昨今、Apple社が新しいARデバイスを発売開始するなど、「ARグラス」に注目が集まっています。
この記事では、いよいよ日本で発売開始が発表された「Magic Leap 2」の魅力やMagic Leap 1との比較など、デバイスの概要を網羅的に解説した記事となっています。
筆者はARスタートアップの株式会社OnePlanet所属でMagic Leap 公式の元アンバサダーでもあるSadao Tokuyamaです。いよいよ日本でも発売開始が決定したMagic Leap 2の概要、そして先行して開発および検証を行った内容を記事化します。
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目次
Magic Leap 2の性能・特徴
まず初めに、デバイスの基本的な性能や特徴を記載します。
視野角の広さなどは本デバイスの特徴ですが、文字だけ見てもわかりにくと思いますので、その凄さや他デバイスとの比較は次項から解説します。
Magic Leap 2の構成
デバイスを購入すると、以下のアイテムが付いてきます。
- ヘッドマウントディスプレイ
- コンピュートパック
- コントローラ
より詳細な情報は以下のページにてご確認ください。
Magic Leap 2公式
Magic Leap 2製品仕様
Magic Leap 2開発してみての感想
まず、ハードウェアとしてMagic Leap 1との大きな違いはどのような点でしょうか?
視野角
ハードウェアという意味では大きく2点が挙げられます。
まず視野角の広さが大きく改善されました。特に縦の視野角は1に比べて明らかに良くなっています。縦についてはこれ以上広げる必要性がないくらい、違和感のないものになっていると思います。
軽量化
次に、デバイスの軽量化も大きな特徴として挙げられます。
ヘッドマウントディスプレイが小さく軽量化しているので、長時間使っても負担も少ないです。加えて、Magic Leap 1の時には長時間使うとデバイスが熱くなることもありましたが、2ではそういったことは確認できていないので性能が上がっているのだと思います。
ソフトウェアや機能面で良いと思った3点
ソフトウェアや機能面で良いと思った点を特に3つピックアップすると、どのようなものがありますか?
①Dimming機能(ディミング)
今まではデジタルコンテンツの表示が半透明で見えたのが、Magic Leap 2のDimming機能を使うことによってデジタルコンテンツを透過せずに見ることができるようになったのは大きな特徴です。
これによる具体的なメリットとしては、AR体験の没入感があります。
ホログラフィックコンピューターにおいて半透明で見えてしまうことは、本来は透過して見えないものが透けてしまうことで没入感を損じてしまうために長年の課題でしたが、それがDimming機能によって半透明でなくなることでAR体験の没入性がより高まるメリットがあります。
②Android OS 対応
メリットの2つ目としては、Androidのアプリケーションが動作することですね。Magic Leap 2 の OSは、Android OS (Android 10 (Q) API level 29)をベースにしています。
そのため、Androidのアプリケーションの技術的な部分がそのまま使えるので、SlackやSpotifyなどがARグラス越しにそのまま使えるのはやはり便利です。
③ヘッドポーズの安定度
メリットの3つ目としては、ヘッドポーズの安定性があります。
例えばですが、階段のような高さの差がある環境でデバイスを装着しながら移動をした場合、Magic Leap 1の時には見えていたものが見えなくなってしまうなど不具合がありました。
Magin Leap 2についても完全ではありませんが、ヘッドポーズの安定度が高まったことで階段を上り下りするような体験でも情報がそのままの場所にディスプレイされた状態を維持できる傾向が確認できました。
これはARを体験する上で、とても重要な進化だと思っています。
デメリットや課題に思った3点
逆にハードウェア、ソフトウェアを問わず改善が必要に感じた点を特に3つピックアップすると、どのようなものがありますか?
①ソフトウェアの安定性
ソフトウェアが不安定なので、たとえばアップデートすると動かなくなるなど、まだまだ安定していない点が挙げられます。
②ARクラウド機能のインフラ
2つ目としては、「ARクラウド」というとても有益な機能が提供されてはいるのですが、Magic Leap社がインフラを用意してくれていないので、サーバーから何から全て0からこちらで構築しなければいけない点は開発者側の負担が大きいと思いました。
③横の視野角
3つ目としては、横に対する視野角です。
Magic Leap 1に比べると広くはなったものの、まだ横に対しては十分とは言えませんので、横方向に目を向けるとARが見切れてしまうシーンはあります。大変に私的なわがままですが、理想だけ言うと視野角を対角100度まで持って行って欲しいと思っています。笑
想定される用途・利用シーン
Magic Leap 2で特に利用が広がると想定される分野や、利用シーンなどはありますか?
①メディカル
メディカルについてはMagic Leap社がオフィシャルに注力すると発言をしているので、導入が進みやすい分野だと思っています。
Magic Leap 2 は ARデバイスとして初めて医療規格IEC60601認証を取得しました。IEC60601とは、医療用を目的とした電気機器の基本的性能と安全性を定める一連の技術規格です。医療機器は、医療現場での安全に使用できることを想定しているため、IT機器に関する規格、IEC60950より要求は厳しいものとなります。
この領域では、Apple社が発売を開始した「Apple Vision Pro」のような高性能のデバイスと棲み分けがされるかもしれません。
Magic Leap 2がARデバイスとして初めて医療規格IEC60601認証を取得。https://t.co/VypMuc44Oy #LEAPERSJAPAN pic.twitter.com/gi5xXPdXum
— Sadao Tokuyama (@tokufxug) January 6, 2023
たとえば、今までレントゲンで撮影した情報が2次元だったものが、それを3D化して自分の悪いところを現実世界で立体的に可視化をさせるような用途は、悪いところを見つけやすくするといった用途で広がると思っています。あとは実際に高度な手術をする前に、オペをする対象の臓器や人体をリアルに再現してシミュレーションできるというのは成功確率を改善するのではないかと言われています。
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②エンタメ
また、以下はMagic Leapの空間マッピング機能と空間音響機能を利用した空間ゲームアプリケーション「Giant Pizza Tower」の事例です。いずれも株式会社OnePlanetの事例になりますが、エンタメ分野でもユニークなアプリケーションが提供されていくかもしれません。
参考:OnePlanet、MRグラス「Magic Leap 1」を活用した空間アプリケーション第1弾「Giant Pizza Tower」をリリース!空間アプリケーションの開発パートナー企業募集を開始
③その他
Magic Leap社がオフィシャルに注力すると言われているメディカル系の分野以外では、逆に言うと私たちが自ら新しい用途や利用シーンを開拓していくことになるのだと思っています。
その意味では、最先端のARグラスを使って何かチャレンジしたいという意欲がある企業様やパートナーと共に、世界でもまだ開発されていないような空間アプリケーションの開発に、日本から挑んでいきたいと思っています。
Magic Leap 2に興味がある方に、一言お願いします!
Magic Leap 2のみならず、AppleのARグラス「Vision Pro」も含めて、世界でも最先端のARグラスを活用してR&Dなど行いたい企業様は 株式会社OnePlanet へお気軽にお問い合わせ下さい!