アパレルとAR

現実世界にフィットするように情報を出現させるARは、日常のあらゆるシーンで見かけるようになりました。特に、2017年頃からのARの技術の進化は目覚ましく、スマートフォンやタブレットでARを気軽に楽しめるようになった影響が大きいと言えるでしょう。

今回は、アパレル業界におけるARの役割と、アパレル×ARの事例をご紹介します。

アパレル業界におけるAR活用の背景

アパレル業界におけるAR活用

2016年頃からさまざまな業界での活用が目立ってきたARですが、アパレル業界では早い段階から店頭でARを活用しようとする動きが見られました。

店頭で服を試着する際、実際に着て鏡の前に立ってみたり、試着室を利用したりといった経験は誰にでもあると思います。しかし、「試着の際に服を着たり脱いだりするのがめんどくさい」と感じたことはありませんか?手荷物があった場合は着替える際にどこかに置かなければならないし、色違いを楽しむ際に何度も着替えなければならず、手間がかかりますよね。試着室に入りたくても混雑していて数が足りずに順番待ちが発生し、試着まで時間がかかってしまうこともあります。

また着物やドレスなど、試着に時間がかかる服は試着できる数も限られるうえ、店員の接客の負担も大きいという問題点があったのです。こうした問題を「試着効率をアップする」ことで解決する手段として、早い段階からARが注目されていました。

店頭でバーチャル試着体験ができるARが登場

アパレル業界でARを活用するにあたり、まず注目されたのは「バーチャル試着ができるAR」です。2010年代前半は、店頭でモニター・人を認識するカメラやセンサー・タブレットなどを設置し、着せ替えのシミュレーションをおこなうARが数多く開発されていました。

2012年、ユニクロの海外店で店頭で着せ替えサイネージを導入し話題となりました。「UNIQLO MAGIC MIRROR」と呼ばれたこのサービスは、ダウンジャケットのカラーバリエーションをデジタルで気軽に楽しめるサービスです。

ダウンジャケットを着て店頭に設置されたミラーモニターの前に立ち、設置されているタブレットでカラーを選択すると、ミラーモニターに映ったダウンジャケットの色が変わる、というものです。一度着てしまえば、あとはいちいち着替えなくてもタブレット操作だけでカラーバリエーションを楽しめる便利さと目新しさが注目されました。

ただ、当時のARには、服のシワや質感をリアルに表現したり、人の動きに正確に追従させたりするのが技術的に難しいという問題がありました。また、スマートフォンのARアプリも少しずつ出始めてはいたものの、端末のセンサーやカメラの精度が今ほど良くなかったため、バーチャル試着というよりは写真に絵を合わせにいくような、違和感が残るものでした。

店頭での試着モニターも、設備導入費がかかるので気軽に導入することもできず、爆発的な普及には至らなかったという経緯があります。それでもバーチャル試着の精度は、モニター&センサーの精度向上や、CGの描写技術の進化に伴い向上していきました。

2017年頃には、写真をもとに2.5次元データを作成する技術も現れました。ドレスの揺れ具合など、かなりリアルに再現されています。表現技術の進歩が伺えますね。

現在のアパレル業界におけるARの役割とは?

服屋さん

2016年頃からARの技術や表現力は飛躍的に進化し、スマートフォンで気軽にARを体験できるようになりました。アパレル業界ではeコマース市場が拡大し、「店舗に行かなくてもストレスなく試着できる仕組み」に注目が集まりました。その結果、ARをうまく利用したアプリが数多く開発されています。

同時に、店舗は「ただ服を買う場所」としてではなく「店舗でしかできない体験を提供する」施設へシフトチェンジしています。現実世界に驚きや発見を加えるツールとして、ARはとても相性が良い技術といえるでしょう。

アパレル業界におけるARの役割
  • オンラインショップ・Eコマース×AR
  • 実店舗・イベント×AR
  • ユーザーによるSNS投稿・拡散効果

それぞれ単体のAR施策とは限らず、複合させたAR体験を実現しているケースもあります。

オンラインショップ・Eコマース×AR

ARは、アパレル系のオンラインショップやEコマースとの相性がとても良いです。スマートフォンで楽しめるARの精度が向上し、自宅に居ながらリアルな試着体験ができるようになりました。ARによる試着体験により、サイズ違いやイメージ違いによるミスマッチ率を下げる効果が期待できます。

最近では専用アプリ不要・ブラウザベースでAR体験ができる技術も出てきたため、試着体験とオンラインショップがよりシームレスになっていくと予想されます。

実店舗・イベント×AR

アパレルの実店舗やイベントなど、オフラインでARを使ったプロモーションやイベントの事例も増えています。ARを用いたコミュニケーションを通じてブランドのファンを生み出すとともに、来店することでしか得られない特別な体験を演出できるのです。

従来の試着効率アップのARに留まらない、ブランドとファンのコミュニケーションツールとしてARを活用する事例が増えていると言えます。

ユーザーによるSNS投稿・拡散効果

SNSでは、ユーザーが「おもしろい」「楽しい」と感じた投稿は爆速的に拡散されていきます。アパレル業界においては、拡散されればその分ブランドの認知度向上も期待できます。SNSによるバズを狙ったプロモーションにおいて、最新技術であるARとの組み合わせは相性が良いといえるでしょう。

【目的別】アパレル×ARの事例

それでは、実際にアパレル業界でARを導入している事例を、次の2つのケースに分けて紹介します。

AR業界におけるAR事例
  • ARを用いたスマートフォン向け試着アプリの事例6選
  • ARを用いた店舗・イベントでのプロモーション事例7選

スマートフォン・タブレット向けAR試着アプリ事例

アパレルとひとことでいっても、商品は服・靴・時計・アクセサリーなど多岐にわたります。共通しているのは、試着して気に入ったものをそのままネットショップで購入したり、SNSに拡散したりできる機能を持ったアプリが多いという点です。

さまざまなカテゴリで試着体験ができるスマートフォン向けアプリをピックアップしました。

スマートフォン向け試着アプリ
  • GUCCHI公式アプリ
  • スウェーデンのアパレルブランド「Chiquelle」
  • アメリカのメガネブランド「Warby Parker」
  • 韓国のアクセサリーメーカー「Lologem」
  • 日本の時計サブスクリプションサービス「KARITOKE」
  • インドのオンラインジュエリー企業「CaratLane」

GUCCHI公式アプリ

言わずと知れたファッションハイブランドのGUCCHIが、公式アプリ内でARを導入しています。2019年、GUCCHIの公式アプリ内で高級スニーカー「エース」シリーズの試着サービスが開始されました。

画像引用元:GUCCHI MOBILE MARKET

足にぴったりフィットし、まるで実際に履いているような試着体験を楽しめます。2020年現在ではスニーカーだけでなく、公式アプリ内で次のアイテムを試着できます。

GUCCHI公式アプリで試着できるアイテム
  • 時計
  • スニーカー
  • リップスティック
  • アイウェア
  • ハット
  • 雑貨
  • マスク

GUCCHIのアプリ内で、腕時計の試着をやってみました。

GUCCHIのアプリ内で腕時計の試着

カメラを向けた瞬間に手首を認識し、時計の試着ができました。

GUCCHIのアプリ内で腕時計の試着(裏側)

手首をひっくり返してみても、きちんと時計のベルトが見えています。カラーバリエーションを手早く試着できるのが便利でした。

スニーカーの試着もやってみました。

GUCCHIのアプリ内でスニーカーの試着

はだしの状態でカメラを向けてみましたが、一瞬で足を認識して驚きました!模様までしっかり確認できます。アプリ内でカラーバリエーションや形のラインナップを選ぶことで、次々に試着できます。

あまり数は多くありませんが、雑貨の設置シミュレーションもできます。

GUCCHIのアプリ内で雑貨の試着

試しに筆者の部屋にあったランタンと並べてみましたが、GUCCHIの独創的なデザインはパンチが効いています。なかなかの存在感がありそうです。ARでバーチャル試着させるグッズに合わせて、きちんとリアルタイムに空間を認識している精度に驚きました。一連を通して、スマートフォンで体験できるARのクオリティがかなり上がっていることを実感できます。

スウェーデンのアパレルブランド「Chiquelle」

スウェーデンのアパレルブランド「Chiquelle」

「Chiquelle(シケーレ)」のオンラインショップでは、自分のアバター(分身)を登場させ、着せ替え人形のように試着を楽しめるAR機能がついています。自分の全身をスマートフォンで映すのは難しく、一人で服の試着ARを楽しむのは現実的ではありません。

この問題を、アバターに着せて試着させるというアイディアで解決しています。スウェーデンではとても人気のこのアプリですが、日本でもダウンロードして楽しめます!筆者もやってみました。アプリをダウンロードしたら、まず自分のアバターを作ります。

メッセージのやり取り

チャットのような画面で国・身長・体重などを聞かれるので、どんどん答えていきます。骨格も選べますよ。

完成した筆者のアバターの原型がこちらです。

アバター

体型が妙にリアルで、ちょっと笑ってしまいました。クビレがなく、全体的に各パーツが大き目な筆者の体型を見事に再現しています。誰もがみんなモデルさんのような、すらっとした体型ではありませんもんね。

原型ができたら、肌の色・顔のパーツ・髪型など、さらに細かく設定していきます。

肌の色・顔のパーツ・髪型など、さらに細かく設定

鼻の設定

アバターが完成しました!

完成したアバター

マネキンからさらにリアルになりました。アバターを作った後、商品ページからバーチャル試着ができるようになります。商品ページで気になる商品を選んでみます。

商品ページ

今回はSALEになっている、黒の袖付きワンピースを選んでみました。普段こんな丈の短いワンピースは履かないので、かなり緊張します。バーチャル試着の結果がこちらです。

バーチャル試着

意外と悪くなさそうです!筆者はよくオシャレな友人から「骨格的にも隠すのではなく、ある程度出したほうがメリハリがついていいよ!」とアドバイスを受けます。勇気が出ずについ隠す服ばかり選んでしまうのですが、確かにある程度出したほうが、すっきり見えそうです。

店頭ではなかなか試そうと思わない商品を気軽に試せるのは、オンラインショッピングのバーチャル試着ならではのメリットですね。せっかくなので、体型隠しの定番のロングワンピースを試着してみました。まったく系統の異なる服ですが、どう見えるでしょうか。

ワンピースの試着

これは絶対にやめておいたほうが良さそうですね。ずんぐりと見えてしまいます。ここまでリアルにはっきりと現実を突きつけられると、ネットで服を買うときにサイズで悩むことも減りそうです。

ARモードにすると、現実世界にアバターが登場します。

現実世界に登場したアバター

ARで表示されたアバターは実際よりも少し大きめですが、雰囲気をみるには十分です。工夫すればおもしろい写真も撮れそうです。

なお試着したアイテムは、気に入ったコーディネートをSNSや友人とシェアすることも可能です。客観的なアドバイスを求めやすいのも、バーチャル試着×オンラインショップの相性が良いポイントと言えるでしょう。

こうしたバーチャル試着が簡単にできると、ネットショップでよくあるサイズや色味の不安解消には大いに役立ちます。ショップ側としても、サイズが合わないことによる返品率の低減効果が見込めそうだと感じました。

アメリカのメガネブランド「Warby Parker」

スマートフォンで体験できる試着ARには、カメラで映しやすい顔回りのアクセサリーやメガネなどが多いです。アメリカのメガネブランド「Warby Parker」では、iPhoneX以降に搭載されている顔面3Dマッピング機能を利用したメガネ試着サービスを開始しました。

アプリ上で試着したいメガネを選び、iPhoneのフロントカメラを起動して自分の顔を映すと、ARでメガネが登場します。顔の向きを変えたり傾けたりしても、ずれることなく追従するのでリアルなイメージを確認できます。この動きの精度の高さには驚きますね!

気に入ったメガネを、自分の顔の形や髪型などに合っているかどうかを客観的に確かめられるのは大きなメリットです。試着して気に入ったメガネは、そのままオンラインショップで購入できます。

なお、この機能は最近のiPhoneのFace IDで使われているTrueDepthカメラを用いています。対応しているのは次のiPhoneのみで、Androidは非対応となっています。

True Depth対応のiPhone
  • iPhone X
  • iPhoneXR
  • iPhoneXS
  • iPhoneXS Max

韓国のアクセサリーメーカー「Lologem」

ピアスやイヤリングは顔に近いところに装着するので、サイズ感がとても重要なアクセサリーです。筆者自身もピアスを集めるのが好きで、ネットショッピングでもよく購入します。

しかし、いざ手元に届いてみると、イメージしてたよりも大きすぎて使いにくくてがっかり……ということもしばしばあります。そんな悩みを解決してくれるのが、「Lologem」が開発したイヤリング試着ARアプリです。

Lologemは、2017年からAR技術を基軸にファッションの課題を解決するシステム開発に注力してきた経緯があります。2020年、人の顔を3Dで認識してイヤリングを試着できるアプリをリリースしました。スマートフォンやタブレットのほか、タッチモニタータイプも開発されているようです。

デバイスのカメラに自分の顔を映し、気になるイヤリングを選ぶことで自動的に装着イメージを確認できます。このアプリ導入により、同社のイヤリングの売上は20%以上も向上しました。オンラインショッピングでの「サイズ感のミスマッチ」を解消することの重要性がうかがえる事例です。

なお、試着された商品のデータを収集し、今後の商品開発や販売戦略に活かすこともできます。ARでのバーチャル試着は、eコマース市場が拡大してる現在におてい、顧客の興味関心やトレンドをよりリアルタイムに知れる重要なツールとも言えるでしょう。

日本の時計サブスクリプションサービス「KARITOKE」

ブランド腕時計を月額制でレンタルできるサブスクリプションサービス「KARITOKE」が、AR試着サービスを開始しています。

KARITOKEのARは、腕時計型の専用メジャーを手首に巻いて使用します。専用アプリで気になる時計を選び、カメラを起動してメジャーをかざすことで試着体験ができます。メジャーを実際に巻いている感覚があるぶん、よりリアルな感覚で試着できそうです。

専用メジャーはインターネット上での申し込みか、店頭での配布で数量限定となっています。メジャー入手に少し手間がかかりそうですが、サイズ感や装着感のミスマッチを防ぐためにはとても効果的な手法といえそうです。

店舗・イベントでのプロモーション事例7選

eコマース市場が拡大している今、店舗は商品を見る場所・探す場所から、エンタメ化・体験型ショールームという考え方へシフトしつつあります。この動向はアパレル業界では特に顕著で、店舗やイベントにARを導入している事例が増えています。

商品購入を目的とするだけではなく、ブランドメッセージやリアルでしかできない「体験」を通じてファンを増やすことに注力していると言えるでしょう。

店舗・イベントでのプロモーション事例
  • ZARAが世界120か国の店舗で期間限定ARファッションショーを展開
  • Foot Locker×NikeがARを使ったイベント「The Hunt」を実施
  • オンワード樫山がARファッションショー「PORTAL BY JOSEPH」を実施
  • H&MがARグラスを活用したファッションショーを開催
  • 中国のファッションブランド「HIPANDA」がARで店舗をエンターテインメント化
  • 渋谷パルコ内の「calif」で3Dバーチャルフィッティング「FXMirror」を導入
  • 渋谷パルコ内「JINS」でメガネをかけたままメガネ試着ができるサービスを開始

ZARAが世界120か国の店舗で期間限定ARファッションショーを展開

2018年、ファッションブランド「ZARA」が2週間限定でAR体験を実施しました。対象店舗の店頭オブジェ・ディスプレイ・オンラインストアで商品を購入した際に送られてくる専用ボックスのARコードにスマートフォンのカメラをかざすと、2018年春夏コレクションを身に付けたモデルが登場。まるで本当にそこで歩き回ったり話したりしているかのような体験ができるというイベントです。

SNSでのシェアがしやすいよう、スクリーンショットや動画が撮影できる機能も搭載していました。また、モデルが着用している商品は、公式サイトで購入できるようになっていました。ARというデジタル技術を導入することで、「新しいことに挑戦し続ける」というブランドメッセージを体現した例ですね。

従来とは違う取り組みを提供することで、ブランドファンの好奇心をくすぐることが狙いです。また店舗のARで見つけた新作の商品をオンラインで購入できるようにするなど、オンライン×オフラインの掛け合わせに挑戦した事例とも言えます。

Foot Locker×NikeがARを使ったイベント「The Hunt」を実施

2018年、シューズを中心に扱うアメリカのアパレルメーカー「Foot Locker」が、ARアプリを使用したイベント「The Hunt」を実施しました。「Nike」の新しいエアジョーダンのプロモーションイベントで、専用アプリに表示されるヒントを参考にしながら、街中のあちこちに隠されたARマーカーをハンティングしていくというものです。

ハンティングが進むにつれて新商品の全貌が明らかになり、最後までたどり着いた人だけが新作のエアジョーダンを購入できるという特典がありました。多くの参加者がARハンティングに挑戦し、新作のエアジョーダンはイベント開始からわずか2時間程度で完売したそうです。

特別な方法で手に入れたモノって、思い入れがありますよね。そして思い入れのあるモノは、SNSなどで広めたくなるものです。実際、このイベントで新作のエアジョーダンを手に入れた人は、喜びと興奮を写真と共にSNSに投稿する人がたくさんいて、大きな話題を呼びました。

ただ商品を購入するだけではなく、新商品を手に入れるためのARハンティングを通して、ワクワク・ドキドキ体験を提供したイベントの事例と言えます。

オンワード樫山がARファッションショー「PORTAL BY JOSEPH」を実施

2019年、オンワード樫山が手掛けるアパレルブランド「JOSEPH GINZA SIX店」「JOSEPH 六本木ミッドタウン店」2店舗において、ARを駆使したバーチャルファッションショーが体験できるイベントが開催されました。

来店した人がイベント会場内のポスターにスマートフォンやタブレットのカメラをかざすと、ARコンテンツが起動します。まるでポスターから飛び出してくるかのようにランウェイが登場し、実店舗ではまだ販売されていない秋冬コレクションを先取りしたARファッションショーを楽しめる、というイベントでした。

ARコンテンツを導入することで、店員とお客さんとの会話が生まれたり、ブランドへの関心が高まったりといった効果を引き出した事例です。

https://twitter.com/k_programming/status/1167639173034938369?s=20

H&MがARグラスを活用したファッションショーを開催

2018年、ファストファッションブランド「H&M」が、ARグラス「Magic Leap One」を使用したファッションショーを開催しました。イタリアのファッションブランド「Moschino」とのコラボコレクションで導入され、コンテンツ提供にはスウェーデンのARコンテンツ企業「Warpin Media」が協力しています。会場には全15台のMagic Leapが用意され、700名限定でランウェイでのファッションショーに引き続き体験できる流れとなっていました。

このARファッションショーにおけるH&Mの狙いは、最新のAR体験を提供することで話題性を高め、ブランドイメージの向上を高めることにありました。事実、SNS上での評判が非常に良く、瞬く間に拡散されていったようです。

今回使用されたデバイス「Magic Leap One」は、デバイス内に複数のカメラが内蔵されており、空間認識力に優れています。つまり、現実世界の室内状況をリアルタイムに認識しながらARを出現させるのが得意なデバイスなのです。

新型コロナウイルスの影響で非接触型の体験やコミュニケーションを重視する傾向にはあるものの、Magic Leapの高い空間認識力を活かしたARコンテンツは、今後も増えていくことが予想されます。

中国のファッションブランド「HIPANDA」がARで店舗をエンターテインメント化

2019年、中国のストリートファッションブランド「HIPANDA」が、日本の表参道に「HIPANDA OMOTESANDO FLAGSHIP SHOP」をオープンしました。ブランドの旗本店となるこの店舗には、ブランドの世界観をARで楽しめる仕掛けがたくさん施されています。

ショップのデザインを務めたインテリアデザイナー「グエナエル・ニコラ」氏は、店舗のコンセプトを「お化け屋敷×パンダ屋敷」と設定しました。リアル店舗にARを使ってエンターテインメント性をもたせることで、来店すること自体を楽しめるようデザインしたのです。

スマートフォンで店頭の外壁に設置されたオブジェクトをかざすと、シンボルキャラクターのパンダが花びらと共にダイナミックに飛び出してきます。実は外壁だけでなく、店内のありとあらゆるところにARの仕掛けが施されています。スマートフォンやタブレットを持ちながらARを楽しんでいる様子がうかがえますね。

なお、OSのバージョンなどの都合で手持ちのスマートフォンでAR体験ができない場合は、店頭でipadを借りることもできます。豊かなモノよりも、体験やコトを重視する傾向にある若者にとって、ショッピングに新たな楽しみ方を提供することはブランドのファンづくりの上でも重要です。

またパンダを探すことで店内を隅々まで見て回り、滞在時間が長くなるほか、顧客満足度が向上する効果も期待できます。このHIPANDAの事例は、店舗でブランドの世界観を表現するためにARを導入し、エンターテインメント化させることに成功したモデルケースと言えるでしょう。

渋谷パルコ内の「calif」で3Dバーチャルフィッティング「FXMirror」を導入

2019年、渋谷パルコが約3年越しにリニューアルオープンしました。リアルとバーチャルが融合した「次世代デジタルファッションビル」を掲げており、館内のいたるところでデジタル技術を発見できます。渋谷パルコ内のアパレルショップ「califSHIBUYA」は、ミラー型のモニター内で自分のアバターを作成し、バーチャルに着せ替えを楽しめるバーチャルフィッティングミラー「FXMirror」を導入しました。

AR技術がさらに進化したMR技術とトラッキング技術をベースにしており、体型・表情・体の向き・動きなどをリアルタイムでアバターに反映できます。フィッティングルームでいちいち着替える手間が不要で、気になるアイテムの着用イメージを効率よく確認できます。バーチャル着せ替えなので、限定商品や在庫切れなど、店頭に実物がない商品を試着することができるのも便利です。

なお、試着したデータは、QRコードで自分のスマートフォンへ送信し、あとでオンラインショップで購入することが可能です。オンラインショップとオフラインの融合が図られた、新しい店舗形態のモデルケースとなりそうです。こうした技術がもっと広がっていくことで、店頭での顧客体験やコミュニケーションのあり方はさらに変化を遂げていくでしょう。

渋谷パルコ内「JINS」でメガネをかけたままメガネ試着ができるサービスを開始

FXMirrorに続いて、渋谷パルコ内でデジタル試着ができるサービスです。メガネショップ「JINS」では、メガネをかけたままメガネが試着できるモニター「MEGANE on MEGANE(メガネオンメガネ )」を導入しています。

まずはメガネをかけた状態でモニタの前に立ち、試着したいメガネを指定の位置に置いて、付属しているタグのQRコードをスキャンします。すると、モニタ内の自分の顔からメガネが消え、3Dでバーチャル試着ができるようになるのです!これにより、視力を保ったままメガネの試着ができるようになるという大きなメリットがあります。「メガネを試着したいのに見えない……」という問題を解決できるようになりました。

さらに、試着したメガネをAIが似合い度判定してくれる機能がついています。ARとAI、最新技術が組み合わさることで、デジタルを使った施策はさらに広がっていくことでしょう。

元々JINSは、スマートフォンでのAR試着サービスを配信したり、AIによる似合い度判定を積極的に導入したりと、テクノロジーによる新しい購買体験をいち早く導入してきました。ゲーム感覚で試着を楽しめるサービスが充実しているのは、似合わせが重視なメガネメーカーならではと言えそうですね。

まとめ

AR技術により、アパレル業界ではオンライン・実店舗ともに大きな変化を遂げています。オンラインでは、リアルな試着体験による購入後のミスマッチ率を低減させ、満足度の高い買い物を実現できるようになりつつあります。実店舗では、店頭で大量に商品を並べたり、その都度衣替えをしたりといったモノに頼った店舗施策から、「体験」をベースとした施設のエンターテインメント化へとシフトしていくでしょう。

「ARマーケティングラボ」を運営するOnePlanetでは、ARを活用したブランディングなどお力添えできます。ARのビジネス活用を検討していましたら、お気軽にご相談ください。