家電AR

拡張現実(AR)を利用しているユーザーは、日常的に街中で見かけることも増えてきました。これは、ARで遊べるゲームが登場したことも理由として大きいですが、それ以外の分野での活躍も著しいためです。

特に、利用に際して高いポテンシャルがあると言われているのが、家電業界とARの組み合わせです。家電は私たちの生活には欠かせない製品ですが、ARと組み合わさることで、どのようなメリットを生み出していくのでしょうか?

この記事では、家電がARとの融合で解決していく課題、そして実際の活用事例についても紹介していきます。

個人消費の分野で進むAR活用

スマホを利用している男性

ARはこれまでハイテク技術として、産業分野における活躍が期待されてきましたが、今や個人での利用も当たり前になった技術となってきています。

ARの活躍はゲームだけではない

ARを身近なテクノロジーにしてくれた最大の要因は、間違いなくゲームにあるでしょう。特に、2016年に登場したスマホARゲーム「ポケモンGO」の登場は、ARという言葉を世間一般に認知させたパイオニアと言えます。これまで2Dの世界の生き物とされてきたポケモンが、ARによって現実世界に現れたことは、世の中の人に大きな衝撃を与えました。

しかし、ARは必ずしもゲームのためだけに作られた技術ではありません。実用的なAR運用も進められており、GPSを活用したナビゲーションや、建築物の点検作業など、運用可能な業種は多岐に渡ります。

インテリアにARを利用するケースも豊富

ARはインテリアの分野においても積極的な運用が見られます。気軽に家具を立体的に表示しては購入することができるということで、まるで服でも買うかのような感覚で、インテリアを楽しむことを可能にしています。

インテリアは大型の商品となることが多く、気軽な購入をはばかられることも少なくありませんでした。しかし、ARの登場によってインテリアを好きなように仮想体験することができるようになったため、これまでよりもはるかに購入のハードルは低くなっています。この流れは家電にも訪れつつあると言え、以前にも増して家電購入の機会は増えていくことになるでしょう。

ARの活用が進んでいる理由

スマホとAR

次に、ARの個人利用が積極的に進められている理由についてもお伝えしていきましょう。少し前までは未来の技術だったARは、なぜここまで普及するようになったのでしょうか?

スマートフォンの普及と性能の向上

一つには、10年前と比べてスマートフォンが広く普及しただけでなく、その性能も飛躍的に向上していることが挙げられます。スマートフォンがまだ登場して間もない2010年、当時は「セカイカメラ」というアプリが大きな注目を集めていましたが、これはスマホで使えるARアプリの先駆けでもありました。

このアプリは、セカイカメラを起動し、スマホのカメラで周囲を見渡すことで、セカイカメラユーザーがタグ付けした各スポットの情報を、一度に閲覧することができるというものです。画期的な機能で話題を集めましたが、残念ながらすでにこのサービスは終了しています。

このアプリが一過性の話題だけで終わってしまった理由の一つにまだスマホがそこまで人々の間で普及していなかったこと、二つ目に、そもそもスマホの性能がそこまで高くなかったことが挙げられます。せっかくセカイカメラを起動しても、スマホの処理速度が追いつかず、スムーズな運用が実現しなかったのです。

しかし、今日ではスマホがちょっとしたラップトップ並みのスペックを誇っていることもあり、こういったハイテクアプリも難なく動かすことが可能です。ARという概念は何十年も前からありましたが、技術の進歩によってこうして今は実際に使うことができるテクノロジーとして活躍しつつあるのです。

通信環境の改善

ハード面での進歩だけでなく、通信インフラが大きく改善されたこともAR普及の一翼を担っています。スマホが発売した当初、一般的だった通信回線は3Gでした。ご存知のとおり、3G回線はメールのやり取りや電話において事欠くことはないものの、動画像のアップロードやダウンロードには物足りません。そして、ARの運用には通常の動画像の処理よりもはるかに大きな容量を必要とするため、3G回線ではとても処理しきることはできなかったのです。

しかし、今やLTEや4G回線が登場したことで、ARのような大容量通信を必要とする技術も難なく表示させることが可能です。そして、2020年以降は5G通信も普及していくことになります。通信環境の改善によって、今以上にARやVRといった視覚技術は普及していくことになるでしょう。

家電業界が抱えてきた課題

家電

家電業界がARとの融合を目指すようになったのは、単なる目新しさだけでなく、この業界ならではの課題を抱えてきたことも背景に挙げられます。

サイズの判断が難しい

一つ目は、家電購入に伴うサイズ計測の問題です。家電はテーブルランプやPCなど、ある程度大きさのわかっているものであればそこまで購入の際にサイズを考慮することはありません。

しかし、問題なのがテレビや冷蔵庫といった大型の家電です。これらは家電量販店などで目にしてみると、店舗の大きさからついつい小さく見えてしまうものですが、いざ家に設置するとなるとその大きさに驚くということもあるものです。

また、オンラインショップではサイズこそ数値で明記されているものの、実際に部屋の中に置いてみないと圧迫感などは掴めないものです。部屋の大きさに合うかどうかの採寸も手間になってしまうので、ついつい目視で判断し、誤ったサイズの家電を購入してしまうケースもあります。

購入と返品に手間がかかる

大型家電は購入に際して家に持ち帰るのに大きな手間がかかってしまうのも課題です。一人では運べないものなどについては、現在は送料無料で配送業者に配送、設置してもらうことができますが、非常に大掛かりになるため、おいそれと購入するわけにはいきません。また、あまりに大きいと今度は家にたどり着くまでのエレベーターやドアで入れなくなってしまうこともあり、そうなると受け取りはできません。

こういったリスクを考慮すると、やはり購入には必要以上に慎重になってしまうことが余儀なくされます。そして、万が一気に入らないデザイン、あるいは家に設置できないサイズだった場合には、返品の必要が生まれます。大型家電の返品は、アパレルなどの返品に比べて送料も高額になり、送り出すのにも一苦労ということで、やはりこちらも手間のかかる作業です。アパレルなどであれば気軽にオンラインで購入し、気に入らなければ返品も容易ですが、家電ではそうもいかないのが現状なのです。

家電購入にARを導入するメリット

むらか み??

このような問題に対処するため、ARは家電購入に大きなメリットをもたらしてくれます。

サイズの確認が簡単になる

まず、ARを利用することで、事前に採寸を行う必要はなくなります。これまでは家のスペースと家電のサイズの両方をきちんと計測する必要がありましたが、ARを使うことで一気に解消されます。

ARで好きな家電を自在に表示させることで、原寸大で家電を気軽に部屋の中に設置してみることができます。どのくらいの大きさであれば問題ないかや、どれくらいの圧迫感なのかも感覚的に理解することができるでしょう。

また、最近ではARで使える計測機などもスマホアプリとしてリリースされているため、正確な数値を測りたい場合には、こういったアプリを併用することで、より正確にサイズを理解することができます。

色や配置も自由に設定できる

2つ目は、設置するAR家電は自由に配置や色を変更することができる点です。大型家電は設置にも一苦労で、あらかじめ場所を決めておかなければ設置の際に家電をあちこち移動させることになり、時間と労力を消耗してしまいます。

しかし、AR家電ではスマホやマーカーの位置を変えるだけで自在に設置場所を変えることができるので、こういった労力は発生しません。また、家電のデザインに色や形状のバリエーションがある場合は、自在に異なるデザインのものを試してみることも可能です。ゲーム感覚で、家電選びを楽しむことができるでしょう。

インテリアデザインへの配慮が簡単

家電の自在な配置やデザインの変更を行えることによって、インテリアデザインをさらに楽しむことも可能になります。家具や家電は重量があり、その配置には体力や物理的な制限もありました。しかし、ARではこれらの複数配置を瞬時に行うこともでき、移動やデザインの変更も自由自在です。

一度理想的なインテリア配置をARで組み立てた後も、気になるところがあればワンタップで商品を入れ替え、修正することもできます。新居への引越しに合わせて、家具家電の総入れ替えを考えている人にとっては、非常にありがたい機能と言えるでしょう。インテリアへのこだわりが簡単に反映できるようになったことで、さらなる家具家電消費を促すことができます。

家電のオンラインショッピングをより扱いやすくなる

家電を気軽にARで試し、購入することができるようになれば、オンラインショップはますます使いやすい媒体として成長していくことになるでしょう。オンラインショップの最大の欠点は、実物で商品を確認できないことにありましたが、ARでは原寸大の商品を体験することができるので、その欠点を大きくカバーすることができます。

それどころか、店舗ではなく自宅でサイズなどを確認できるので、実店舗よりも使いやすい部分もあります。今後、ARを採用する家電量販店のオンラインサイトはますます増えていくことになるでしょう。

家電業界へのAR導入事例

最後に、実際に家電業界にARが導入されている事例を3つ紹介しましょう。

事例①:scale post viewer AR

scale post

画像引用元:scale post viewer AR

scale post viewer ARは、ビックカメラと提携して家電製品をARで表示することができるアプリです。アプリをダウンロードし、オンライサイトにあるQRコードを読み込むことで、ARマーカーを使用することができるようになります。

ARマーカーを印刷して部屋の好きなところに置くだけで、カメラをかざせばいつでも原寸大の家電製品が表示されます。また、ARマーカーは好きなように配置を変えることができるので、家電の配置にこだわりたい場合にも活躍してくれます。

事例②:Amazon「ARビュー」

Amazon「ARビュー」

画像引用元:Amazon

Amazonで家電を購入する場合、スマホから公式アプリで商品を閲覧していると、「ARビューで表示」の項目が追加されている商品があります。これは、実際にARでその商品の3Dを部屋に表示し、仮想的に設置してみることができる機能です。ARカメラで部屋にかざすだけで気軽に利用することができるため、非常に使いやすいアプリです。

また、利用に際してはAmazonの公式スマホアプリさえあれば問題なく使えるので、ややこしい手続きやアプリのダウンロードなども必要ないのがメリットです。

事例③:RoomCo AR

RoomCo AR

画像引用元:RoomCo AR

RoomCo ARはインテリアを自由にARで表示させることができるスマホアプリの一種で、家具メーカーだけでなく、家電メーカーとのタイアップにも積極的です。人気ブランド家具をARで表示できるカタログアプリで、きになる商品があればすぐにタップし、実際に部屋に設置してみることができます。

商品はブランドやカテゴリで分けられているので、欲しい商品を見つけやすいのも特徴です。気に入ったものがあればそのままECサイトに遷移し、購入まで可能なので、扱いやすさに優れています。家電メーカーはソニーのような大手メーカーの製品も取り扱っているため、欲しい商品をすぐに見つけることもできるでしょう。

まとめ

家電メーカーや小売店、インテリアブランドがARを導入することは、ECサイトの購買率や返品率の改善に加えて、店舗でのお客様とのコミュニケーションを大きく変えていける可能性を持っています。

しかし、まだ新しい分野なので、ARに専門特化した、高度な専門性を有するパートナーとともに取り組みを始めることが重要でしょう。

家電・家具、インテリア業界とARの相性は良いので、これから導入を検討することで他社ブランドとの差別化を実現できるでしょう。

「ARマーケティングラボ」を運営するOnePlanetでは、様々な企業やブランドにARを導入してきた実績がございます。

ARのビジネス活用を検討していましたら、お気軽にご相談ください。

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