ARコンタクトレンズ

ARを楽しめるデバイスで2020年現在もっとも普及しているのは「スマートフォン」です。ハンズフリーでAR体験ができるデバイスとしては、スマートグラスやARグラスなどのウェアラブルデバイスも発売されています。

ただ、ウェアラブルデバイスには、視野が狭くなって見辛い・装着する手間がかかるといった問題点が多いことが現状です。スポーツ観戦などで試験的に運用はされているものの、まだまだ一般商品者に浸透しているとは言えません。

2020年、そんな問題点を解決し得るデバイスが発表されました。それは、「世界初・AR機能搭載のコンタクトレンズ」です!なんと、視野に直接デジタル情報を表示させることができるのです。

そのコンタクトレンズの名前は「Mojo Lens」まるでSF映画に登場しそうなこの技術、ワクワクが止まりませんね!まだ開発段階のARコンタクトレンズですが、現時点で明らかになっていることをまとめてみました。

ARコンタクトレンズ「Mojo Lens」とは?

コンタクトレンズ

もともと、ARコンタクトレンズの研究は、サムスンなど複数の企業が研究しているとの情報がありました。しかし、研究の進捗具合は長らく謎のままだったのです。

そんな中、「世界初の真のスマートコンタクトレンズ」として2020年に発表されたのが、今回紹介する「Mojo Lens」です。Mojo=”魔法”と名づけられたこのコンタクトレンズについて、2020年8月現在の情報をまとめました。

Mojo Lensではどんな情報がAR表示されるの?

画像引用:Mojo Vision公式HP

Mojo Lensは、そのとき知りたい情報・必要な情報をデジタルデータで表示してくれます。

Mojo Lensで表示される情報
  • 体温・心拍数・消費カロリーなどのフィジカルデータ
  • 自分の住む地域の天気・気温・湿度
  • 運転時の混雑回避ルート
  • 目的地までのナビゲーション
  • カレンダーやTo Doリスト
  • 音楽プレイヤーのプレイリスト

    これらの情報が緑色の文字で表示されます。私たちが普段スマホでみている情報が、そのままリアルタイムに視界に映されるイメージですね。

    こちらの動画では、目的地へ向かうまでのナビゲーションをしてくれていますね。ちなみに、文字は目の至近距離に小さく映し出されるため、近眼の人でも大丈夫だそうです。

    ARコンタクトレンズ「Mojo Lens」の見た目は?

    画像引用:Mojo Vision 公式Twitter(@MojoVisionInc)

    Mojo Lensには、2019年に同社が発表した超小型マイクロLEDのディスプレイが搭載されています。なんと、一辺の寸法が0.48mm!砂粒ほどの大きさしかありません。顕微鏡でやっと見えるくらいの大きさです。

    砂時計

    瞳孔の真正面に来るようにポジショニングされており、とても精細な構造となっています。装着しているかどうか、見た目ではわかりません。これが目に直接張り付いて情報を見せてくれるとなると、ARの肝になる現実との一体感はかなり期待できそうですね。

    ただし、高精細のカラー映像表示には向いていないのがネック。そのため、表示される情報は、単色の文字や線画での表示に限られています。

    Mojo Lensはビジネス向け?一般ユーザー向け?

    工作をしている女性

    ARコンタクトレンズの大きなメリットは、AR体験のたびにいちいち装着する手間が省けることです。欲しいときに欲しい情報を入手でき、不要なときは視野を邪魔することなく日常生活を送れることが強みです。

    ウェアラブル端末を装着する手間が省けるため、ビジネスユースでは生産性向上が期待できます。たとえば、このようなメリットがありそうですね。

    ARコンタクトレンズのビジネスユース面でのメリット
    • 工場の作業員が、作業手順をARでリアルタイムに確認できる
    • 宅配トラックの運転手が、道路の事故情報や渋滞情報がすぐに確認できる
    • ショップの販売店員が、近隣店舗を含めた在庫状況をその場で確認できる

    現時点ではジネスシーンを想定した使い道が多そうですが、Mojoの公式発表には「企業だけでなく、一般消費者も提供対象に含めることを想定している」というコメントもありました。いつか私たちが日常的に使える日がやってくる可能性も十分にあります。もしそうなれば、スマートウォッチのような感覚でコンタクトを身に付ける時代がやってくるかもしれませんね!

    ARコンタクトレンズを開発中の「Mojo Vision」とはどんな会社?

    mojo

    画像引用:Mojo Vision 公式Twitter(@MojoVisionInc)

    Mojo Lensを開発しているのは、アメリカのニューヨーク州・サラトガに所在するベンチャー企業「Mojo Vision」です。2015年に設立されたMojo Visionには、AppleやGoogleなどのテック系企業の出身者と、Johnson & JohnsonやPhilips Healthcareなどの医療系企業の出身者が集まっていることが特徴です。「目に見えないコンピューティング(Invisible Computing)」をコンセプトに、会社設立前の2008年からARコンタクトレンズの研究を続けてきました。Mojo Lensは、実に10年以上の歳月をかけて、世に生まれてきた技術なんですね!

    創業当初は、Google傘下のGradient Venturesなど複数のファンドから1億800万ドル以上の資金調達したことで話題になりました。現在のフェーズで資金投資に加わったのは次の通りです。

    Mojo Visionに資金投資した投資家
    • New Enterprise Associates(NEA) :リードインベスター
    • Gradient Ventures
    • Liberty Global Ventures
    • Struck Capital
    • Dolby Family Ventures
    • Motorola Solutions Venture Capital
    • Fusion Fund
    • Intellectus Partners
    • KDDI Open Innovation Fund(KOIF)
    • Numbase Group
    • InFocus Capital Partners

    日本の企業は、KDDI Open Innovation Fund(KOIF)が出資しており、日本市場への参入を見込んだ投資と推測されます。それだけ世界中からの期待度が大きなプロジェクトだということがうかがえますね。

    ARコンタクトレンズ「Mojo Lens」の市場導入はまだ未定

    コンタクトレンズ

    気になる市場導入・販売開始時期ですが、Mojo Lensはまだまだ実験の段階。機能課題も山積みです。たとえば、装着した人の視点を補足するためのアイトラッキング機能。超小型ディスプレイに搭載できるような、超小型センサーの開発が必要です。

    マイクロLEDの電源供給も大きな課題ですね。現在のプロトタイプでは、薄いフィルタ状のバッテリーで駆動させる想定で、約1日は持つそうです(ゆくゆくは、首からぶら下げる薄いデバイスを介してワイヤレス充電できるようになるとのこと)。

    インターネット回線5Gの発達に伴い、大容量のデータを瞬時にやり取りするための受信機器なども搭載されるかもしれません。コンタクトレンズとして体に入れるものなので、米食品医薬品局(FDA)の承認も必要です。

    以上のことから、残念ながら販売は当分先で、発売時期も未定の状況。新たな開発状況の発表が楽しみですね!

    ARコンタクトレンズが視覚障害者を救う?視力回復にも期待

    視力検査の機械

    ARコンタクトレンズは、視野に直接情報を映し出す技術です。従来の治療やリハビリでは解決できなかった視力の問題を解決できるのではないかと注目されています。Mojo Lensと視覚障害への可能性や関係性についても調べてみました。

    視覚障碍者向けリハビリサービス団体と提携・視野研究開始

    顕微鏡

    Mojo Visionは、視覚障害向けのリハビリサービスをおこなう非営利団体「Vista Center for the Blind and Visually Impaired」とも連携しています。Mojo Lensを使った視野研究をおこなうと発表しました。

    すでに米食品医薬品局(FDA)からは「画期的なデバイス」として認められており、黄斑変性症や網膜色素変性症など、視覚障害を持つ患者の生活を支援する医療機器として試験を行う承認を得ています。ARコンタクトレンズの画像オーバーレイ機能により、弱視の人の読書や日常生活の移動を支援できる可能性があるそうです。

    手術なしでテクノロジーで目の障害を克服できるって、本当に夢のようなコンタクトレンズですね!

    最高責任者CEOの白内障手術が「Mojo」の原点

    画像引用:Mojo Vision公式サイト

    ARコンタクトレンズの開発に注力するMojo。その原点は、「外科手術をしなくても視力を改善できる方法を考える」という最高経営責任者(CEO)Drew Perkins氏の言葉にあります。

    実はPerkins氏は、2012年に白内障を発症。手術により、中距離を見るときの視力が低下してしまったそうです。同氏はMojo設立前、光通信機器の創設に携わっていた経験の持ち主。そこで、光テクノロジーで視力の問題を解決できないかと考え始めました。

    同氏をはじめ、同じように目が悪くて視力が低いという問題を抱えるエンジニアなどが集まり、ビジネスとして動き始めたのが「Mojo Vision」なのだそうです。「医学領域にARやテクノロジーで貢献したい」という思いが強いことも納得できますね。

    まとめ

    ARの技術は、ビジネスユースはもちろん、一般消費者の私たちの暮らしにも大きな変化をもたらしました。従来のARの使い道は、製造業や倉庫業などの業務効率化や、エンターテインメントにフォーカスした技術が目立っていました。今回紹介したのARコンタクトレンズの開発によって、体の障害をテクノロジーで克服できる時代が、すぐそこまできているように感じます。

    実用化されたら、映画「ターミネーター」のサイボーグのような世界が体感できるかもしれませんね!

     

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