スタバの「桜AR」を使ったリアル店舗マーケティングについての考察レポート|#スターバックスさくら

こんにちは。

突然ですが、皆さんはスターバックスで提供されていた桜ARやりましたか?スターバックスでは2020年から毎年「桜」をモチーフにしたARを活用した店舗マーケティングを展開されています。

第一回となる2020年は、2月15日〜3月12日までの期間中、店舗に桜が咲く素敵なAR体験を提供されており、スターバックスジャパンからはAR体験を提供する旨のプレスリリースが2回も出ています。

①2020年のSAKURAシリーズはAR桜が咲き誇る!
②2020年のスターバックスSAKURAシリーズはまだまだ続く!

プレスリリースにある通り、スターバックスではお花見シーズン手前の2月に、一足早く店舗でお花見体験ができるARを提供しました。寒い冬の店内で春を感じさせる粋な演出です。

そして同社では2021年、2022年にも同様に桜のARを活用した店舗マーケティングを実施されています。

本記事では、毎年実施されているスターバックスの店舗ARについて、実際に店舗で体験してきた情報を元にマーケティング視点で解説していきます。

リアル空間でビジネスをする事業者のテクノロジー導入にあたって、何か参考になる点があれば幸いです。

AR体験導線

まずARを提供するプラットフォームですが、WEB ARで提供されており、専用アプリがなくてもQRコードさえスキャンすれば、そのまま直接ARカメラにたどり着く導線になっています。

2020年の第一回目のARでは、ARに到達する導線となるQRコードは店内のQRコードがプリントされたポップまたは②レシートにあり、読み込むとまずはAR体験を説明するLPへ遷移するようになっていました。

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LPの導線は以下のようになっており、LPの中にある「ジオラマの世界をのぞいてみる」のボタンがARカメラを起動するボタンになっています。ここからAR体験がスタートします。

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自社で様々なAR体験を開発してみてわかったことですが、WEB ARで体験を提供する場合に「体験の入り口を店舗のQRコードだけに絞る」という手法は、ユーザー体験の品質が悪化しやすいポイントを回避する上で大切な役割を果たします。

余談ですが、スマホやPCなどのスクリーンをベースにした2DのUXデザインに比べて、ARは空間全体をスクリーンと捉えた3Dでの体験設計が必須となり、変数が増えて高度化します。

今回リサーチして分かったことはスターバックスが店舗体験を拡張するために導入しているテクノロジーはとても洗練されたものであり、リアルビジネスにテクノロジーが浸透するこれからの時代のお手本になると感じました。

Appleがこの6月に公開予定のiOS 14に搭載されるAR関連の最新機能を、スターバックスはAppleと共にテストしているとも言われています。

同社はARを活用した店舗マーケティングの最先端をいく企業の一社であり、AR活用のユースケースを考える上では外せない存在と言えるでしょう。

2020年のスタバの桜ARを解説!

2020年のスターバックスのARは第1弾、第2弾と2度に分けて異なるARコンテンツを展開しましたので、それぞれについて解説していきます。

第1弾のARコンテンツ

第1弾は、店内にリアルな3Dの桜の木が出てくる演出でした。

ちゃんと花びらが舞い降りてきて「2月なのに店内でお花見ができる」という、まさに現実を拡張した体験を提供しました。

木のリアルさ、地面に落ちる影、花びらが舞い落ちるアニメーションの演出などにより、まさにそこに桜が咲いたように感じることができます。

2本の指でタッチスクリーンを広げるように操作すれば桜の木の大きさが調整でき、好きな場所でタップすることで桜の木の出現場所も調整でき、好みのアングルに調整をして様々な写真撮影が可能です。

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第2弾のARコンテンツ

第2弾は、3Dのフラペチーノが出現するARでした。

フラペチーノのクリームの上には桜が咲き、桜の周りを3人の小人が歩いて回るという、とても可愛いジオラマが登場します。

花びらが舞い降りてくる演出や、小人が実際に歩いて回るというアニメーションまでついており、実際にそこに存在しているかのような感覚を得ることができます。

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こういった現実を拡張した体験の提供がユーザーのSNS投稿を生みだし、その投稿がプロモーションに繋がるという全体設計になっています。

そのためLPには「#スターバックスさくら」という文字があり、実際にキーワード検索すると「#スターバックスさくら」「#スターバックスさくら2020」の二つのハッシュタグでそれぞれ5,000件以上の投稿が生まれていました。

特にキャンペーンなどのインセンティブなしにここまでの数値を出せるのは、まさに秀逸なAR体験設計の賜物と言えるでしょう。

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2022年にもスタバの桜ARが登場!

ここまで紹介してきた事例は2020年の桜ARでしたが、2021年、そして2022年にもスターバックスでは桜ARを活用したプロモーションを実施しています。

ARを活用した店頭プロモーションが毎年恒例になっており、スターバックスにおいてARの活用が重要な位置付けになっていることが理解できます。

以下からは、2022年の事例についても簡単に解説していきます。

AR体験への導線はレシート

2022年の事例では、お店で商品を購入した人に渡される「レシート」にAR体験ができるQRコードが仕込まれており、スターバックスで買い物さえすれば店舗限定ではなく誰でもどこでも体験できるというものでした。

レシートの画像を貼ってしまうと購入していないのにAR体験に遷移できてしまうため、スターバックスさんの意向を尊重してここには貼付しません。(笑)

QRコードによって体験できるARが異なる、といったARのランダムな出し分けも可能な設計で「買うたびに違った体験ができる」というユーザーの購買機会を増やすような設計が可能になっている点も秀逸ですよね。

ARのストーリー

くまのバリスタ「ベアリスタ」がARで桜風味のコーヒーを作ってくれるというストーリーが垣間見れます。

つい、どんなドリンクを作ってくれるのか見てみたくなりますよね。

ハッシュタグ設計

ハッシュタグを活用して、SNSとARを連動させている点もポイントです。

実際にインスタグラムで検索すれば、毎年きちんとユーザーの投稿を一定数生み出すことに成功していることが見て取れます。

このようにユーザーの心を掴むためのARコンテンツを制作することも重要なポイントです。

最先端を追及するスターバックスの姿勢

こちらの動画を見ると、3Dモデルで制作された「ベアリスタ」が非常にリアル調なARになっていることが確認できます。

これは、一般的な3Dモデリングとは異なり、「3Dスキャン」によって制作されたキャラクターだということが分かります。

スキャンした3Dにアニメーションをつける技法はかなり新しいものであり、このようにスターバックスでは常に最先端のARを店舗マーケティングに取り入れようという姿勢を見ることができます。

マーケティング視点で見るスタバARの秀逸さ

ここからは、こちらのスターバックスの店舗を活かしたAR体験がいかに優れたキャンペーンであるかをマーケティング目線で考察していきます。

①今だけ

このAR技術を活用したリアル店舗でのマーケティングには、とても優れた点が3つあると感じました。

1つ目は「今だけの体験」です。

QRコードのURLからリダイレクトして遷移するLPのURLはスターバックスのTOPページです。現在は桜ARとは異なる情報を提供しています。

当時と同じURLにもう桜ARの姿はなく、その時限定の体験だったということがよくわかります。

ARのようなデジタルコンテンツはシステムで公開期間を設定するだけで「期間限定」を簡単に作れるため、実際の店舗での装飾に比べると手軽にお店の魅力を高めることができると言えるでしょう。

②ここだけ

2つ目は「ここだけの体験」です。

先述の通り、QRコードのURLはリダイレクトして別のLPへ遷移します。この仕組みがとても重要で、遷移先のLPのリンクだけ持ち出してもARで遊べない仕組みになっていました。

店舗に設置したQRコードがないと楽しめない ≒ お店だけの体験になっており、「ここだけ」という価値を生み出す仕掛けが施されています。

さらに、QRコードの使い分けを通じて日本を代表する3種類の「ソメイヨシノ」「八重桜」「しだれ桜」、どの桜が咲くかはお店によって異なるという楽しみも提供しています。

店舗ごとに体験を個別化させる設計は、「どこにでもある、ありふれたお店」「ここだけのお店」へと変化させる、店舗に個性を持たせる役割を担っています。

リアルな世界では「同じスターバックス」でも、3種のバーチャルな桜ARによって「あっちのスタバにも行ってみようよ」というきっかけを作り出しています。

③低コスト

「今だけ・ここだけ」という体験価値を提供する重要性は先述の通りですが、店舗の個別価値を高めるために一つ一つの店舗に膨大なコストをかけていては収支が合いません。

仮に今回以外のやり方で真冬の店内に桜を出現させて店舗体験の価値を高めるとするならば、できるか分かりませんが2月にどうにか桜を咲かせて、それを個別店舗へどうにか移植するとか、チームラボのような大規模なプロジェクターを導入するとか、何れにしても現実的ではないアイデアですし、やったとしても莫大な施工費用がかかります。(金銭的なコスト)

また、空間を演出せずに店舗体験に固有の価値は生み出す方法として「人」があると思いますが、スタッフとのプライベートな関係性などの属人的なやり方で体験価値の向上を行うと、全国に1,500店舗あるスターバックス店舗で統一されたスタッフのオペレーションや教育システムが個別化してしまい、仕組みとして守られている顧客体験の品質が損なわれたり、スタッフ教育の負荷が高まったりします。(オペレーションコスト)

今回のスタバARが優れている点は、通常であれば施工費やオペレーションコストが膨大にかかる「今だけ・ここだけ」という店舗体験の価値向上を、圧倒的に金額を抑えて、かつ現場オペレーションの負荷も最小限に1,500店舗へ一斉導入できる仕組みとして実現したことではないでしょうか。

スターバックスに学ぶ、店舗にARを導入するポイントまとめ

全国のスターバックス店舗(一部店舗を除く)に一斉導入されたこのAR体験の提供に必要な要素は、以下の3点です。

スターバックスに学ぶ、店舗にARを導入するポイント
  1. 今だけ
    LPと、LPから遷移する形でWEB ARカメラを公開し、WEBの公開期間を限定することで「今だけ」という限定性を与える
  2. ここだけ
    QRコードの独自URLからリダイレクトさせたLPでしか遊べないようにすることで、ユーザーが触れるリダイレクト先のLPのリンクをコピーしても遊べないように場所を制限し「ここだけ」という限定性を与える。また店舗ごとに遊べるコンテンツを分けることで店舗体験を個別化する
  3. 低コスト
    桜の3Dモデルにアニメーション演出をつけたバーチャルコンテンツを複数パターン開発し、行くお店によって体験が異なるように設計することで、各店舗の内装工事などは必要ないままに、店舗ごとに店内体験が個別化されるようにする。

全て、施工やオペレーションコストをかけず、テクノロジーの組み合わせで実装されています。

上記3点の開発をして、あとは店内およびレシートにQRコードを配置し、スタッフに「こんなキャンペーン始めるから、もし何か聞かれたら対応してね」と簡易的にレクチャーをすれば、大掛かりな内装工事や個別店舗ごとのスタッフへの教育などを必要とせずに、一斉導入ができてしまいます。

リアルビジネスの個別店舗の体験価値向上をテクノロジーを活用し、圧倒的な低コストで実現する。

これが、今回のスターバックスが実現したテクノロジーを活用したリアルビジネスにおける最先端のマーケティング事例と呼べるポイントであろうと整理してみました。

位置情報テクノロジー活用の重要性

バーチャルなコンテンツによって場所の付加価値を高めることに成功している代表例としてポケモンGOがありますが、「位置情報」を活用したテクノロジーは今後ますますビジネスに活用されていくことになるでしょう。

2020年にFacebookはイギリスの位置情報スタートアップを買収しています。

これだけ世の中にエンタメが溢れて家でNetflixやYoutube、スマホゲームをしても十分に楽しめる中で、敢えて外出して自分たちの店舗へと来店してもらうということはとても大変なことです。

「その時・その場所でしか出来ない体験」は店舗マーケティングにおける重要な差別化ポイントになっており、たとえばアーティストの生演奏などの「ライブ」はその最たる例でしょうし、「あの店員さん、常連さんと話せるからお店に行く」という関係性も「ここだけマーケティング」と言えるでしょう。

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店舗にARを活用したマーケティングを導入するために

この記事では、勝手ながら全国のスターバックスのお店で実施された桜ARについて、マーケティング目線で考察をしてみました。

今回のARは「WebAR」という技術を採択されていましたが、それ以外も含めた技術的な観点からAR×マーケティングを整理していくと、以下の3つのアプローチに分類することができます。

ARを店舗に導入するための方法
  1. ネイティブアプリ
    高度なAR体験の開発に適していますが、開発コストが高くなりやすく、またインストールをしてもらうハードルが高いためコンシューマ向けには適さないことが多いでしょう。
  2. InstagramなどのSNSのARカメラ
    安価かつ手軽にARコンテンツの制作が可能ですが、プラットフォーマーの制作に沿って開発をしなければならず、できることが限られてしまいます。また、アプリをインストールしているユーザーしか利用できないといった点も課題になります。
  3. WebAR
    今回のスターバックスの店舗ARなど位置情報で体験できる場所を制御したり、リアルビジネスでARをうまく活用したりしたいニーズがある場合、技術的に最適なWEB ARベースのARマーケティングの普及が進むでしょう。GPSやCookie等を活用した位置情報の制御が行いやすい利点もあります。

今回のスターバックスのWebARの活用事例は、リアル空間でビジネスを行う事業者が、テクノロジーを活用したマーケティングを行うにおいて、とても示唆のあるアプローチであると感じました。

海外ではこのような位置情報技術などを活用して場所の価値を高めるARマーケティング事例は出ていますが、国内ではまだ事例数が少なく、今回の事例は参考にできる点が多いのではないでしょうか。

ポケモンGOに代表される場所を限定したARの活用は、これからリアルビジネスの有効なマーケティング手法になっていくでしょう。

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ノーコードでWebARを制作できるツールも登場

今回紹介をしたスターバックスのARのように「ARコンテンツで場所の価値を高める」というニーズは高まっている背景の一つに、専用アプリのインストールが不要な「WebAR」という技術の存在があります。

Webを活用したARにより、ストレスなく多くの方にご利用いただける仕組みが多くのブランドや店舗の武器となっています。

そして、もともとWebARを活用したキャンペーンは0からフルスクラッチでWeb開発をする事例が主流でしたが、最近では写真や画像をアップロードするだけで、プログラミングをしなくてもノーコードで簡単に場所限定のWebARコンテンツを制作できるツールも登場してきました。

こちらの「LocationAR(ロケーショナー)」というツールでは、ARコンテンツの制作からGPSによる位置情報の制御、ARを使ったスタンプラリーの制作まで、プログラミングの知識や外部の制作会社を必要とせずシステムの中で簡単に行うことができます。

実際に、ロサンゼルスの焼肉店では今回紹介した事例のように「お店限定のAR」をこちらのツールを使って手軽に導入しています。

AR COW

他にも様々な業界でWebARの手軽な導入が進んでおり、プログラミングをせずに簡単にオリジナルのWebARコンテンツを制作するツールを検討してみるケースも今後は増えていくでしょう。

まとめ

私たちは5Gの普及に伴ってリアルビジネスにARを活用したマーケティングも急速に普及していくと考えて、いち早くARの導入にチャレンジしたい企業様・ブランド様のお手伝いをしており、中でも特にリアルビジネスにAR技術を活用することで顧客体験をデジタル化する様々なご支援をしています。

まだまだユースケースが少ないARを活用したマーケティングですが、今回ご紹介した事例のようにうまく活用をすれば従来の手法よりも圧倒的にコストを抑えたマーケティング/プロモーションが実現できます。

本メディア「ARマーケティングラボ」を運営するOnePlanetでは、ARを活用したマーケティングソリューションを企画〜開発までワンストップで提供しており、様々な業界で多数の実績がございます。

もしARを活用したマーケティングに興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください!

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