コロナで外出がしにくい現在でも、外出やおでかけをしたいというにと他人のニーズは常に存在しています。
アフターコロナにはそのニーズの反動から多くの人がおでかけをするようになることも予想され、アフターコロナに向けたデジタル化としておでかけ産業やイベント事業者はARを活用した新たな体験創造がとても重要になっています。
この記事には特に、国内外での美術館・博物館のAR活用事例をピックアップしてまとめていきます。
そもそもARとは
ゴーグルをはめるVRの方がイメージが湧きやすいと思うのですが、VRは「Virtual Reality」の略で、VRのゴーグルがスマホに置き換わった版がARと考えるとわかりやすいかもしれません。
ARとは「Augmented Reality」の略で、一般的に「拡張現実」と訳されます。 ゴーグルの中のバーチャルワールドではなく、実在する風景にバーチャルの視覚情報を重ねて表示することで、目の前にある世界を“仮想的に拡張する”というものを「AR」と総称します。
VRとの違い
ARと似た言葉としてVRというものがあります。VRとはVirtual Realityの略であり、VRゴーグルを装着した向こう側の世界が100%バーチャルな世界になる体験を指し、まるで自分がデジタル世界に入り込んだような感覚になります。
VRも3Dなどのデジタル表現を駆使したものですが、現実世界にバーチャルな視覚情報を重ね合わせるARとは異なる体験といえるでしょう。
美術館・博物館とARの相性が良い6つの理由
ARと美術館や博物館は相性のよい組み合わせです。
まずはなぜ美術館や博物館とARの相性がよいといわれているのかを解説します。
①音声ガイドを拡張する
ARによって、現状の音声ガイドを拡張することが可能です。ARを活用することによって、ホログラムでガイドを表示したり、3Dモデルや動画などの資料を任意の場所に表示し、来場者の学習効率を高めることができます。
これは今後、さまざまな施設で導入が進んでいく用途になるでしょう。
②多言語対応にも対応
美術館や博物館には、当然多くの外国人が訪問します。
スマートフォンやタブレットで提供するARアプリは、そのアプリの作り次第で多言語対応をさせることが可能です。
通常は用意が必要な解説用のボードも、音声であれば限られたスペースを気にせずに情報を提供することができます。
日本ならではの文化に触れることを楽しみに訪日する外国人に、ARによって印刷物に頼らない多言語説明やガイドを用意することはとても喜ばれるでしょう。
③インタラクティブな体験を提供できる
ARを活用することによって、CGならでは表現を行うことが可能です。
また、ユーザーの操作によって演出が変化するようなインタラクティブな表現も可能です。
例えば美術館であれば、これまでだと「静止画を見る」という一方向の体験でしたが、これがARを活用していくと双方向にすることが可能です。
作品をARと一体化することで、来場者が触れられるようにしたり、あるいは「触れた」という動作をコンピュータが検出してユーザーの動きに合わせて反応したり変化したりするようなインタラクションを設計したりすると、これまでとは全く違ったユーザー体験になるでしょう。
④ユーザーが楽しめる
ARの大きな特徴が、ユーザーが楽しみながら情報を得られることです。
ARを取り入れた広告は、企業側が伝えたい情報を届けるだけではなく、ユーザーが能動的に楽しめます。結果として、ユーザーの記憶に残るうえに、企業に対し好印象を持つようになるというメリットがあります。
目の前の現実世界に歴史上の人物や、恐竜などのキャラクターが出現してくれるようなAR体験はファンの心を動かしますよね。
⑤施設工事を不要で演出を追加できる
また、施設工事が不要なのも、ARの大きなメリットの一つです。
ソフトウェアで提供できるため、実際に内装を施設工事するより大きくコストを抑えることが可能になってしまいます。シーズン毎の演出の切り替えなどにも相性が大変良いです。
内装費用をかけないのに、体験がリッチになってしまう。従来の主砲に比べてコストが下がるのに、逆に体験の質はよくなってしまう。こういった従来のやり方を破壊するようなインパクトがイノベーションだと考えると、ARはまさに世の中を大きく変化させるテクノロジーだと理解できます。
⑥情報が拡散されやすい
先述のとおり、ARはユーザーに楽しい経験を与えながら、情報が届けられます。
楽しかった、興味深い体験だったという印象が残れば、ユーザーがその経験を誰かに伝えたくなります。SNSなどのユーザー数が多いプラットフォームで紹介されると、さらに拡散されて多くの人にリーチできるでしょう。
美術館・博物館でのAR活用事例
美術館や博物館で、イベントへの誘客や満足度向上につながる国内外のAR施策を紹介してまいります。
①オンタリオ美術館のARアプリ
オンタリオ美術館では、独自のARアプリを開発してユーザーにサービスとして提供しています。
「ReBlink」と呼ばれるARアプリをインストール・起動し、マークのある作品の前でタブレットやスマホをかざすことによって、2次元の絵画が3次元の演出へと拡張されます。
②クリーブランド美術館のARコンテンツ
クリーブランド美術館は、最新のARテクノロジーとモーションキャプチャーテクノロジーを完全に組み合わせて、アート作品の拡張に最大限に活用しています。
インタラクティブなAR陶器製造スタンドやデジタルペインティングキャンバスなどは子供大人に関わらず大人気なコンテンツです。
こちらも非常に高度なARの活用事例です。
③東京国立博物館のARアプリ「トーハクなび」
東京都台東区の上野恩賜公園内にある日本最古の博物館「東京国立博物館(通称トーハク)」は、AR/VRなどの最新技術を積極活用しています。
日本と東洋の文化財の収集保管や展示公開を行っているトーハクでは、ARに対応したガイドアプリの「トーハクなび」を開発し、提供しています。
アプリをダウンロードすると、トーハクの展示を鑑賞するためのナビ機能や、自分の位置に連動した動画コンテンツの自動再生、ARで伝統技法を擬似体験できるコンテンツなどが楽しめます。
④29Rooms & Facebook(アートイベント)
世界最先端の美術館と同レベルの高度な専用ARアプリを開発するとなると予算も期間も大掛かりになってしまいますが、ここからはもう少し身近なARの活用事例です。
29Roomsは、『Refinery29』というミレニアルズから絶大な人気を得るメディア企業がニューヨークのブルックリンで開催したミレニアルズに向けたアートイベントです。
アートイベント「29Rooms」を運営する「Refinery29」というメディア企業は、日本では認知されていませんが、10〜30代の女性に焦点を当てたアメリカのデジタルメディアおよびエンターテイメント企業です。
2005年の設立以来、ミレニアル世代の女性から圧倒的な人気を得ています。
アートイベント「29Rooms」は大成功してチケットは毎年完売。イベントのInstagram公式アカウントのフォロワーは17.4万を越えており、世界20都市以上での開催を目指し、東京も視野あるという情報もあります。
そんな29RoomsとFacebookがコラボレーションした「THE MIRAGE」というイベントが開催されました。会場に展示されたアートを専用のARフィルターで読み込むと様々な演出を楽しむことができます。
デモ動画を見るだけでもワクワクするような世界観を感じることができます。
InstagramのARはフィルター単体で楽しむシチュエーションだけでなく、リアルイベントのコンテンツと組み合わせて提供すること可能です。
専用アプリを開発するよりもコストを抑えてARを導入できます。
ただし、データ容量が4MB以下になってしまうため、リッチなARというよりは簡単なエンタメコンテンツを提供するような使い方と合っているでしょう。
⑤アディダス ロンドン店(店舗内ARアート)
以下の事例は、Londonのadidasがストア内にアート作品を展示し、作品にスマホをかざすとAR体験が始まるというARの活用事例です。
InstagramのARを活用して、店内にARコンテンツを仕込んでいます。
3種のアート作品の拡張体験を楽しむAR
実際にInstagramからカメラを開いてみると、以下のようなナビゲーションが出てきます。
「アディダスと共に、未来へ行こう。」 「店舗内で3つのAR体験を探そう。」
上記のようなメッセージが表示され、左にスワイプすると3つのアートワークが出現します。
店内でこれら画像のアート作品を見つけ、このカメラで表示されている画像にアート作品を合わせると、面白いARの演出があるよ…という体験になっています。
⑥フロイト博物館のInstagram AR
こちらもInstagramのARを活用した事例です。
フロイトは、精神分析学という現代に続く学問の始祖とも呼ばれるオーストリアの精神科医です。
そんな偉大なフロイトの博物館は、なんとフロイト本人がかつてそこに住み、診療を行なっていた住居をそのまま博物館にしたもので、彼の生涯や精神分析の歴史について展示しています。場所はオーストリア・ウィーンにあります。
AR体験は、「フロイトは今もなお生き続けている」というメッセージが込められたARのタイトルからもわかる通り、「フロイトになれる」という体験になっています。
カメラを自分に向けてかざすと自分の顔がフロイト本人のように変化するようになっており、「フロイトさんが生きていた時って、こんな感じだったんだ」というリアリティや親近感を感じられます。
このように自社のInstagramアカウントに手軽にARを導入する美術館、博物館も増えています。
⑦EXPO2020ドバイののInstagram AR
U.A.E.(アラブ首長国連邦)のドバイにて2020年10月20日~2021年4月10日に開催された「ドバイ国際博覧会」は公式Instagramを運用しており、なんと同エキスポでもInstagramでARを提供しています。
フォロワー数は、すでに64万人!これは東京オリンピック公式インスタグラムのちょうど2倍の数値です。
実際に体験してみると、国際博覧会を想起するバルーンや花火が打ち上がる演出がARで楽しめたり、ドバイ国旗がフェイスペイントされるARを楽しめたりします。
こちらのARはまさにInstagramのストーリ機能でシェア・拡散されやすいARの設計になっており、プロモーション用途という意味では2025年に予定されている「大阪・関西万博」でもSNSとARを組み合わせて話題作りをしても良いでしょう。
日本が先端技術を活用したエンターテインメントやプロモーションで先行していることを示したいですよね。
ノーコードでWebARを制作できるツールも登場
ここまでは美術館・博物館の体験を拡張する「リッチなARアプリ」または「お手軽なInstagram」という2パターンのAR利用をご紹介してきましたが
「ARコンテンツで場所の価値を高める」というニーズに対して、特に専用アプリのインストールが不要な「WebAR」を選択するケースが増えています。その背景にノーコードで簡単にWebARコンテンツを制作できるツールの登場があります。
もともとWebARを活用したキャンペーンは0から開発する事例が主流でしたが写真や画像をアップロードするだけで、プログラミングをしなくてもARを制作できるため、プログラミングの知識や外部の制作会社を必要とせず、コストを抑えて自分達でARを使ったキャンペーンを展開できます。
こちらの「LocationAR(ロケーショナー)」というツールでは、ARコンテンツの制作からGPSによる位置情報の制御、ARを使ったスタンプラリーの制作まで、システムの中でARに関する多様なことを簡単に実現できます。
実際に、ロサンゼルスの焼肉店ではこちらのように可愛いキャラクターが出現する「お店限定のARコンテンツ」を同ツールを使って手軽に導入しています。
他にも様々な業界でWebARの手軽な導入が進んでいます。
専用のARアプリを開発するには金額も期間も大きくなりすぎるけど、Instagarmaだとお手軽すぎる。
そのような美術館や博物館のニーズに対して、プログラミングをせずに簡単にオリジナルのWebARコンテンツを制作するツールを検討してみるのも良いでしょう。
まとめ
以上、国内外の美術館や博物館、アート関連イベント等でのAR活用事例を解説しました。
イベントや美術館でのARの導入事例など、印象的なプロモーションが多かったですね。娯楽施設やイベント会場に問わず、ARを活用したマーケティングはあらゆる産業で日増しに重要になっており、今後は必須のアプローチとなるでしょう。
本メディア「ARマーケティングラボ」を運営するOnePlanetでは、AR技術を活用したソリューションに専門特化して様々な業界での多数の実績を有しています。
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