ファクトリーアイキャッチ

2020年8月15日(土)から10月11日(日)まで、北海道札幌市の複合商業施設サッポロファクトリーにてAR技術を用いた仮想空間賃貸借事業の実証実験「AiRTOWN(エアタウン)」が実施されています。この実証実験は新たなマーケティング手法を意識して行われており、ARならではのショッピング体験をすることができます。

今回は、サッポロファクトリーのAR事業を体験してきた筆者の現地レポートをお届けします。

ARとは

AR説明

ARとは「Augmented Reality」の略で、一般的に「拡張現実」と訳されます。ARは現実世界の情報にデジタルな情報を付加する技術のことで、スマホやタブレットなどのデバイスを通して現実空間を見ることで、現実にバーチャルなコンテンツや情報を付加することができます。

ARはゲームアプリとして世界中で認知度を獲得しましたが、その他にも商品の疑似体験などカスタマー向けサービスとしても広がりを見せています。今回のサッポロファクトリーのAR事業も、まさにカスタマー向けサービスと言えます。

ARによる新たなショッピング体験ができる「AiRTOWN」

サッポロファクトリー

サッポロファクトリーは、1993年からサッポロ不動産開発株式会社が運営する複合商業施設で、札幌市中央区北2条東4丁目に位置しています。施設内にはショッピング、アミューズメント、レストラン、ホテルなどさまざまな店舗が立ち並び、観光客だけでなく地元の人々にも長い間利用されています。

今回取り上げるAR事業は、サッポロファクトリーアトリウムで行われています。

札幌発!注目のAR実証実験

地方発のARショッピング実証実験が行われることは珍しく、どのような事業なのか注目されています。プレスリリースによると、本事業はOMO型仮想空間賃貸借の事業化に向けた実験です。OMOとは「Online Merges with Offline」の略で、オンライン・オフラインを意識したマーケティング手法です。

この実証実験では、オブジェに設置されたQRコードにスマートフォンをかざすとバーチャルショップ「AiRTOWN」にアクセスすることができます。AiRTOWNではアトリウムの中空の床面にお店が出現し、気になるショップをタップすると商品リストや実店舗の画像が表示され、商品を購入することも可能になっています。

ARショッピングで普段行けないお店に行くことが可能

AR技術を用いたショッピング体験のメリットは、実店舗のないEC店舗や普段はなかなか手に入らない商品を利用者が体験できることです。今回の事業では、バーチャルショップ「AiRTOWN」では、利用者がスマートフォンを操作するだけでショッピング体験ができるようになっています。

ARコンテンツを体験するには専用アプリをインストールすることもありますが、今回は事前にアプリを用意する必要もなく、いつでも手軽に利用できます。サッポロ不動産開発株式会社はデジタル空間におけるお客様への新たな可能性を探るとしており、短期間・低コストでの新規出店が可能なAR事業に期待を寄せています。

現地でARショッピングを体験してみた

今回は、6つの店舗それぞれの魅力をARで体験してみました。ここからは、実際にAiRTOWNを体験した筆者がレポートをお届けします。

QRコードからスマホでアクセスが可能!

QRコード1

サッポロファクトリーアトリウムを訪れると、AiRTOWNのロゴとともに描かれた大きなQRコードが目に入ります。AiRTOWNでは、このQRコードをスマートフォンで読み取るだけでAR体験をすることが可能です。

近くにはベンチやレストランもあり、椅子に座りながらAR体験をすることも可能です。

QRコード2

3条館3階から見下ろしても大きく目立つQRコードはかなりのインパクトです。周囲には他にもスマートフォンでQRコードを読み取っている方が何人かおり、お客さんも興味津々です。

6つのお店でARショッピングを体験

AiRTOWNには、6つの店舗が出店しています。いずれもAR上で来店し、商品の詳細を見たり、実際にオンラインショップで購入することができます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

①北海道じゃらんセレクトショップ

「北海道じゃらん」は、北海道の魅力を発信するお出かけ情報誌として道民にはお馴染みです。今回のAiRTOWNでは、道内のグルメを網羅した絶品グルメをAR店舗で見ることができます。ARで表示された店舗をタップすると、店内に入ることができます。

店内に入ると、木造の家具たちのぬくもり溢れる雰囲気を感じることができます。通常のスマートフォンと操作は同じで、画面をスクロールしたり拡大縮小することも可能です。入り口の左右には机の上に商品が配置されており、商品名をタップすることで商品の詳細情報を閲覧することができます。

店内の商品をタップすると、上の画像のように商品の魅力を詳しく見ることができます。AR内の商品には北見の「ほたてエレガンス」、斜里町の「生麺こはる」、函館のするめいかを用いた「塩辛deアヒージョ」など、北海道各地の美味しい商品が並んでいました。地元の方はもちろんのこと、道内のお土産を探している観光客にもおすすめのサービスです。

②亀井堂総本店

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亀井堂総本店は、明治6年に瓦せんべいを生み出して以来、和魂洋才をコンセプトに長い間人々に親しまれてきた神戸本町老舗菓子店です。AiRTOWNでは、ドアを開けるとすぐにお菓子が並べられた店舗を体感することができます。ARで表示された青色の矢印をタップすることで店舗の奥に入ることができます。

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店舗の奥に入ると、棚に数多くのお菓子が並べられています。その中でも特に人気の商品が、店舗に入って左側にある「神戸元町バターサンドTONOWA 淡路島なるとオレンジ」です。このバターサンドは淡路島で300年近く生育してきたと言われている「淡路島なるとオレンジ」が使われており、チョコレート風味のバターと共にオレンジの香りを楽しむことができます。

写真と共に表示された商品の名前をタップすると、公式サイトの商品ページに移動することができます。このように、神戸になかなか行くことのできない北海道の方でも、ARを用いれば気軽に店内の雰囲気を体験できます。

③ORIGINE KOBE(パティスリー)

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サッポロファクトリーアトリウム出口付近を歩いていると、「ORIGINE KOBE(パティスリー)」のバーチャル店舗が姿を現しました。ORIGINE KOBEは神戸を代表するパティシエが集結し、それぞれのお菓子を作るプロジェクトです。

季節ごとにさまざまなテーマに沿ったパティスリーが販売されており、お洒落なスイーツが観光客に人気です。AR店舗では、全店のサブレを集めたセットなどを見ることができます。

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店内奥に入ると、お店自慢のスイーツをチェックできます。ORIGINE  KOBEはお店を代表するタルトで、店内に入ってすぐに表示されます。

また、タルトフロマージュポシェットなどセット商品も多数並べられており、プレゼント用としても喜ばれるお洒落なスイーツばかりです。

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その他にも、店内入り口左側には多くのアソート商品などが並んでいます。ぜひ店内全体をチェックして神戸のスイーツを楽しんでみてください。

④196 ひのきのキャンプ用品専門店

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196 ひのきのキャンプ用品専門店は、木製キャンプ用品を取り扱うアウトドア・ガレージ・ブランドで、その名の通りひのきの特性を活かした商品を多数販売しています。この専門店のページでは、キャンピングカーとテントの側に店舗で扱う商品が陳列されており、キャンプ時のリアルな使用感を疑似体験できます。

AiRTOWNではスマホを横に傾けると上の画像のような横向き表示になり便利です。

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ARのキャンプ場に置かれたウッドテーブルは、説明文のとおり焚火テーブルと併用することができます。また、焚き火用五徳などキャンプに必須のツールも配置されており、実際にキャンプ場でどのように商品を使うのかイメージしやすくなっています。

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テーブルの端にはハングリーフォークのような小物もタップして詳細を確認することができます。お洒落な木製グッズを揃えることでキャンプへのモチベーションも高まります。

⑤SBY

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SBYは、「SHIBUYA」を短縮した表記で、「アタラシモノ発見☆」をテーマに話題のコスメやカラコンなど魅力ある商品を取り揃えたショップです。実店舗は渋谷にありますが、AiRTOWNでは気軽に店舗内の商品を見ることができます。お店をタップすると入り口からコスメ商品がぎっしりと並んでいることが確認できます。

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ショップ内では他のバーチャル店舗同様、表示された商品名をタップすると商品の詳細を見ることができます。AR上でも人気のコスメが多数取り揃えられており、気になった商品をタップすると公式ショップで購入することができます。実際の買い物をしているような感覚で買い物ができるのもARの強みのひとつです。

⑥iichi

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歩き疲れてカフェで一休み、と思いアイスコーヒーを飲みながらふとスマホを覗くと、アクセサリー・雑貨ショップのiichiのバーチャル店舗が現れました。iichiは日本全国のアクセサリー、器、ファッション、雑貨などの個性豊かな手仕事品を展示販売しており、既製品にはない「手作り感」が魅力です。

店舗に入ると、広々とした空間に雑貨が展示されていることが確認できます。

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iichi店内では、棚に商品の写真が展示されており、遠くからでも商品の大まかな姿が確認できます。試しに時計の写真をタップすると、ALYSSUMの腕時計の解説ページが表示されます。

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棚にある他の商品を見ると、湯飲み椀やかみかざり、イヤリングなどの魅力的な商品が並んでいます。湯飲み椀は三重県四日市市の萬古焼、かみかざりやイヤリングは研磨を繰り返して形成されるなど手作り感を味わえる商品が多く、それぞれサイズや容量を確認できます。

事業担当者に今回の事業の狙いを聞いてみた

聞いてみた

今回のサッポロファクトリーでのAR実証実験は、どのような狙いで実施されたのでしょうか。AiRTOWNの体験後、サッポロ不動産開発株式会社 事業開発部の縣氏に詳しい話を聞きました。

以下は縣氏の回答です。

今回なぜARの実証実験を行ったのでしょうか?経緯や狙いを教えてください

当社では、昨今のデジタル化の進展や価値観の変化に合わせ、IoTや最新テクノロジーを活用した新たな価値の創造に取り組み、まちに住む人、働く人、訪れる人に高い利便性や快適さを提供することで、周辺エリアも含めたまちの魅力向上に取り組んでいます。

ECサイトの普及、モノ消費からコト消費への消費価値観の変化等により、お客様や出店者の方々にオンラインとオフラインによる新たなショッピングスタイルを体験いただくことで、相互のメリットが実際に創出されるのかを検証することが狙いです。

実証実験では具体的にどのようなことを検証なさるのでしょうか?

来館頂いたお客様にAiRTOWNを体験していただくことが出来るのか、それにより出店者様サイトへの訪問者が増えるのか、ということを検証します。

実証実験ではどんな数値や結果を見るのでしょうか?

AiRTOWNのアクセス数やサッポロファクトリーの来館者数、各出店者様サイトへの訪問者数をみます。

現在の手ごたえのようなものを教えていただければ幸いです。

オープンから一週間で約450名のお客様に体験頂いております。各種メディアに取り上げていただいたおかげで、比較的順調にスタートが切れたと思っています。

今後の展望、AR事業にどのようなことを見据えてらっしゃいますか?

今回は一回目の実証実験ですので、今回の結果をふまえて今後の展開を考えていくことになります。

ARやVR等のXR技術は今後も発展していくことは明らかだと思います。それ以外でも、今はまだ現実でしかありえないと考えているあらゆることが、今後ますますスピードを上げてデジタル化していくと考えています。

その変化にしっかりと対応していきたいと考えています。

現地で体験して感じたARショッピングの可能性

ARの可能性

担当者へのインタビューのとおり、今回のAR事業では「モノ消費からコト消費へ」の価値観の転換に対応したビジネスモデルを模索する中で行われた取組と言えます。また、実証実験ではAR体験をした方が出店サイトに訪問するかも考慮されており、ARショッピングと既存のECサイトをいかにシームレスにつなげることができるかというマーケティングにおける課題意識も伺えます。

今回のARショッピングでは商品をタップするだけで公式ショップに移動することができるため、ショッピングの疑似体験から実際の商品の購入までスムーズに行うことができました。今後はAR技術の進化によってよりリアルな疑似体験や商品の使用感を知ることができるようになり、利用者の体験も向上していくと予想されます。

まとめ

ARはショッピング体験と組み合わせることで、既存のECサイトの閲覧数を増やしたり、遠方のお客さんにリーチする体験を創出できるなど、今後様々な使い方が期待されます。

今回紹介したAR×ショッピングの事例も参考にしながら、マーケティング分野においてどのようにARを活用できるか考えてみてください。

ポイント
  • 普段行けないお店の体験ができる
  • 商品やサービスの疑似体験ができる
  • 既存のECサイトと連携できる

「ARマーケティングラボ」を運営するOnePlanetでは、ARエフェクトの開発、ARを活用したキャンペーン拡散やブランディングなどお力添えできます。ARのビジネス活用を検討していましたら、お気軽にご相談ください。