小売業界におけるメタバース活用

いま話題の「メタバース」ですが、実際にはどのように活用すれば良いのかイメージが持ちにくいと感じることもあるのではないでしょうか?

しかし、海外に目を向けてみると、NIKE(ナイキ)がデジタルだけで展開するNFTスニーカー企業「RTFKT」を巨額で買収するなど、今まで考えられなかったような目まぐるしい展開が始まっています。

今回は、国内外のメタバースへの最先端の取り組みについて解説していきます。

そもそも「メタバース」とは

そもそも、メタバースとはどういう意味でしょうか?

メタバースという言葉は、「超越した」「高次の」という意味を持つ「メタ(meta)」という単語に、「ユニバース(universe/宇宙)」を組み合わせた造語です。

メタバースの定義はさまざまであるため、一概に「これ」と言いづらい側面はありますが、現実空間のようにたくさんの人が自由に動き回ることのできる立体的な(3次元の)仮想空間のことを指していることが多いです。

「そもそもメタバースって何?」という方は、よりメタバースについて詳しく解説したこちらの記事を最初に確認してみてください。

メタバースとは何か?ムーブメントの背景から具体的なサービスまで徹底解説

さまざまな活用方法が期待されるメタバースですが、特にわかりやすい分野として「ゲーム」が取り上げられることが多いです。

一例ですが、「Fortnite(フォートナイト)」というオンラインゲームでは、ゲーム以外の要素として、2020年4月に音楽アーティストのTravis Scottがフォートナイト上でバーチャルライブを実施しました。

アメリカのフォーブス誌によると、開催された9分間のバーチャルライブで約2,000万ドル(21億円)の売上があったとしており、話題を集めました。

フォートナイトのように、バーチャル世界の中でアーティストがライブを開催するといった活用方法も広がりつつあり、今やバーチャル空間での活動は珍しいことではなくなりつつあります。

さらに、フォートナイトではプレイヤーは自分のアバターのスキン(見た目)や動きを自分自身でつくり出すことができるクリエイティブ制作機能が提供されていたり、その世界の中で世界中の人々と交流したり、単にゲームをするだけの場所というよりも、コミュニケーションのために集うソーシャルな場所へと変化しています。

ユーザーが外出しなくても気軽に集まってコミュニケーションができる「サードプレイス」として活用されてるようになった結果、フォートナイトは単なるゲームではなく「SNS」のような位置付けへと進化しており、こういった動きこそ、まさに「メタバース的」と捉えることができます。

これ以降は、「小売業界」にフォーカスを当ててメタバースの活用について解説していきましょう。

メタバース活用方法:美容業界での事例

美容・ビューティの業界では、いち早くAIを使ったバーチャルシミュレーションなど、ARの分野で新しい体験が生まれてきていました。

そのような中で、2022年になり、バーチャルメイクの世界最大手であるPERFECTがメタバースの発表をするなど、新しい動きが出てきています。

では、美容業界のメタバースの動向について紹介していきます。

パーフェクト社のメタバース

2022年1月、バーチャルメイクの世界最大手であるパーフェクト社は公式ウェブサイト上で、最新のAIとARを搭載したソリューション技術各種の紹介と体験ができる空間「3Dバーチャルブース」を公開しました。

実際にメタバースの中に入ると、パーフェクト社のCEOの挨拶ムービーが自動で再生され、そのまま3Dで制作された空間の中をぐるぐると回遊できるようになっています。

リアルの小売店の商品棚と同じように、空間の中に設けられた各ブースには、個別の体験へと遷移するURLが設置されています。

パーフェクト社のメタバース

さまざまな未来的な体験ができるメタバース空間になっており、次のようなコンテンツを体験することができるようになっています。

PERFECT社のメタバース
  • ARメタバースとビューティ&ファッションNFT – メタバース世界のデジタル商品を全てのカメラ対応デバイス上で体験可能にすることで、バーチャルアセットへのアクセスを容易にし、更にビューティ&ファッションNFTを作成することで、メタバースですべてが完結するVcommerceを実現します。
  • ビューティテック- メイクアップ、ヘアカラー、ネイルなどのバーチャル試着体験や、AI肌診断機能、メイクのハウツーをステップバイステップでAR体験できる機能「YouCam Tutorial」を体験できます。
  • ファッションテック – 数々の受賞歴を持つパーフェクト社の技術を使ったアイウェア、イヤリング、アクセサリー、時計、ブレスレット、指輪のバーチャル試着体験で、没入感のあるショッピング体験を提供します。

    参考:パーフェクト社、CES 2022向けにメタバースを公開

    以下は一例ですが、メタバース空間の中にあるバーチャルメイクのブースにあるボタンをタップし当該Webページへ遷移すると、自分の顔を撮影してメイクをシミュレーションするバーチャルメイクAR機能が提供されます。

    自分の顔を撮影してメイクをシミュレーションするバーチャルメイクAR機能

    また、メタバース空間の中にある髭(ひげ)シミュレーションのブースにあるボタンをタップして当該Webページへ遷移すると、自分の顔を撮影して、髭をシミュレーションするAR機能が提供されます。

    自分の顔を撮影して髭をシミュレーションするAR機能

    これらの他にも、時計やアクセサリーの試着、AI肌診断など、メタバース空間の中でさまざまな機能が提供されています。

    また、22022年3月に入ってPerfect社はついに本格的にNFTに参入しました。

    ARによってバーチャル試着ができるメイクアップやアクセサリーのNFTの展開を開始し、実際にOpenSeaで購入することができます。

    パーフェクト社のメタバースやNFTについてもっとて詳しく知りたいという方は、こちらの解説でしているので参照してみてください。

    ビューティ × メタバース&NFT|バーチャルメイク、パーフェクト社の最新事例を解説

    超精巧なバーチャルヒューマンの活用事例

    メタバース×小売の文脈では、「バーチャルヒューマン」の活用も注目すべきテーマの一つです。

    2021年4月、カネボウ化粧品「KATE」は「REAL/UNREAL. その肌、リアルか、アンリアルか。」というコピーのWebCMを公開しました。

    このCMは、実在の人間であり「アンドロイドお姉さん」として活動するタレントのSAORI(サオリ)氏と、精巧なバーチャルヒューマンとして活動している「imma(イマ)」と「Ria(リア)」が競演しており、本当の人間とバーチャルヒューマンの見分けがつかないと話題を集めました。

    このように実際の人間ではないバーチャルヒューマンがモデルとして広告を担うような世界観はメタバース的といえるでしょう。

    しかし、このような実在の人間と区別がつかないほど精巧なバーチャルヒューマンは非常に大容量になり、そういった大容量モデルを3Dで制作されるメタバース空間の中に表示させるには現在はまだ容量の制約があります。

    5Gや6Gの普及で進化していく領域と期待されてはいますが、まずはこのような精巧なバーチャルヒューマンはYoutubeやInstagramなどで映像の世界で親しまれていき、徐々にメタバース世界にも広がっていくような流れになると考えられます。

    メタバース活用方法:ファッション業界での事例

    続いては、ファッション業界におけるメタバース的な動向や事例を紹介していきます。

    前提として、メタバースは「インターネットの中に存在する、もう一つの世界」であり、その中で自分の見た目を司るのがアバターです。アバターは、もう一つの世界における自分の存在そのものとなります。

    そのため、メタバース内でのアバターの位置づけは自分自身そのものであり、アイデンティティを担う非常に重要な役割を持ちます。

    アバターの例

    アバターが身にまとうアイテムは、現実世界のファッション業界と同じような市場経済になると考えられます。

    これからやってくるメタバース世界において、「デジタルファッション」は非常に重要なアイテムなのです。

    NFTとARの両方で展開するデジタルファッションブランド「XXXXTH(フォックス)」

    海外が先行するメタバース分野で、日本国内でユニークな事例として取り上げられたのは「XXXXTH(フォックス)」というデジタルファッションのブランドです。XXXXTHは、NFTのマーケットプレイスでスニーカーやネックレスなどの3Dで制作されたアイテムを展開していました。

    AR技術を活用することで、これらメタバース世界で身につけるバーチャルアイテムを現実世界でも身につけられるようにする取り組みを発表しました。こちらの3Dモデルで制作されたデジタルファッションアイテムは、「OpenSea」などのNFTマーケットプレイスで実際に購入することが可能です。

     

    さらに、AR技術を提供する株式会社OnePlanetの協力のもと、制作されたNFTを実際にAR技術によって身につけることまでできるようになっています。

    この事例のように、これからファッションはデジタルでも提供されていき、さらにAR技術によってメタバースは仮想空間だけでなく現実世界ともシームレスにつながる世界になっていくことでしょう。

    NIKEに買収されたデジタルスニーカーブランド「RTFKT」

    2021年にNike(ナイキ)が買収することを発表したNFTアイテムスタジオであるRTFKT(アーティファクト)は、小売業界を揺るがすデジタルファッションのブランドとして最も先行するスタートアップ企業の1社です。

    当該スタートアップは、2021年5月にアメリカを代表するベンチャーキャピタルであるAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)が主導して800万ドル(約9億1,000万円)のシードラウンドの資金調達を実施しました。

    その際、評価額は3,330万ドル(約37億8,000万円)とされていました。

    Nikeによる買収はそれ以上の事業価値とされており、いかにメタバースの世界の中でユーザーが身につけるアイテムに今後価値が生まれてくるのかを物語る重要な出来事となりました。

    NIKEに買収されたデジタルスニーカーブランド「RTFKT」

    このように、スタートアップ企業ばかりがメタバースに参入をしているわけではなく、Nikeのような既存の大手ブランドや小売企業もメタバースへの参入を加速させている現状を知っておくことも重要だといえます。

    メタバース活用方法:小売業界での事例

    小売業界においても、メタバース世界でのバーチャルショッピングなど、最先端の取り組みが見られるようになってきています。ここでは、小売業界におけるメタバースの活用事例を紹介していきます。

    世界最大手「Walmart」のメタバース的な取り組み

    まずは、世界の小売最大手Walmart(ウォルマート)のメタバースへの取り組み事例を紹介しましょう。

    Walmart社が2017年から取り組んできた、未来のバーチャルショッピングをイメージしたVRの映像がこちらです。現在のメタバース的な世界観を早くから研究開発してきていることがわかるでしょう。

    既存の楽天やAmazonと比べ、立体的に商品情報を確認することが可能です。そのため、購入前と後のギャップや返品率は現実世界と同じ水準になっていくと考えられています。

    さらに、Walmart社は実際の店舗にもバーチャルな体験を持ち込む動きを見せています。下の動画は、2018年のクリスマスにウォルマートが実施したHolidays Campaignの様子です。ARが店舗内のエンタメ性を高めていることがわかります。

    100%のバーチャル世界に書き換える「VR」と比べると、ARは現実世界にバーチャル情報を重ねて演出するため、「商品の陳列棚の間にある通路=リアル空間」に交通の障害物となるものを設置することなくバーチャル情報を表示することができます。

    Googleの小売業界における革新

    下の動画は、Googleが一緒にWalmart社のショッピング体験を設計したコンセプト動画です。このような情報を見ると、未来のお買い物がこれまで以上のエンターテインメントになることが直感的に理解できます。

    PokemonGOを提供するアメリカ・ナイアンティックは、現実世界とメタバースがリンクした「Real World Metaverse」というコンセプトを打ち出しました。バーチャルな仮想空間の中だけがメタバースではなく、このように現実世界の体験も日々拡張されています。

    それらのインフラとなるテクノロジーが「XR」(ARやVRの総称)という位置付けだと理解すると良いでしょう。

    まとめ

    メタバースは、次の時代のインターネット(Web3.0)とも言われています。今となってはスマホがなかった時代が想像できないように、今後メタバースのない世界など信じられないと言われるほど、これからメタバースは社会に浸透していくことでしょう。

    本メディアを運営する株式会社OnePlanetでは、企業やブランドのメタバース対応に専門特化した「AR for Metaverse」というサービスを提供しています。「メタバース時代に大きな存在感を示したい」「新しいサービスを生み出したい」というニーズがあれば、まさに今はぴったりのタイミングです。

    ぜひ弊社がお力添えできればと思っていますので、気になることがあればお気軽にお問い合わせください。

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