームワークはUnity版のみ公開されているため、HoloLens向けのARコンテンツを作成する際には使用する開発言語はUnityがほぼ必須となります。

AR.js

AR.jsは、これまで紹介してきたスマホアプリ用のライブラリや、ARグラスのアプリケーション開発のためのライブラリとは異なり、Web ARを開発することができるjavascriptのライブラリです。誰でも完全無料で使用できます。

AR.jsでマーカーにカメラを向けると、専用アプリなど必要とせずにWEBブラウザ上でオブジェクトを動かしたり、表示したりすることができます。他にも、360度動画再生やobjファイル表示が可能になります。それぞれを組み合わせてアニメーション制作も可能です。

AR.js以外にもWeb ARの開発でよく用いられるライブラリとしてA-Frameなどのライブラリも存在します。

AR開発の手順

AR開発にはどのような流れで行われるのでしょうか。開発における手順について解説します。

目的にあった開発環境とライブラリを準備する

先述の通り、AR開発には開発環境、開発言語、ライブラリにそれぞれ様々なものがあります。そのため、まずはAR開発の目的に沿って最適な組み合わせを選ぶ必要があります。

開発環境やライブラリは、既存のOSに合うものを選択します。MacなどのiOS向けのARアプリを開発するなら、Apple社のものが有効です。iOSだけでなくAndroidなどの端末に対応できるものを開発する場合は、対象端末の広い開発環境やライブラリを検討しましょう。

AR体験のデザイン / 企画に沿ったプログラミング

AR開発の目的に沿って開発環境、言語、ライブラリなどを選定したあとは、次に「どのようなARを提供するのか」というAR体験の詳細設計が必要です。その体験デザインに沿ってプログラミングを行います。

なかにはコーディング/プログラミング不要で開発できるARもあるため、自社で開発をしたい場合には社内の能力にあったARを企画することをおすすめします。簡易なARではなくある程度高度なARを提供したい場合には、プログラミング/コーディングが必須になると考えて良いでしょう。

アプリとして公開する

アプリを開発したら、テスト公開を実施しましょう。対象とする端末のすべてでバグなどが起こっていないかを確認します。テスト公開を行い動作に問題がなければ、正式にアプリを公開できる段階にたどり着きます。

スマホアプリであればAppStoreに公開申請をしますが、スマホではなくMRグラスであっても同様です。例えば「Magic Leap 1」であれば、スマホアプリと同じように「Magic Leap World」と呼ばれるアプリストアに公開申請を行い、Magic Leap社の審査を経てアプリが公開されるような手順となります。

AR開発における注意点

AR開発は、「ユーザーの現実空間」というデジタルだけでは完結しない環境に大いに依存します。そのため、ロケーションベースのARであれば現地での入念なテストが必要ですし、ロケーションを限定しなくてもユーザーの利用が想定される端末での厳密なテストが必要になります。テストが不十分な場合、「体験できると思ったのに、体験できない」というトラブル・事故を抱えてしまうことが多いです。

また、ARは性質上、位置情報やユーザーの顔認識など、個人情報に関する情報を取り込む場合が多いでしょう。入手した個人情報を守るために、サイバー攻撃などのセキュリティリスクの対策が必要となります。法律に準じたルールや取り扱いを行いましょう。また、ARを使用した際に起きた事故の責任の所在も明確にしておくと、トラブルが防げます。

AR技術に特化した外部の開発パートナーについて

AR開発に必要なリソースを確保できない場合は、外注を検討しましょう。外注する際は、自社が目指すものを明確にしたうえで、具体的に依頼内容を伝えることが重要です。また、外注先によって依頼費用は異なるため、自社の予算にあった企業を探しましょう。

株式会社OnePlanetについて

AR技術に特化した株式会社OnePlanetでは、これまでスマホのARや、MRグラスを活用したアプリケーションなど、AR技術に関する様々なアプリケーションを開発・提供してきました。

2021年3月にリリースしたMRグラス「Magic Leap 1」で体験できる空間音響アプリは日経新聞に掲載された他、スマホARではTBS系の人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のInstagram向けのARコンテンツの制作や、ドミノ・ピザの新商品キャンペーンの「ドミノフォンデュパーティAR」のWEB AR開発、にも携わっています。

ARは、これからますます企業のマーケティングに重要になっていきます。たとえば、企業とユーザーとの接点をもてる、消費者の購買行動を後押しするなどの効果も期待できます。

OnePlanetでは、MRグラスアプリのような高度なAR開発に加えて、AR技術を活用したソーシャルマーケティングまで含めてARに関する全てをワンストップで手掛けているため、このようなAR開発に関心がある方は気軽にお問い合わせくださいませ。