近年、FacebookがMetaへと社名を変更したり、Apple社が新デバイス「Apple Vision Pro」を発売するなど、「メタバース」や「VR」「AR」の技術に改めて注目が集まっています。Apple社の新デバイスは、スマホが無くなってしてしまうと予想されるほどのインパクトがある体験を提供し始めています。
この記事を読んでいる方の中にも「VR」や「AR」などの単語を聞く機会が増えた方も多いのではないでしょうか?中でも「VR」と「メタバース」が具体的にどう違うのか、よくわかっていない方も少なくないはずです。
そこで、今回は今後ますます伸びていくであろう「メタバース」「VR」「AR」といった技術について、具体的にどのようなものなのかについて解説します。記事を最後まで読めば、「メタバース」「VR」「AR」がどういった技術なのか、具体的にどういった場面で活用されているのかについて理解が深まります。
VR:仮想空間をまるで現実のように表現する技術
「VR」は「Virtual Reality(仮想現実)」の略称で、現実世界ではない仮想空間に、まるで現実であるかのような技術を体験するための技術です。ARは現実世界をベースにして、視覚的に映像やCGを拡張するものであるのに対して、VRは完全に現実世界とは切り離された「仮想世界」に人間が飛び込むことようになります。
仮想世界の定義はさまざまなものがありますが、視覚的にであれば感覚的にであれ、完全なる仮想空間に人間が没入できればVRであると言えるでしょう。
VRの主な活用シーン
VRの主な活用事例は現時点でも非常に多く、次のようなものがあります。
- 外科手術のシュミレーション
- ヘッドマウントディスプレイを着用してスポーツ観戦
- 旅行先の街や部屋の雰囲気の確認
医療の分野では、外科手術のシミュレーションにVRが多用されています。手術を人間で学習することは不可能であるため、これまでは模型や画像を利用してシミュレーションを行うしかありませんでした。しかし、VRのトレーニングであれば実際の手術の感覚が伝わりやすいだけではなく、想定外の状況になった時の対応などに関しても体験できます。
ミスが許されない医療の現場において、入念なリハーサルを行った状態で本番に臨めることには大変意義があると言えるでしょう。
また、VRはスポーツとの相性も抜群です。一般的に、スポーツを観戦する際には、球場・テレビ・スマホ・パブリックビューイングなど観戦する場所は色々あれど、あくまでも「映像を観る」という行為しかできませんでした。ここにVRを導入することによって、映像で観るだけでなく実際に試合に自分も参加しているかのような視点で楽しむことが可能になります。
こちらは観るだけだった野球を「体感するもの」に変えるVRサービスの紹介動画です。
そして、観光業においてもVRの利用による期待値は非常に高く、観光を検討している方がより旅行先について深く知るために使われます。例えば、旅行先について悩んでいる観光客にとって一番の悩みは「その観光地を選んで失敗しないか」という点ですよね。パンフレットやWeb上の情報だけでは、画像や動画などは見ることができても、どのような街なのかを具体的に知ることはなかなか難しいもの。
旅行大手のH.I.Sでは店舗にVRゴーグルを設置して、ユーザーに実際に現地へ行ったかのような疑似体験を提供するサービスも提供しています。
旅先の街や部屋の雰囲気をVRで確認することができれば、より没入感のある下見をすることができるようになります。結果的に選ぶ上での情報量も多くなるため、実際に行ってみるハードルも下がることが予想されます。なかなか遠くに旅行できない方にとってもVRで旅行の疑似体験ができるため、より広い範囲のニーズに応えることもできます。
メタバースとは?
2021年10月28日、Facebookが社名を「Meta」に変更した影響もあり、近年になって突如、「メタバース」という言葉を耳にする機会が増えるようになりました。しかし、この「メタバース」という言葉の意味はなかなか掴みにくいという方も多いのではないでしょうか?
ARやVRはあくまで3次元の空間に情報を表示させるテクノロジーそのものであり、その空間の中で人々が交流したり、商品を購入したり、社会生活が営まれるような状態のことを指して「メタバース」と言います。
つまり、この「メタバース」という概念は、ARやVRの延長線上にある未来という考え方ができます。メタバースを簡単に要約をするならば「従来とは異なる3次元(3D)の空間での”体験”や”そのサービス”のこと」を指す言葉と言えるでしょう。
従来のインターネット(PC・スマホ等)が平面的なスクリーンに表示されていた2次元の体験であることに対して、VRゴーグルやARグラスを通じて生まれてくる、より体験やサービスが立体化したデジタル体験のことを総称しているのです。
メタバースの中ではもうすでにファッションブランドが生まれてきていたり、そのブランドをNIKEが買収したり、渋谷109がSandboxというメタバース空間に土地を購入して店舗を出したり、目まぐるしい動きがあります。
メタバースについて詳しく説明をするとボリュームが大きくなるため以下に詳しく解説した記事を紹介させていただきますが、ARやVRの発展したその先が「メタバース」である、とここでは覚えておいてください。
AR:現実世界の情報に別の情報を拡張できる技術
「AR」とは「Augmented Reality」の略で、日本語では「拡張現実」と訳されます。
「拡張現実」とは、その名の通り「現実」を「拡張」する技術のことで、人間の視覚情報に視覚だけではない情報を付加して表示するタイプのものが最もポピュラーです。
スマホやタブレットのカメラ映像に表示される映像に対して、その場には実際に存在しない映像やCGを重複させて出現されることが考えられます。2010年代に入るまでは一般的に広く浸透しておらず、新しい技術としてもてはやされていました。
しかしスマートフォンがARに対応すると、流行のために一気に私達の身近なサービスへと生まれ変わっていったのです。
ARの主な活用事例
ARが活用されているのは、主に次のような事例です。
- 夜空にかざすと星座が確認できるようになるアプリ
- ARによって家具配置をシミュレーションできるアプリ
- 自撮りした顔を認証すると画面にフィルターがかかるアプリ
夜空にかざすと星座が視認できるようになるアプリは、最も簡単にARの技術を利用したアプリです。空間を把握して、夜空の方角に合わせて星座が視認できるようになるにはARの技術が必要不可欠でした。
また、大手家具量販店のIKEA(イケア)では、自社の商品を検討する際に、ARの技術を利用して家具の配置をシミュレーションできるアプリを開発しました。これまでは「部屋のスペースに対して家具が収まるのか」を検討する際に、商品を調べてサイズを測り部屋のスペースを測り……と自分で測る方法しかありませんでした。
しかし、ARの技術を使えば、長さを測らなくても家具がそのスペースに配置可能かわかるようになり、部屋の雰囲気に家具が合うかどうかまで判断できるようになりました。
そして、10代から20代を中心に人気のアプリ「Instagram」や「SNOW」などで使われている自撮りすると顔にフィルターがかかる機能も、ARの技術によってもたらされたものです。
このように、ARはスマホを起点として提供できるため、VRのようなデバイスがない分、何気なく使っている身近なアプリの中にもその技術が多用されているのです。
AR技術だけに特化して深掘りしたい方は、こちらの記事もお勧めです。
AR・VR市場は確実に盛り上がっている
テレビや新聞などで見かける機会が増えているため、AR・VRの市場は盛り上がっていると感じている方は少なくないでしょう。しかし、実際にどれくらい盛り上がっているのか定量的に把握できている人は多くありません。
IT専門調査会社であるIDCによれば、世界のAR・VRのハードウェア・ソフトウェアや関連サービスを合計した支出金額は、2023年には160.5億ドル(約17兆3,000億円)になるとしています。
2018年から2023年の年間平均成長率は78.3%という非常に高い値になり、今後もますますの急成長が見込まれています。
分野別で見た場合、消費者向けの商品がAR/VR市場全体を牽引しています。また、小売業や運輸業などオペレーション面での活躍が期待できそうな市場でより成長が期待されます。
今後ますます右肩上がりで成長していく分野でもあるため、AR・VR市場の成長には目が離せません。
AR・VRの技術で注目したい最先端事例
それでは現在、AR・VRの技術はどのように利用されているのでしょうか?
先程の事例よりも具体的に、今注目されている最先端の事例について8つ紹介していきます。
- 「Wanna Kicks」
- 韓国のプロ野球
- 「Google Map」
- 「VR内見」
- 「社員教育VR」
- 「ANA Virtual Trip」
- 「セフォラ」
- 「ARスタンプラリー」
- 「VR旅行」
- メタバース時代のデジタルファッション
最先端事例①:「Wanna Kicks」ARでスニーカー擬似試着
Wanna Kicksとは、スマホをかざすだけでARスニーカーを擬似試着できるスマホアプリです。
インターネットで靴を購入する際にありがちなのが、実際に届いてから服のサイズが合わなかったり、思った色と違ったりすること。
しかし、ARによる擬似試着体験ができれば、サイズミスや届いてからのイメージとのミスマッチが起きにくいと考えられます。
開発元の「WANABY」はアメリカのスタートアップで、ARネイルも試せる「Wanna Nail」もリリースしており、これからが楽しみです。
最先端事例②:韓国のプロ野球で!スタジアムにドラゴン?
韓国のプロ野球球団「SK Wyverns」が、開幕式でARを用いた演出を実施しました。
観客は、専用のアプリを立ち上げると、チームのマスコットキャラクターが出現し、パフォーマンスを観ることができるというキャンペーンARを作り上げたのです。
ARと球場が一体化しておりあたかも空にドラゴンが舞っているような演出は、観る側の臨場感があり一緒に楽しめるキャンペーンが生まれています。
最先端事例③:「Google Map」 AR案内機能が登場
Google Mapに搭載されているARナビゲーション機能は、目的地を入れてAR開始ボタンを押すだけで、瞬時に今いる場所を認識し、矢印が表示されて道案内をしてくれます。
初めて訪れる場所の場合は、位置情報がわかっていてもどこを向いてあるき出せば良いのかわからなくなることがありますよね。
ARの場合、目の前にガイドが現れるためわからなくなることがほとんどありません。
案内に関する領域は、これからどんどん成長していくことが予想され、物凄い勢いで進化していきます。
最先端事例④:「VR内見」 内見をVRで疑似体験
不動産領域においても、VRは非常に大きな効力を発揮しています。
見たい物件がある場合、通常は見たい場所まで行き、不動産屋を訪ねて……といったステップを踏まなくてはなりません。
しかし、VRのテクノロジーを使えば、現場に行かなくてもその場で内見ができてしまうため、家の雰囲気をより詳細に知ることができます。
今後ますます内見のVR化は進んでいく見込みで、より簡単に内見ができるようになるでしょう。
最先端事例⑤:「社員教育VR」Walmartが実験中
これまで、社員教育マニュアルは動画で見たり、マニュアルを読んだりすることでしかできませんでした。
しかし、VRで社員教育用の動画を作れば、より没入感のある研修を行うことが可能になります。
実験を実施しているWalmartでは「VRトレーニングは体験的で記憶に残りやすく、活用しやすい」としており、VRで社員教育を行うことの意義を感じています。
最先端事例⑥:「セフォラ」コスメ試用AR
アメリカでNo.1のコスメセレクトショップ「セフォラ」のAR導入事例で、店内にiPadが設置されており、誰でも簡単にARでコスメを試せるようになっています。
「Instagram」や「SNOW」などの「盛れるアプリ」だけでなく、最近は実際のメイクをARで疑似体験できる「コスメ×AR」の領域で盛り上がっています。
ブランドにとっても、ARにとっても非常に良い体験となっています。
最先端事例⑦:バーチャルメイク世界TOP「パーフェクト」のメタバース
2022年1月6日、バーチャルメイクの世界最大手であるパーフェクト社は、公式ウェブサイト上のメタバースを通じて最新のAIとARを搭載したソリューション技術各種の紹介と体験ができる空間「3Dバーチャルブース」を公開しました。
実際にメタバースの中に入ると、同社のCEOのご挨拶ムービーが自動で再生されるようになっており、そのまま3Dで制作された空間の中をぐるぐると回遊できるようになっています。
まさにリアルの小売店の商品棚と同じように、空間の中に設けられた各ブースには個別の体験へと遷移するURLが設置されています。こちらの記事で詳しく紹介されていますが、まさに世界最先端の事例と呼べるものなので、知ることで知見を深まることでしょう。
最新事例⑧相模鉄道のARスタンプラリー
こちらは2022年3月に神奈川県の鉄道会社、相模鉄道が実施したARスタンプラリーのイベント「春のそうにゃんスタンプラリー」の事例です。
この事例が最新と言えるのは、「WebAR」という技術を選定していることで、専用アプリやARグラスなど特別な環境を必要とするデモンストレーションと異なり、極めて実用性の高い形でユーザーに提供した点にあります。
イベントとしては、横浜駅など相鉄線の沿線にある3つの商業施設の中にARコンテンツが仕込まれており、それぞれを体験して巡りスタンプラリーをクリアすると特典がもらえるというイベントになっています。
ARがこれまで抱えていた最大の課題は、「ARをやろうと思ったけど、アプリをインストールするなら面倒だからいいや。」というアプリインストールの障壁によるユーザーの離脱でした。Wow!と心動かすARコンテンツを作っても、多くの方に使ってもらえない導線になりやすかったのです。
相模鉄道の「ARスタンプラリー」は、「ロケーショナー(LocationAR)」というWebARの制作ツールを活用して制作されており、専用アプリのインストール不要なAR体験となっています。
さらに驚くことは、プログラミングをせずに「ARスタンプラリー」の制作までできるツールになっているため、コストを抑えて自社オリジナルのイベントを開催できた最新事例となっています。
このようなSNS投稿が生まれてくるのも、「WebAR」を活用した手軽に楽しめるイベントならではと言えるでしょう。
そうにゃんARスタンプ超楽しい(●´⁰౪⁰`●) pic.twitter.com/TjOxjZdF17
— 新々キョダモさん(●⁰౪⁰●) (@1919tissue) March 15, 2022
制作会社にARの開発を頼まずとも、新しいツールを活用することで自分たちだけで工夫してARイベントが実施できるという事実は、まだ知られていませんが、これから多くのブランドや企業に広まっていくことでしょう。
相模鉄道 公式サイト:動く「そうにゃん」を体験できる「春のそうにゃんARスタンプラリー」を開催
最新事例⑨H.I.SのVR旅行
コロナでお出かけがしづらい状況下、海外旅行はなおさら遠のいています。
そのような中でも、旅行大手のH.I.SではVRで下見ができるバーチャル旅行をサービスとして提供しています。
部屋に居ながら、国内や海外の観光地を散策できる仮想体験はとてもワクワクします。
専用のVRゴーグルを装着し、予め用意されたいくつかの旅先へといくことができる体験になっています。
最新事例⑩デジタルファッションブランド「XXXXTH」
VRとARのその先にある「メタバース」時代を見越して、3D空間の中で身に着ける「バーチャルファッション」が話題です。
XXXXTH(フォックス)というデジタルファッションのブランドは、「NFT」と呼ばれるデジタルコンテンツのマーケットプレイスでスニーカーやネックレスなどの3Dで制作されたアイテムを展開しています。
そのNFTアイテムを、株式会社OnePlanetの「AR for Metaverse」というサービスを活用することで、メタバース世界で身につけるバーチャルアイテムを現実世界でも身につけられるようにする取り組みを発表しました。
このようにAR技術によって、VRやメタバースは仮想空間だけでなく現実世界ともシームレスにつながる世界になっていくことでしょう。
まとめ
メタバースとVR、ARに関する違い、実際の具体的な導入事例などについて解説してきました。
近年話題のメタバースも含めて、AR・VR市場は今後ますます伸びていく市場であり、私達の身の回りにもより多くの機会に導入されていくことが予想されます。
また、今後は具体的な事例がどんどん増えていき、思わぬところでこのような技術が使われること間違いありません。ARやVRに興味がない方でも、どんな違いがあってどんな技術なのかを人に話せるくらいは知っておくと良いでしょう。
ARのような新しいユーザー体験の導入にご興味があるという方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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