SNSが発展した現在でも、メディア業界においてテレビ・雑誌などの旧来のメディアの存在はまだまだ大きな存在です。
むしろテレビや雑誌などのメディアこそSNSのチャネルを組み合わせた展開をすることで、ユーザーとの新たなコミュニケーションが生まれており、新旧メディアのMIXしたアプローチには次なる未来を感じさせます。
そのような文脈を受けて、国内外ではテレビや雑誌などのメディアが、視聴者・読者とのコミュニケーションツールとして自社のSNSアカウントに「AR」を積極導入しています。
この記事には特に、国内外でのメディア業界のAR活用事例をピックアップしてまとめていきます。
目次
そもそもARとは
ゴーグルをはめるVRの方がイメージが湧きやすいと思うのですが、VRは「Virtual Reality」の略で、VRのゴーグルがスマホに置き換わった版がARと考えるとわかりやすいかもしれません。ARとは「Augmented Reality」の略で、一般的に「拡張現実」と訳されます。
ゴーグルの中のバーチャルワールドではなく、実在する風景にバーチャルの視覚情報を重ねて表示することで、目の前にある世界を“仮想的に拡張する”というものを「AR」と総称します。
VRとの違い
ARと似た言葉としてVRというものがあります。VRとはVirtual Realityの略であり、VRゴーグルを装着した向こう側の世界が100%バーチャルな世界になる体験を指し、まるで自分がデジタル世界に入り込んだような感覚になります。VRも3Dなどのデジタル表現を駆使したものですが、現実世界にバーチャルな視覚情報を重ね合わせるARとは異なる体験といえるでしょう。
ARとマーケティングの相性がいい理由とは
ARとマーケティングは、相性のよい組み合わせです。なぜARとマーケティングは相性がよいといわれているのかを解説します。
ユーザーも楽しめる
ARの大きな特徴が、ユーザーが楽しみながら情報を得られることです。ARを取り入れた広告は、企業側が伝えたい情報を届けるだけではなく、ユーザーが能動的に楽しめます。結果として、ユーザーの記憶に残るうえに、企業に対し好印象を持つようになるというメリットがあります。スポーツ業界であれば、スタジアムに行けなくても目の前の現実世界に選手が出現してくれるようなAR体験はファンの心を動かしますよね。
情報が拡散されやすい
先述のとおり、ARはユーザーに楽しい経験を与えながら、情報が届けられます。楽しかった、興味深い体験だったという印象が残れば、ユーザーがその経験を誰かに伝えたくなります。SNSなどのユーザー数が多いプラットフォームで紹介されると、さらに拡散されて多くの人にリーチできるでしょう。
テレビ・VOD(ビデオオンデマンド)業界でのAR活用事例
海外では様々なメディアビジネスのマーケティングでARがすでに取り入れられています。国内での先行事例も含めて、具体的な活用事例を見ていきましょう。
事例①Netflix(ネットフリックス)
Netflixは国別にローカライズされたInstagram公式アカウントを運用しており、「Netflix Polska」というポーランドのNetflixの公式Instagramアカウントで導入されているARフィルターをご紹介します。
同アカウントでは、2種類のARが導入されています。
右側のARは顔を認証した定番のARフィルターです。馬のようなオブジェクトが顔に合わせて表示されるARになっています。
左側にある「No Spoilers」というARは「ゲーム」の機能を活用したARフィルターとなっており、こちらを詳細にご紹介していきます。
No Spoilers
「TY」と表示された四角いキャラクターが自分自身という設定で、障害物にぶつからず、画面下に落下させずにどこまで進めるかというゲームになっています。
Instagram ARの表情認証の機能を活用し、口を開くとキャラクターが浮上します。放っておくと落下してゲームオーバーとなるため、常に口をパクパクする必要があります。
障害物を超えた数が額に表示される仕様になっており、やってみるとなかなか難しく、ハマってしまいます。
番組と接続したエンターテインメントを自社のアカウントに組み込むあたり、さすがNetflixです。
事例②ニコロデオン(Nickelodeon)
Nickelodeonはアメリカ合衆国のケーブルテレビチャンネルです。
幼児・児童向け番組を専門とするチャンネルで、『スポンジ・ボブ』や『ザ・ペンギンズ from マダガスカル』などのアメリカで人気のアニメ番組を多くの国で放送しています。
それではNickelodeonがどんなフィルターを配信しているか紹介します。
フィルターその①|Kids Choice Awards
Kids Choice Awardsはインカメラで楽しむフィルターです。
音楽とアニメ調のフィルターを楽しむことができます。また、眉毛を動かすと面白メガネが出現します。
フィルターその②|Slime
Slimeはインカメラで楽しむフィルターです。
口を開くとスライムを顔にかけられる演出を楽しめます。スライムの演出がとてもリアルで動画が楽しめるように設計されています。
フィルターその③|Which SpongeBob
Which SpongeBobはインカメラで楽しむフィルターです。
撮影ボタンを押すとルーレットがスタートし、ランダムでキャラクターが決まります。定番で楽しめるフィルターになります。
いくつものARを自社のInstagramアカウントで展開しており、特に子供の心を掴むようなものも多く、大変参考になりますね。
事例③TBSテレビ 逃げ恥
こちらは日本の事例です。人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のキャストが出現するARで、国内のTV業界でのInstagram AR活用事例としては日本初の事例かもしれません。
メインキャストの森山みくり(新垣結衣さん)と津崎平匡(星野源さん)が登場し、人気の「恋ダンス」のワンシーンを踊る3Dアニメーションが出現するARです。
「逃げるは恥だが役に立つ」の公式Instagramアカウント(@nigehaji_tbs)のメニューバーにある☺︎マークや、以下のQRコードからも体験することができます。
こちらの事例は人気ドラマのキャストのお二人が目の前に出てきてくれるという日本初のARということもあり、さまざまなメディアに取り上げられて大きな話題となりました。
事例④Discovery Inc.のInstagram ARフィルター「ゴールドラッシュ」
ディスカバリーチャンネルや、アニマルプラネット、サイエンスチャンネルなど、脚本がない事実に基づいたドキュメンタリー番組を中心に展開している世界的な放送事業者がDiscovery Inc.です。
もともとドキュメンタリー番組を中心に構成されていましたが、世界中の様々な放送事業者の買収を進め、現在ではスポーツやフード、DIYなどの多様なチャンネルがポートフォリオに追加されています。Discovery Inc.=ディスカバリーチャンネルと想起してしまいますが、2019年の売上にして111.4億米ドル(約1兆2,000億円)という規模を誇る世界的なメディア企業です。
そんな同社の公式InstagramアカウントではARフィルターを展開しており、この記事ではその事例をご紹介させていただきます。
なんとフォロワー数は1,211万人。圧巻ですね。
また、TOPページにあるハイライト機能でもきちんと「Gold フィルター」として紹介をしています。Instagramでは、ユーザーにARを楽しんでもらうための導線として、ハイライト機能の活用はとても有効です。
ARフィルター「GOLD RUSH」
顔のマークからAR体験を行くと「GOLD RUSH」と書かれたヘルメットをかぶった男性がデモ動画に出てきます。
ゴールドラッシュとは、1848年ごろにアメリカで起きた新しく金が発見された地へと一攫千金を狙う採掘者が殺到する現象を呼びます。
当時のゴールドラッシュのを彷彿とさせるユニフォームと共に頭上からゴールドが降ってくる体験をARで提供しています。
雑誌業界でのAR活用事例
雑誌業界のマーケティングでも、国内外でARがすでに取り入れられています。以下より、具体的な活用事例を見ていきましょう。
事例⑤ナショナルジオグラフィック
みなさん、「ナショナルジオグラフィック」をご存知ですか?歴史上最も有名なイメージの1つとも言われるこのアフガニスタンの少女の表紙は見たことがある人が多いのではないでしょうか。
世界中に多くのファンを持つ雑誌「ナショナル・ジオグラフィック」は、2020年4月22日のアースデイを記念してAR仕様の特別な号を刊行しました。同社の公式Instagramアカウントにて提供されているこの素敵なAR体験についてご紹介させていただきます。
ナショナルジオグラフィックの地球を想うARフィルターを詳しく紹介|2070年の地球とは
アカウントの☺︎のマークからAR体験を行くと「The World in 2070」と書かれて芝生に一冊の雑誌が置かれたデモ動画に出てきます。
ARを起動させると、自分の目の前の空間には雑誌が出現し、表紙から地球が現れます。
そして、ロサンゼルス、マイアミ、ロンドン、イスタンブールなど計12の都市には黄色のマークが表示されます。
表示された黄色いマークをタップすることで、各地点の夏季・冬季平均気温、降水率の予測が表示され、どのような場所なのか現在の地域に近い場所で表してくれます。
たとえば、アメリカ・ロサンゼルスは50年後にはモロッコのウェザーンに、ロシア・サンクトペテルブルクは、ウクライナのムィコラーイウに近くなるなど、各地点に劇的な温暖化が起きることを示してくれます。
そして、一部地域はタップしても何も表示されません。それは誤作動ではなく、それら地域は2070年のその地点と同じような環境が現時点の地球に存在していないということを示しているのです。
ARでこのように「目には見えない情報を視覚化させる」というのは非常に有効なアプローチです。海外メディアのARを活用したマーケティングの秀逸さには脱帽ですね。
事例⑥VOGUE
世界的な女性向けのファッション誌「VOGUE」は各国にローカライズされたInstagramアカウントを運営していますが、その中でも「VOGUE Australia」のアカウントにてARが提供されています。
口を開くと雑誌タイトルが回転する演出に加え、タップすると空間が複雑なモザイクのように変化する演出を提供しています。とてもオシャレなARです。
事例⑦ELLE JAPAN
女性向けメディア「ELLE JAPAN」のアカウントではロゴをモチーフにした可愛いオブジェクトを空間に出現させる演出と、顔への可愛い演出をセットにAR提供しています。
表情を認証して、空間中のロゴに動きが出るようなインタラクティブな演出も楽しめます。
事例⑧Harper’s Bazaar
世界29地域で発行される女性誌『ハーパーズ バザー』の日本公式アカウントでは、雑誌のタイトルで使われる文字情報が空間中にランダムに表示されるおしゃれな演出をARで提供しています。
タップすると素敵なメッセージが出てくる演出もあります。
事例⑨コスモポリタン
1886年にアメリカで創刊、女性向けのファッション雑誌『COSMOPOLITAN』の日本公式アカウントでもARが提供されています。
雑誌タイトルが顔に可愛く表示される演出をベースにしつつ、タップすると次々とメイクが変化していくARも提供。女性誌らしい遊びがとても楽しいです。
まとめ
Netflixなど海外のARゲームを活用した先行事例や、国内の逃げ恥ARなど、印象的なプロモーションが多かったですね。
また、ナショナルジオグラフィックの地球温暖化を啓蒙するARも、単にバーチャルな演出を提供したARとは異なりメッセージ性が強く、大変参考になりました。
Instagramは女性ユーザーの多いメディアなので、国内外の事例は特に女性誌が多かったです。このようなタイミングで男性誌のARをスタートさせるもの面白いのではないでしょうか?
ARを活用したマーケティングは日増しに重要になっており、今後は必須のアプローチとなるでしょう。
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