AR広告のプロモーション事例10選と導入のメリット、仕組みを解説

ゲームをはじめとしたエンタメ業界で活用されるイメージが強いARですが、実はさまざまな分野の企業で導入が進んでいます。

この記事ではブランドのマーケティング担当者に向けて、AR広告の概要や仕組みについて、最新のプロモーション事例を交えながら解説します。

AR広告の具体的な活用方法を理解したい人は、ぜひ読んでみてください。

AR(拡張現実)の基礎知識

まずはARの基本的な概念や仕組みを、他のIT技術との違いも交えて解説します。

AR・AR広告の意味は?

ARとは「Augmented Reality」の略称です。

日本語では「拡張現実」とも呼ばれ、人間が知覚する現実世界の情報をコンピューターによる拡張するIT技術です。
実在する世界にデジタル情報を重ね合わせると、目に見える現実を仮想的に拡張できます。

また、AR広告とはARを用いた販促やプロモーションなどです。
ゲームや製造業のメンテナンス作業などでも使用されています。

XR・VRとの違い

ARとよく似たIT技術にXRとVRがあります。

XRとは「xReality(クロスリアリティ)」の略称で、AR・VRなどの先端技術の総称を指します。
また、VRは「Virtual Reality」の略で、日本語では「仮想現実」という意味です。

そして、ARは「Augmented Reality」の略で、「拡張現実」と訳されます。

VRゴーグルをはめるVRはゴーグルの向こう側の世界を100%バーチャルワールドに書き換える体験を指しますが、ARはスマホのカメラ越しなどの実在する風景にバーチャルな視覚情報を重ねて表示することで、“目の前にある現実世界を拡張する”という体験を指します。

現実世界にポケモンが存在するようなPokemonGOの世界は代表的なARと呼ばれています。

街中でポケモンGOを使う人

ARは現実世界にデジタル情報が重なって見えるのに対し、VRで見える世界は完全な架空の世界です。

そしてARもVRも、XRに内包されるIT用語です。

ARの仕組み

ARの仕組みは、主に2種類あります。

1つ目はケーションベース型で、GPSのような位置情報と連携させて情報を表示する認識方法です。
デバイスの傾きや磁気センサーによる方位などの情報を多角的に活用できます。

2つ目はビジョンベース型と呼ばれ、画像認識や空間認識の技術を使用する方法です。
広告や商品パッケージなどにも幅広く使われています。

AR/VR関連の市場規模

ARとVRの市場規模は、今後さらに拡大すると期待されています。

IT専門の調査会社「IDC Japan 株式会社」の2019年6月の調査結果によると、ARやVR関連の世界的な市場規模は2018年の89.0億ドルから、2023年には1,606.5億ドル(約17兆3000億円)にまで増加する見込みです。

また、日本での市場規模も、12.9億ドルから34.2億ドル(約3700億円)にまで拡大すると予想されています。

AR広告のメリット・注意点は?

ARの基本的な知識を解説したところで、続いてはAR広告を用いた場合のメリットと注意点を解説します。

メリット

ARは商品やサービスの疑似的な体験ができるため、顧客の購買意欲を向上できるメリットがあります。

また、AR広告は通常の広告よりも視聴時間が長い傾向があり、顧客の記憶に残りやすい販促活動や、今までにないような広告表現が実現可能です。
リモートで商品が試せるため、顧客のプライバシーが守られやすいという特徴もあります。

注意点

ARは新しい広告手法であるぶん、入手できるユーザーの個人情報は慎重に取り扱わなければなりません。
また、AR広告のデータ処理には大きなデータを扱えるハードウェアと通信技術が必須なため、ツールのスムーズな導入にはさらなる技術革新が必要です。

意外な業種も?!AR広告の活用事例

AR広告の活用事例について、主に5つの業種を解説します。

AR広告が活用されている業種
  • 小売・EC×AR広告
  • 医療×AR広告
  • 営業×AR広告
  • 教育×AR広告
  • 製造業×AR広告

小売・EC×AR広告

AR広告は、実用衣料品や家具量販店などの小売業やECサイトでも活用されています。

スマートフォンで自分の部屋や体などにARを表示させると、バーチャルで試着や商品の配置が可能です。
ユーザーがわざわざ店舗に足を運ばなくても、気軽に商品のフィッティングや詳細の確認ができるため、納得して商品を購入できます。

医療×AR広告

医療現場でもARは活用されています。

たとえば、治療後の患部の様子を確認し、遠隔にいながらも診察する場面です。
また、設備が整っていない緊急的な状態でもARをとおして医師が指示を出し、手術する活用例もあります。

さらに、動いている筋肉や骨などの観察は人体模型では不可能とされていましたが、ARでは人体の詳細かつ精密な状態確認が可能です。

営業×AR広告

紙ベースの資料にARを用いて視覚効果の高い動画や立体などの表示ができます。

小売のケースと同様に文字や平面図、写真だけでは伝えきれない商品やサービスの魅力の伝達に効果的です。
また、名刺やパンフレット、ポスターなどに作成したARのコンテンツのQRコードを掲載すれば、ARの強みを生かした営業活動として活用できます。

製造業×AR広告

製造業では、シミュレーションや製造段階などでAR広告が用いられます。

建設・建築業界では「景観シミュレーション」として、企画・設計したものが実際にどのようなイメージになるかの把握ができ、建設者と依頼者のミスマッチを防げます。
また、製造段階では、実際の工事現場の映像を重ね合わせ、建設機械の設置可否の確認も可能です。

教育×AR広告

入学案内やパンフレットなど、文字や平面図では伝えきれない魅力の伝達や、学校制服の試着などでARが活用できます。

また、テキストベースでは表現の難しい内容に関して、3Dによる視覚的な学習体験も可能です。
教室にいながらサバンナや水中の生物を目の前で確認できたり、カメラを空にむけるだけで星座の位置を教えてくれたりする技術もあります。

さまざまな業界におけるAR広告の最新プロモーション事例

最後に、ARを用いた最新のプロモーション事例を紹介します。

タARを用いた最新のプロモーション事例
  • 「ケンタッキーフライドチキン」の「KFC WOW@25」
  • 「Shopify」のショッピング機能
  • 「BMW」のタブレット使用
  • 「IronSource」のAR広告
  • 「コーチェラ・フェスティバル」での仰天演出
  • 「資生堂」の「カラーシミュレーション」
  • Google マップ AR案内機能
  • ポーランドの美術館で利用できるARアプリ
  • 韓国のプロ野球・開幕式での演出
  • 「Snapchat」のAR広告

手持ちの金額で何が頼めるかがわかる「ケンタッキーフライドチキン」の「KFC WOW@25」

インドのケンタッキーフライドチキンで配信されたアプリ「KFC WOW@25」は、シンプルかつユニークなAR広告です。

紙幣をカメラにかざすと、その金額で頼めるメニューが表示されます。
インドでは「ケンタッキーフライドチキンは高価」というイメージがありましたが、少ない金額でもオーダーできるとアピールできました。

画面上で質感やサイズ感がわかる!ECサイト「Shopify」のショッピング機能

「Shopify」は、世界で利用者数が最も多いとされるEC構築プラットフォームです。

ARボタンを押すとカメラが立ち上がり、対象の商品を目の前の空間に置ける機能があります。
3Dモデルでサイズを測定したり、すべての角度から商品を確認したりできるため、オンライン上からでも質感やサイズ感の把握が可能です。

AR導入のハードルとなりがちな「アプリのインストール」が不要で、サイト上から簡単にARを利用できます。

展示物をより理解できる「BMW」のタブレット使用

ドイツの自動車メーカーである「BMW」では、ショールームにあるAR技術を搭載したタブレットをとおして、エンジンやスペックをより深く理解できます。

タブレットは移動型のスタンドに設置されているため、車の心臓でもあるエンジンをすみずみまで観察可能です。
外見や言葉では説明しきれない複雑な動きも、実際の動きを見せながら顧客にアピールできます。

ゲームのように楽しめる「IronSource」のAR広告

「IronSource」はアプリの収益化と配信テクノロジーに注力するイスラエルのユニコーン企業です。

コア製品はゲームテックに重点を置いている同社ですが、スマートフォン用ゲームのAR広告でも有名です。

たとえば、あるミニゲームでは、ゲームのキャラクターを現実空間に表示して、プレイヤーがキャラクターにファイヤーボールを投げて楽しめます。
ミニゲームから本編へのインストールへと自然に誘導される流れとなっています。
このようにユーザーの体験を重視した作りが特徴です。

曲にあわせて巨大な斧が観客に!野外音楽フェス「コーチェラ・フェスティバル」での仰天演出

ARは商品やサービスの販促だけでなく、イベントの演出としても活用されています。

その中でも有名なのがアメリカのカリフォルニア州で開催された野外音楽フェスでの演出です。
観客がスマートフォンのカメラをとおしてステージにAR画像を重ねてライブを視聴するツールとして用いられました。
今まで体験しなかったような、新しい演出やインパクトを観客に与えられるプロモーションとして注目されています。

自撮りでお試しメイクができる「資生堂」の「カラーシミュレーション」

日本の化粧品メーカー「資生堂」のARアプリでは、バーチャル上で化粧品のカラーシミュレーションが可能です。

現実世界でのコスメの試用はつけたら落とす手間がいるため、オンライン上では実際の色合いを試せないというハードルがありました。
しかしARを用いたプロモーションにより、さまざまな角度から色の具合を確認し、サイトから商品を購入できるシステムが実現しています。

瞬時に今いる場所から目的地までナビゲート!Google マップ AR案内機能

引用元:GoogleマップのARナビゲーション(α版)、Pixelシリーズで利用可能に

目的地を入れてAR開始ボタンを押すと、矢印で道案内してくれるARナビゲーションシステムです。

瞬時に今いる場所を認識し、現実世界をとおして道案内をしてくれます。
どの方向に向かえばよいのかシンプルに目の前のガイドが教えてくれるため、初めて訪れる場所でも安心です。

案内領域の技術は特に進化がめざましく、今後もさらなる発展が期待されます。

絵画の中の人物が動く?!ポーランドの美術館で利用できるARアプリ

ーランドの美術館では、来場者にARを活用できるアプリを提供してプロモーションをしています。

展示している絵画にスマートフォンをかざすと、絵の中の人物が動き出したり、作者が作品の解説をしたりする仕組みです。
美術館の解説は録音音声を流す形式が一般的でしたが、ARの利用により低コストでエンターテイメント性の高いサービスの提供が実現しました。

野球場のスクリーンにドラゴン出現!韓国のプロ野球・開幕式での演出

観客が専用アプリを立ち上げると、チームのマスコットキャラクターが出現するパフォーマンスとして、ARが活用されました。

球場のディスプレイの映像とも連動しており、観客をより楽しませるために球団が提供したプロモーションです。
野球場にいない観客も中継カメラで撮影した「ARパフォーマンス」がテレビやスマートフォンで見られるため、誰もが楽しめる演出が実現しました。

圧倒的なコスパのよさで人気!「Snapchat」のAR広告

「Snapchat」は24時間で投稿が消える点が特徴的な、若年層に人気のSNSです。

特に「ランドマーカー」という機能では、世界各国の名所(ランドマーク)にリアルタイムで反応するARサービスを提供しています。
リアルな現地の空間データを事前にSnapchat側が3Dスキャンし、3Dデータに対してARをリリースしています。
自分で撮影した動画にオリジナルのARを自由に作成し、友達とシェアできます。

※参考:
未来の広告、スナップチャットのランドマーカー機能について|Snapchat Landmarkers AR

まとめ

ARの技術はさまざまな広告場面で活用されており、今後も裾野が広がると予期されます。

しかし、技術を実際にどのように活用すればよいか悩む人も多いのではないでしょうか。

株式会社OnePlanetでは、AR企画から開発~利用/拡散~分析~レポーティングまで、ワンストップで提供可能です。

先行する海外のARマーケティング事例を常に収集・発信し、多数の企業やブランドにARを導入してきた実績がございます。

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