
現在、AR(拡張現実)を楽しめるデバイスとして主流なのは、スマートフォンやタブレットです。スマートフォンで楽しむARは、ゲームなどのエンタメコンテンツと相性が良いほか、ネットショップや専用アプリと連携する事例も増えています。
しかし、スマートフォンやタブレットでARを楽しむ際、「デバイスを手で持たないといけない」という制約があります。つまり、「何かしながらARを体験するのが難しい」という問題点があるのです。そんな問題を解決できるデバイスとして、ARが体験できるメガネ型デバイスに注目が集まっています。
今回は、ARメガネ/ARグラスとはどんなデバイスなのかを中心にご紹介します。また、巷で噂になっているAppleのARメガネのリーク情報もまとめました。
目次
ARメガネ/ARグラスとはどんなデバイス?
メガネ型のARデバイスは、2012年頃から一般的にも知られるようになり、現在までに多くの種類が出回っています。まずはARメガネとはどのようなデバイスなのか、どんな種類があるのかを知っておきましょう。
ARメガネの特徴は?
ARメガネとはその名の通り、メガネのように顔に装着するARデバイスです。スマートフォンやタブレットのように手に持つのではなく、体に装着するデバイスであることから、ウェアラブル端末に分類されます。メガネをかけると、レンズの向こう側にさまざまな情報が表示され、まるで現実世界にCGが存在しているかのような感覚を味わえることが特徴です。
これは従来のスマートフォンやタブレットで楽しむARのような、画面越しに現実世界を覗き込むような感覚とは一線を画す体験といえるでしょう。現実とARの融合感がより高い体験ができるようになったことから、Mixed Reality(複合現実)という概念も生まれています。
具体的な例としては、ARグラスの Magic Leap 2 を装着すると以下のように、机の上に、仮想上の物体を設置操作する事が可能で、
以下弊社所属エンジニアの検証動画では、仮想空間上に設置されたピアノを操作したり、物体を操作しています。
Magic Leap 2 の MRTK ハンドトラッキングのデモ#MRTK#MRTKv2#LEAPERSJAPAN pic.twitter.com/R3q1j2200b
— Sadao Tokuyama (@tokufxug) December 17, 2022
ARメガネ、(ARグラス)ビジネスでの利用としては、
製造業などで機械の操作手順を仮想的に表示し、教育コストを削減したり、
建設業で建築予定のビルを仮装上で確認し、仮想空間で確認する事でモックアップの制作コストを削減する事が可能になります。
関連記事
メガネタイプのARデバイスは2種類に分かれる
メガネタイプのARデバイスは、大きくわけてARグラス・スマートグラスの2種類に分類されます。この2種類の境界線は厳密に決められているわけではありませんが、一般的には次の基準で分けられます。
- ARグラス:自分の動きに合わせてリアルタイムで目の前の状況を分析し、情報を表示させる。AR特化。
- スマートグラス:情報を表示するのがメイン。AR特化ではない。
シンプルに言うと、ARに特化しているか・していないかがポイントです。ARグラスは、現実とARの融合感がより高い体験を楽しむためのデバイスとして開発されています。目の前の状況をリアルタイムに分析するためのセンサーやカメラなどが内蔵されています。
また、コントローラーが付属しているタイプもあり、精度の高い操作が可能です。しかし、センサーやコントローラーがある分、見た目が大きく・重たくなる傾向にあります。
一方、スマートグラスはARグラスに比べて軽く、機能的にもシンプルです。スマートフォンで閲覧するような情報を表示することがメインで、現実との融合感はそこまで重視されない傾向にあります。スマートウォッチのメガネ版と考えると分かりやすいかもしれませんね。
しかし、メガネタイプのARデバイスは年々進化しており、ARグラスとスマートグラスの境界はあいまいになりつつあります。たとえば、スマートグラスと紹介されていても現実との高い融合感を体験できるデバイスが増えています。ARやVRの上位互換として、MRグラスという呼ばれ方をされる場合もあります。
このように、メガネ型ARデバイスの呼び方や機能はさまざまなので混乱しがちです。よって、ARメガネを導入・購入する際は、「どんなところで、どのように使いたいのか?」という用途をよく検討し、デバイスのスペックや機能をよく調査し、比較検討しましょう。
調査が足りないまま最新のデバイスを買ってしまうと、用途に対してオーバースペックだったり、想定していた用途には不向きだったりといったミスマッチが起こる可能性があります。数あるメガネ型のARデバイスの中から、目的にあったデバイスを入手することが重要です。
ARメガネは幅広い分野で使用されている
メガネタイプのARデバイスは、手を使わずにAR体験できるのがメリットです。つまり、作業をしながら情報を閲覧するのに向いているデバイスといえます。
たとえば、ビジネスにおいて、ものづくりをしながらマニュアルを確認したり、資料をみながらディスカッションしたりといった、「〇〇しながら」のシーンがとても多いですね。そんなとき、メガネタイプのデバイスなら手を止めることなく作業を続けられます。
実際、メガネタイプのARデバイスは、医療・建築・製造現場・倉庫など幅広い現場で使用されています。倉庫業大手のDHLでは、スマートグラスのAR機能を使ってピッキング業務を効率的するプロジェクトに取り組みました。
スマートグラスに表示されるAR映像を通じて作業員に指示を出すことで、ピッキング作業の迅速化とミスの削減を実現しています。常に両手を使って作業できることで、ピッキング作業効率を従来比較の25%も向上できたそうです。
一般消費者向けのARメガネが増えている
AR特化型のARグラスは、現実との融合感の高いAR体験ができることがメリットです。ビジネスで使用される事例も増えているものの、自分の視野に合うよう調整しながら装着するのがちょっと大変です。見た目的にもゴツくなってしまうので、装着を躊躇する人もいるでしょう。
たとえば、HololensはARグラスの先駆者的な存在で、さまざまなビジネス分野で導入されています。しかし、メガネというよりはヘッドマウントディスプレイに近く、かなり大きいですね。
筆者も装着したことがありますが、頭にフィットするように調整するのがなかなか大変です。このように、ARグラスには日常使いするには扱いにくいというデメリットがあります。
そこで、一般市場向けには、スマートで軽いメガネ調のものが注目されています。見た目は従来のスマートグラスに近いのですが、技術が進化して小型センサーなどを搭載しているARメガネが増えています。
つまり、従来のスマートグラスよりも現実との融合感が高いAR体験ができるようになったのです。今回は、メガネのような使用感・装着感で使えそうなメガネタイプのARデバイスを集めました。
NReal Light
中国のスタートアップ企業「Nreal Light」が開発しているARメガネです。
- NReal Light:重さ88g・解像度1080P(1980×1020※非公表数値)・視野角52度
スマートフォンや外付け専用ユニットと接続して使用します。デバイス内に内蔵された4基のカメラでリアルタイムに空間を認識し、融合感の高いAR体験ができます。その精度や操作の自由度はAR特化型のHoloLensやMagicLeapに劣りますが、機能を限定することで価格をおさえることに成功しました。
価格はNReal Light本体のみの場合は499ドル(約5万5,000円)、開発者向けのデベロッパーキットは1,199ドル(約13万5,000円)です。デベロッパーキットには、メガネ本体とデバイス・コントローラーがセットになっています。
MAD Gaze GLOW
香港のAR/VRデバイス開発をしている「MAD Gaze」社が発表したARメガネです。解像度や視野角が異なるGLOW Plus・Glowの2種類がラインナップされています。
- GLOW:重さ98g・解像度720p(1280×720)・視野角45度
- GLOW Plus:重さ92g・解像度1080p(1920×1080)・視野角53度
GLOWの最大の特徴は、メガネをかけて118インチの大画面をARで楽しめることです。ディスプレイポート搭載のスマートフォンにUSB-Cポートで接続して使用します。YouTubeやNetflixなどの動画コンテンツARで簡単に大画面を楽しめるほか、スマートフォンとBluetoothで接続されたキーボードを使ってデスクワークもできます。
クラウドファンディングサイトを通しての購入がメインで、現在でも不定期で募集をおこなっているようです。価格はGLOWが約5万円、GLOW Plusが約6万円ですが、随時更新されていますので、気になる人はこまめにチェックしています。
Vuzix Blade
アメリカの「Vuzix Blade社」が発売しているスマートグラスです。サングラスのような見た目で、右目単眼タイプなのが特徴です。メガネのツル部分に搭載された小型タッチパネルで操作します。
Vuzix Blade Companion Appをインストールしたスマートフォンを介し、音声・画像・文字などのデータ送受信するのが主な使用用途です。しかし、視界に映し出される情報の精密度は、従来のスマートグラスより格段に進化しています。
Vuzix Blade Smart Glass:重さ約90g・解像度480×480・視野角度19度(調整することで28度まで可)
Amazoneなどのネット通販で約66,000円で購入できます(2020年9月現在)。
am glass
中国 深センの企業「PACIFIC FUTURE 社」が発売しているスマートグラスです。広角・高解像度のカメラを2台搭載し、より現実との融合館が高いAR体験ができます。
メガネ型デバイスの中では新しい機種で、まだまだ事例は少ないものの、すでにマレーシアの博物館に導入されはじめています。
広角・高解像度のカメラを2台搭載しており、没入感の高いARを体験できるとのこと。開発者には専用の「am glass SDK」が用意されており、基本的な各種認識機能やSLAM機能の開発環境も用意されているようです。
am glass:重さ約95g・解像度1920×1080・視野角度52度
AppleのARメガネが発売間近?
さまざまなメガネ型のARデバイスをご紹介しましたが、「AppleやGoogleからARメガネは出ないの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。過去を振り返ってみると、2012年には「Google Glass」が一般向けに発表され、大きな話題を呼びました。
しかし、実際に使ってみると「役に立たない」「見た目に違和感がある」というコメントが殺到し、2015年1月に販売終了してしまったのです。
Google Glassは2017年にビジネス利用に特化したエンタープライズ・エディションとして復活したものの、一般市場向けのARメガネの発売については息をひそめた状態が続いていました。
AppleからのARメガネに関する発売情報も、開発中というウワサはあるものの、長らく沈黙状態でした。しかし、2020年に入ってから「近いうちにAppleからメガネ型のARデバイスが発売されるのではないか?」という情報がインターネット上で複数リークされています。現段階ではあくまでリーク情報ですが、わかっている内容をまとめました。
2023年1月現在はAppleのARメガネは発売時期が未定となり、その代わり低価格のXRヘッドセットを2024年〜2025年にリリースを目指していると発表されています。
AppleはARメガネに関する特許を数多く取得している
Appleが近々ARメガネを発売すると言われている根拠の1つとして、メガネ型のウェアラブルデバイスに関する特許をたくさん取得していることが挙げられます。
- 視覚矯正
- 外部センサー無しで装着者の向きや動きを検知する
- メガネのつる部分を交換することで機能を使い分ける
- 心拍数や脳波測定機能
- 装着者だけがみえるプライバシースクリーン
など
これらがどれだけけ商品に反映されるかはまだ分かりませんが、いずれもARメガネ開発に関係する技術ばかりです。もし全部反映されたら、かなりハイスペックな夢のあるARデバイスとなりそうです。
AppleのARメガネで見えるイメージ
Apple製品のリーク情報やコンセプトイメージ制作で知られるベンジャミン・ジェスキン氏が、SNS上でとある動画を公開しました。AppleのARメガネを装着しながら、MacのデスクトップPCやiPadの仮想キーボードを操作しているイメージ動画です。
I wanted to try something new ✨ so here’s my first AR Glasses desk setup with Mac remote desktop, iPad virtual keyboard and iOS 14 widgets pic.twitter.com/G3w4MYRVDB
— Ben Geskin (@BenGeskin) July 4, 2020
メモ帳の上にカレンダーが表示されている様子や、PCのデスクトップが映し出されている様子がみえますね。テーブルの上にはキーボードも映し出されています。ライトスタンドの上に浮いているのは気温計や天気のようです。
あくまでもジェスキンさん制作のイメージ動画ですが、実際にARメガネが導入されたときの生活がどのようになるのか、かなりイメージしやすい動画となっています。
発売時期は?公式発表は2022年後半?
AppleのARメガネの発売時期についても、さまざまなリーク情報が出ています。
Kuo: Apple Glasses to Launch in 2022 at Earliest, New 10.8-Inch iPad and 9-Inch iPad Mini Coming in 2020/2021 https://t.co/BsKNkLOSHz by @julipuli pic.twitter.com/aMvYGWaGnB
— MacRumors.com (@MacRumors) May 14, 2020
今までにAppleの未発表製品に関する予想を的中させてきたアナリストのミンチー・クオ氏(Ming-Chi Kuo)は、「AppleからのARメガネに関する発表は、早くとも2022年だろう」と予想しています。一方、Apple製品のリーク情報で知られるジョン・プロッサー氏(Jon Prosser)は、「2021年3月~6月頃にAppleから公式発表される」と予想しています。これらはあくまでリーク情報ですが、いずれにせよこの数年のうちに大きな発表があるかもしれませんね。
またAppleは、かねてより高機能なARグラスと小型のARメガネの2種類を開発しているという噂も流れていました。しかし、現時点で出ているリーク情報がどちらのARグラスのことを指すのかは不明です。同時となるのか、時期がずれての発表となるのかも含めて公式発表が待ち遠しいところです。
販売価格は?
ジョン・プロッサー氏のリークによると、「499ドル(約55,000円)で販売される」との予想です。現行のApple Watchとそれほど変わらない価格なので、かなり現実味がある価格と言えます。現行のARヘッドマウントディスプレイ「HoloLens2」が38万円ほどすることを考えると、ぐっと手の届きやすい値段になっています。
ARメガネの今後の動向は?
ARメガネには様々な商品が出てきていますが、一般向けに広く普及するようなデバイスはまだ出てきていないのが現状です。
メガネに搭載するコンピューターが重くなってしまい長時間の利用に向かなかったり、視野角が狭くて体験がイマイチだったり、スマートフォンと繋げて使わなければいけなかったり…まだまだ発展途上の段階にあります。
実際にGoogleは2022年3月に、ARグラスの性能を改善するためのディスプレイの技術を有するスタートアップを買収しました。
AppleやGoogleといったスマホ時代の大手企業を含めて、まだまだ各社が技術のしのぎを削っている状態ではありますが、軽くて装着しやすく、気軽にAR体験を楽しめるような本格的なARデバイスが出てくれば、本格的な普及が始まることでしょう。
特に、5G回線が普及すれば、コンテンツのストリーミングやダウンロードもさらにスピードアップするでしょう。日常生活での生活をより便利にするだけでなく、動画やゲームなどといったエンターテインメント分野でのさらなる活用も増えていくはずです。
さらに、AIの技術と融合すれば、もっと便利で面白くなるでしょう。
持ち主の日常の行動をAIが分析し、その日のオススメの食事メニューなどがリアルタイムで表示されるようになる…といったことが実現するかもしれません。デバイスだけでなくARメガネ越しに提供される新しい体験も楽しみですね。
そして、一般消費者向けのメガネ市場流入にあたり、気になるのはやはり価格です。Appleが販売価格499ドルを目指しているというリークがありましたが、ほかの製品の価格をみても、日本円で約5~6万円程度が一般市場向けARメガネの相場になってくるのではないでしょうか。
手に届きやすい価格で、日常がARによってさらに面白く便利になるのなら、つい買ってみたくなりますね。
まとめ
次世代ARデバイスとして注目を集めるARメガネについて、現時点で販売されている製品やAppleのリーク情報を中心にご紹介しました。
AppleがARメガネを発表すれば、一般消費者の間でもウェアラブルAR端末がぐっと身近な存在になると思います。
ARグラスは”ポストスマートフォン”と呼ばれていますが、現実になる日が刻一刻と近づいていますね。
私たちOnePlanetはスマートフォンとARグラスの両方を活用し、AR技術に専門特化してさまざまなソリューションを展開しており、ご相談を賜っております。
特にいま注目が集まるMagic Leap 2についても積極的に情報の収集・発信を行なっています。
私たち株式会社OnePlanetはARフィルターやWebARなどの企画・開発を提供しています。
国内ではまだ新しいARを活用したマーケティングにご興味がありましたら、お気軽にご相談くださいませ。
<合わせて読みたい>