飲食業界のAR

飲食業界がAR技術を導入することで、顧客の購買意欲やエンタメ・非日常性などを高められます。すでに食品メーカーやレストランの中には、AR技術を活用し、ワンランク上のビジネスを行っているところがあります。

遅かれ早かれ、飲食業界でのAR導入は必須となるでしょう。そこで記事では、飲食業界のAR成功事例をメインに解説していきます。

AR技術とは

AR技術とは

ARとは、Augmented Reality(仮想現実)の省略形です。よく知られているVRが完全な仮想世界を作るのに対し、ARは現実世界にデジタル情報を追加します。

飲食業界で多く見られるのが、専用アプリでメニューをかざすことで、AR技術によって作り出された3Dの料理が表示されるというもの。

AR導入を考えているなら、簡単にARマーカーについて理解しておきましょう。ARマーカーとは、ARを表示させるための導線です。スマホやタブレットなどの電子端末で、ARマーカーを認識すると、3Dグラフィックスや動画再生がされます。

ARマーカーとして登録できるのは平面画像。ポスターやイラスト、パンフレット、商品メニューなど平面画像なら何でもARマーカーにできるのです。

飲食業界がARを活用することで期待できる効果

まだまだ国内ではARは普及していませんが、世界のメーカーやレストランの中には、すでにARを導入してビジネスを成功させているところがあります。飲食業界がAR導入することで期待できる効果は、大きく5つに分けられます。まずは、ARが飲食業界にもたらす効果について解説しましょう。

期待できる効果
  • 3Dメニューで購買意欲を促せる
  • 新規顧客の開拓につながる
  • 効率的に顧客情報を集められる
  • 話題となる店の宣伝を行える
  • 従業員のスキルアップにつながる

3Dメニューで購買意欲を促せる

飲食業界で多いAR使用事例が、メニューの3D化です。メニューをARマーカーにすることで、顧客がスマホなどでメニューをかざすと、実際の料理が3Dで表示されます。

実寸大の料理を表示することで、顧客の購買意欲を促せるのはもちろん、注文決定時間の短縮や「思ってた料理と違った」などの後悔を防げます。さらに顧客は、料理のサイズや栄養情報、原材料なども詳しく知ることができるのです。

新規顧客の開拓につながる

目新しいAR技術は、多くの人々の注目を集めます。ARを活用するだけで、新たな人々にリーチすることができるでしょう。

ARには、ビジュアルの力であらゆる壁を取り払う力があります。言語の壁は良い例でしょう。

日本語ができない外国人は、メニューだけ見てもなかなか料理のイメージができません。しかし、ビジュアルの力で言語の壁を取り払うARを使えば、外国人でも十分に納得してメニュー選びができるようになるのです。

上手にARを活用することで、ミレニアル世代や外国人など、新たな顧客層の開拓に期待できます。

効率的に顧客情報を集められる

飲食業界において、顧客情報収集は重要な業務です。膨大な顧客情報を集めることで、新メニュー開発や接客サービスの向上、リピーター獲得などの効果に期待できます。問題は、顧客情報を集めるのが難しいことです。

従来の情報の集め方は、アンケートやポイントカード配布などが一般的でした。しかし、そういったアナログな方法では、効率的に情報収集が行えません。

AR搭載のアプリを使えば、顧客の基本情報から各商品の滞在時間まで、あらゆる情報を集められるのです。中でも、顧客の味の好みを知れるのは大きなメリットでしょう。

話題となる店の宣伝を行える

ビジネスの成功には、効果的な宣伝が欠かせません。見方を変えれば、どれほど優れた商品や料理を開発しても、適切な宣伝を行わなければ人々は集まらないのです。

近年、テレビコマーシャルや新聞広告などの宣伝と同じくらいSNSマーケティングが重要となっています。SNSで話題になる宣伝を行えば、多くの集客に期待できます。

比較的新しい技術のARを使えば、顧客に嫌われない、むしろ、ともに楽しんでもらえる宣伝を作れるのです。すでに多くの飲食メーカーは、ARを使った宣伝を実施しています。後ほど事例をたくさん紹介するので、それらを参考にすると良いでしょう。

従業員のスキルアップにつながる

ほかの業界と同様に、飲食業界も優れた人材を育成しなければなりません。あまり知られてはいませんが、ARを活用することで効率的に従業員トレーニングを行えるようになるのです。

たとえば、シェフの育成にARを活用できます。シェフはスマートグラスを装着することで、食材の切り方や手順までグラフィックスで確認しながら調理修行を行えます。同様に、ウェイターの研修も効果的でしょう。

ARを研修に活用することで、社員はより深く理解しながら、効率的にレベルアップを図れるのです。また、トレーニングの質を高めつつ、人材育成費用の削減にも期待できます。

飲食業界が宣伝・マーケティングでARを活用した事例

ARを広告やマーケティングで活用するメリットは、消費者が参加できるユニークな広告を作成できることです。インタラクティブな広告になるので消費者に嫌われることなく、商品やレストランの宣伝が行えるでしょう。ここからは、飲食業界が宣伝・マーケティングでARを活用した成功事例を紹介します。

飲食業界が宣伝・マーケティングでARを活用した事例
  • ケンタッキー・フライド・チキン
  • ゲータレード
  • コカ・コーラ

ケンタッキー・フライド・チキン

インドのケンタッキー・フライド・チキンは「WOW」というキャンペーンを実施しました。これは、ケンタッキーの値段が高いと思っている顧客にARの力で値段が安いと証明するものです。

ユーザーが専用アプリをダウンロードして指定のお札をスキャンすると、そのお札で購入できるメニューが3Dで表示されます。例えば、1,000円札をスキャンするとハンバーガーとドリンクが現れ、5千円札だとハンバーガーセットとチキンが現れるといった具合です。

独創的なアイデアということもあり、アプリダウンロード数は35,000を超え、インドのiTunesストアでアプリが取り上げられるほどの成功を収めました。

ゲータレード

スーパーボウルは全米中の人々が視聴することもあり、企業にとっては最大の宣伝チャンス。どの企業も独創的な広告で勝負を仕掛けますが、2016年の広告の勝者は飲料メーカーのゲータレードでした。

毎年スーパーボウルの勝利チームが、コーチたちにゲータレードの入ったバケツをかけるのが伝統になっています。その伝統を利用して、ゲータレードはスナップチャット上でARフィルターを制作しました。

ユーザーが自撮りモードにして口を開けると、ARの力でゲータレードがかけられる演出を楽しめるのです。この広告はテレビ放映してないにも関わらず、48時間以内に1億6千万以上のページビュー、800万以上の動画投稿が行われました。

世界の企業はスナップチャット上で、ARフィルターを製作しています。日本でも人気が出る可能性は十分にあるので、今からチェックしておくのがおすすめです。

コカ・コーラ

コカ・コーラは全世代にブランドメッセージを伝えるため、ARテクノロジーを活用しました。

コカ・コーラの缶をスマホでスキャンするとキャラクターが登場して、アニメーションが開始されるのです。アニメーションの基本の流れは、登場人物たちが見た目などの違いを受け入れて、最後は共にコカ・コーラを飲むというもの。

AR技術を活用することで、記憶に残るポジティブなブランドメッセージを伝えるのに成功しました。

コカ・コーラはARテクノロジーの導入に積極的で、2018年にはショッピングモール内にAR搭載のディスプレイを設置しています。ディスプレイの前に立つと、ARが作ったコーラの空き缶が捨てられ、ユーザーはそれをごみ箱に捨てるゲームが開始されるのです。

このゲームを通して、コカ・コーラはリサイクルの大切さを訴えました。

飲食業界がARメニューを制作した事例

ARメニューと一口に言っても、料理イメージの具体化やエンタメ性の向上など使い道はさまざまです。ここからは、飲食業界でARメニューを制作した事例を紹介します。

飲食業界がARメニューを制作した事例
  • マグノリアベーカリー
  • 19クライムズ
  • ビノ・レバンティーノ
  • ドミノピザ
  • シップ

マグノリアベーカリー

ニューヨークに拠点を置くパン屋マグノリアベーカリーは、世界初のAR搭載ケータリングメニューを作成しました。

マグノリアベーカリーの顧客の多くは、ウェディングケーキを注文します。ウェディングケーキ選びに慎重になるのは当然で、顧客はケーキの味だけではなく、見た目にもこだわるのです。しかし、従来のメニュー写真だと、サイズやディテールまで確認できません。

そこで、ARメニューが開発されました。タブレットやスマホなどでお皿を映すと、そこに実寸大の商品が表示されるのです。顧客は商品を360度から確認とズームも可能。

ウェディングケーキの仕上がりを正確に確認してから注文できるため、顧客のエンゲージメント上昇に貢献したと思われます。

19クライムズ

オーストラリアのワインメーカー19クライムズは、AR搭載のアプリを開発し、普通のワインボトルにエンタメ性を追加しました。

ワインボトルに描かれているのは、19人のイギリス人犯罪者。かつてイギリスの犯罪者はオーストラリアに流刑され、その道中多くの犯罪者が死んだのです。オーストラリアにたどり着いた生き残りの19人の犯罪者たちが、オーストラリア文化を作りました。

専用アプリでボトルのラベルをかざすと、各流刑者が彼らのストーリーを話してくれるのです。この取り組みは大成功し、売上は60%増加、ブランド価値は70%も上がりました。19クライムズのAR導入事例は、ネットを中心に大きく話題となり、ブランドイメージと売り上げを高めた良い例です。

ビノ・レバンティーノ

ニューヨークのワインバー、ビノ・レバンティーノは豊富なデザートが人気を集めています。しかし、デザートの中にはカターイフのように、風変りなメニューがいくつかあるのです。

従来の、文字だけのメニューでは、顧客はデザートの想像がつきません。そこで顧客にメニューの説明をするのではなく、AR技術を使って、実際に料理を見せることにしたのです。

顧客は渡されたタブレットを使うことで、テーブル上に実寸大の料理を映せるようになりました。もちろん、360度からの確認やズームも可能。

バーのオーナーによると、ARを導入してから売上は22%増加したそう。今後、外国人の顧客が多かったり、イメージしにくいメニューを提供したりする飲食店では、ARメニューの導入が必須となるかもしれません。

ドミノピザ

宅配ピザで有名なドミノピザは、AR搭載アプリピザシェフを開発しました。

ドミノピザの売りは、顧客が自由にピザのトッピングを行えること。しかし、なかなか完成形をイメージできないというデメリットがあり、そのデメリットを解決するためにアプリが開発されたのです。

アプリを起動すると、何もトッピングされていないピザがスマホ画面上に現れます。ユーザーは、好きな具材と量を選び、リアルタイムでピザをトッピングするのです。ピザが完成したら、そのままショッピングカートに入れて、注文可能。

このアプリのおかげで、ユーザーはシームレスなピザ注文を行えるようになりました。

シップ

シップはオンラインワイン販売会社です。近年、ミレニアム世代がワインを好んでいると調査で判明しています。そこでシップは、ミレニアム世代に好まれる取り組みを考え、AR搭載アプリを開発しました。

アプリ上でワインのラベルをスキャンすると、飲むのに最適な温度や合う料理、生産地などワインに関するあらゆる情報がグラフィックスで表示されるのです。シップは、取り扱っているワインラベルをARマーカーにしたというわけですね。

このアプリの魅力は、文字だと読みにくいワイン情報が、グラフィックスで表示されるため、消費者はすぐに情報理解できること。特に目新しさもあって、ミレニアム世代に好まれているようです。

飲食業界がARを活用してエンタメ・非日常性を高めた事例

飲食業界の中でも、レストランやバーなどの外食産業はエンタメ性を高めることが重要です。その理由は、人々は味だけではなく、非日常性を求めて外食をするから。

味だけを求めるなら、デリバリーで十分であり、人々がレストランに赴く理由も知っておかなければいけません。ARを活用すれば、非日常性を高められます。ここからは、レストランやバーがエンタメ/非日常性を高めた事例を見ていきましょう。

飲食業界がARを活用してエンタメ・非日常性を高めた事例
  • レ・ペティット・シェフ
  • スターバックス
  • シティ・ソーシャル

レ・ペティット・シェフ

レストランのレ・ペティット・シェフは、ARでエンタメ性を大きく高めました。彼らはテーブルをビジュアル・マッピングの場としたのです。普通のレストランでは、顧客は料理注文をすると、テーブルで待つのが一般的でした。

しかし、レ・ペティットシェフでは、顧客の前で小人のようなシェフが、料理を作ってくれるのです。デジタルキャラクターが料理を作り終えると、実際の料理が届けられます。この様子を映したYouTube動画は世界中で話題となり、公開から数ヶ月で600万以上の再生回数を記録したのです。

人々は外食で、料理の味を求めるのは当然ながら、非日常性も重要視します。ARでエンタメ性を高めるのは、良いアイデアでしょう。

スターバックス

スターバックス上海店は、店舗でのAR体験を提供しています。スターバックスはアリババとパートナーシップを組み、特別なスマホアプリを開発しました。

ユーザーはアプリをダウンロードすると、店内の様々な場所でAR体験ができるのです。

例えば、ロースターにスマホをかざすと、コーヒーの香りを引き出す醸造方法をアニメーションで見られます。アプリを持っていない方は、QRコードでARアニメーションを楽しめるように配慮されています。さらに、AR体験するたびに獲得できるバーチャルバッジを集めると、特別な撮影フィルターがプレゼントされるのです。

アリババのアプリTmallの位置情報をオンにすることで、店内に入ると自動的に検知。Tmall上で、家庭用のコーヒー豆の購入なども行えます。

シティ・ソーシャル

ロンドンにあるレストラン&バーのシティ・ソーシャルは、世界初となるARを使ったカクテルメニューを開発しました。なんとARの力でカクテルが芸術作品になるのです。

無料アプリをダウンロードして、ARマーカーとなったコースターをかざすと、カクテルの周りに芸術作品をモチーフにしたアニメーションが登場します。カクテルごとにコースターは変わるので、顧客はカクテルを注文するたびに、異なるARアニメーションを楽しめるのです。

AR技術を導入することで、非日常性がより高まった事例です。

まとめ

飲食業界がARを導入することで、新規顧客の獲得やリピータ率増加などさまざまな効果を得られます。しかし、むやみやたらに導入しても失敗に終わるだけです。大切なのは、ARを導入して達成したい目標を定めること。飲食業界とARの相性は良いので、早めのうちに導入を検討すると良いでしょう。

「ARマーケティングラボ」を運営するOnePlanetでは、ARを活用したブランディングなどお力添えできます。ARのビジネス活用を検討していましたら、お気軽にご相談ください。