世界中で安くて手軽な食べ物として学生やビジネスマン、ファミリーなど、いろいろな人から愛されるファーストフード。
多く人にサービスを届けるファーストフード業界では、早くからユーザーとのコミュニケーションに「AR」を活用しています。
こちらでは、そんなファーストフード業界のARについて、その事例と共に解説していきます。
目次
マクドナルドのAR活用事例
この記事では、2017年にオーストラリアのマクドナルドがSNSのAR機能を活用して苦しい人材確保の問題を解決したユニークな事例を紹介します。
少し古い情報ですが、これからさらにモバイルARが普及する日本において、このタイミングだから注目してみても良い事例ではないかと考え、改めてこちらで紹介させていただきます。
世界でマーケティングに活用されるSnapchatのAR機能
前提として、こちらのマクドナルドのARは「Snapchat」を活用したARプロモーションの事例です。
日本ではユーザー数が300万人程度とあまり普及していませんが、ARを最も早くから導入して世界の若者に人気を得たSNSがSnapchatです。
ちなみに国内Instagramユーザー数は3,300万人なので、国内のSNSマーケティングでARを活用する場合にはInstagramの方が良いでしょう。
SNS内のARカメラを誰でも作ることができるソフトウェア「Lens Studio」を提供してきたSnapchatに対抗し、Facebook・Instagramが「Spark AR」というオリジナルAR開発のソフトウェア提供を昨年にはじめました。
この2社のARフィルターの機能的な優位性を競う競争は当面続きそうですが、現時点ではまだ先行者であるSnapchatに一日の長があります。
そんなSnapchatのAR活用の先行事例は、これから国内で普及するInstagramのARフィルターを考える上でとても参考になります。その代表例が今回のマクドナルドの事例です。
豪マクドナルドの採用キャンペーン 「SNAPLICATION」
Snapchatの利用者層=若年層をターゲットにAR機能を利用して採用募集をかけたマクドナルドの斬新な採用キャンペーン事例を深掘りして行きます。
オーストラリアのマクドナルドは「SNAPLICATION」という名の大規模な採用促進キャンペーンを行いました。若者からの応募を募る為にSnapchatに目をつけました。ターゲットが日常的に使うSNSでARを使ったキャンペーンを展開することで
①アプリのダウンロードを必要とせず一気に多数のユーザーにアクセス可能
②通常の写真よりSNS投稿したくなる現実を拡張したAR撮影の提供が可能
この2点のメリットを生かして、自社の採用キャンペーンを大きくバズらせたのがマクドナルドの「SNAPLICATION」です。このような企画は国内であればInstagramだと近しいことの再現がしやすいでしょう。
キャンペーンの進め方
まずマクドナルド社(あるいはAR開発を受託している外部パートナー)は、マクドナルドのアカウント内にARフィルターを導入します。コンテンツの中身はマッククルーの帽子と名札がセットになったARをアップしました。
そのフィルターを使ってマックのスタッフ風に撮影した10秒程度の動画を撮影・送信すると、アイルバイトの応募が完了というシンプルな導線です。審査に通過すれば、動画を見た採用担当者から2次面接のお知らせがくるというものです。
応募者は、クルーの制服を着用しているように見えるARフィルターを使い、Snapchatで10秒間のセルフ動画を撮影してデータ送信するだけというわかりやすい流れになっています。
キャンペーンの結果
スマホを使って気軽にエントリーでき、さらに自分の個性をアピールできるこの方法が見事に当たり、なんと初日だけで2,849もの応募があったそうです。若者の心をしっかりと掴んだキャンペーンになりました。
また、珍しい取り組みにテレビの報道番組などでも大々的に取り上げられるなど、大きな話題となりました。現代の若者に寄り添う新しいリクルーティング施策が注目を集め、ARを活用したキャンペーンの先行者として利益を得ることができました。
ケンタッキーのAR活用
続いて紹介するのは、InstagramのARを活用した日本のケンタッキーのARの事例です。
以下の☺︎マークのボタンがInstagramの最新機能のARフィルターへの導線になっており、フォローすると自分のストーリー内のカメラにフィルターが加わります。
InstagramのARフィルターには、バックカメラ(スマホの背につく外向きのカメラ)とインカメラ(スマホのスクリーン側の自撮り用カメラ)があります。
ケンタッキージャパンのARは、インカメラとバックカメラの2種類があり、それぞれ個別に解説していきます。
①インカメラ
インカメラは自分がカーネル・サンダースになってセルフィー撮影をすることができます。
メガネとヒゲがリアルに再現されるだけで、かなりカーネル・サンダースおじさん感が出て、面白いです。複数名で楽しめるのも魅力ですね。
瞬きをするとメガネがキラリと光る演出も施されており、表情に反応して変化する演出もとても楽しいです。
②アウトカメラ
アウトカメラはカーネル・サンダースのリアルな3D人形が表示され、自分の好きな場所に配置することができます。
スクリーンをつまむように操作して3Dモデルを小さくしたり、広げるように操作して大きくしたりして調整します。ケンタッキーを買ってきて、一緒に写真をとっても楽しそうです!
TacoBell(タコベル)のAR活用
次に、タコスのファーストフードチェーンとして知られる「タコベル」の事例を紹介します。
タコベルは、1962年創業のカリフォルニア州アーバイン市に本社を置くアメリカの大手ファーストフードチェーンです。2015年から日本進出しています。以前はペプシコーラの一部だったようです。
ハンバーガーに対抗し、タコスを提供するファーストフードチェーンで、メニューにはブリート、ナチョス、ケサディーヤなど、「テクス・メクス料理」「カル・メクス料理」風の食品を提供しています。
Instagramのアカウントのフォロワー数は138万人も抱えています。
それでは早速、どんなARフィルターを配信しているか紹介していきます。
ARフィルター「Which Item?」
タコベルのアカウントでは1種類のARフィルターを提供しています。
「WHICH TACO BELL ITEM AM I?」と書かれている場所をタップすると、ディズニーやポケモンのフィルターのように自分にフィットしたアイテムが見つかるような診断タイプのARを提供しています。
ユーザーは以下の8つの可能性のどれかに着地するようになっています。
1:Crunchwrap Supreme
2:Cinnamon Twists
3:Chalupa Supreme
4:Cheesy Gordita Crunch
5:Quesarito
6:Chicken Quesadilla
7:Mexician Pizza
8:Doritos Locos Tacos
このようにエンターテインメント性のあるAR体験と共にブランドをプロモーションする事例は増えており、こちらのタコベルの事例よりもさらに高度な「ARゲーム」として今後も発展していくプロモーション手法となることでしょう。
ドミノ・ピザの「”世界のチーズをめぐる旅”AR」
ドミノ・ピザのこちらの事例は、これまで紹介してきた事例とARの技術環境が異なります。
それは「Web AR」という技術を活用していることで、InstagramやSnapchatなどの専用アプリをインストールしていない人でも、URLにアクセスさえすれば誰でも簡単に楽しめるという点を活かすことで、大きな話題作りに成功した事例です。
こちらのARでプロモーションをしたドミノ・ピザの新商品は「ワールド10チーズ・クワトロ」です。
このプロモーションとしてリリースされたARは、“世界のチーズをめぐる旅”ARというテーマで開発されました。
ARの概要
ドミノ・ピザの新商品ピザ4種類に使われている、世界各国の10種類のドミノこだわりのチーズに関する理解を深められるARになっています。
一口に「チーズ」とで言っても、その種類は国や地域によってさまざまです。見た目・味・製法、そして歴史も異なります。
そんな国ごとに異なるチーズの詳細情報を、ARで現れる地球儀を回して世界を旅しながら学べるコンテンツとなっています。
ARを起動すると地球儀が登場する
AR開始画面が出てきたら、「はじめる」をタップし、床にカメラを向けて空間を認識させます。
認識が完了すると、黄色い〇が現れるので、タップボタンを押しましょう。
地球儀が登場しました!いろんなチーズがふわふわ浮いています。
カメラを近づけると、拡大して見えます。まるでその場に地球儀が存在しているかのようです。
そして、個別のチーズはタップすることができるようになっており、以下のような情報が表示されるARになっています。
- 産地
- チーズの熟成期間
- チーズのタイプ・固さ
- 選んだ国のチーズ事情(消費量など)
- 選んだ国のチーズヒストリー(その国でチーズが作られた歴史など)
- おいしい食べ方
- 特徴・テイスト
- このチーズが使われているピザとオススメの食べ方
このように、ブランドのこだわりやストーリーを視覚的に楽しく伝えることで、ユーザーとブランドのコミュニケーションを生み出し、結果としてブランドへの愛着を生み出すような事例になっています。
このようなAR体験を専用アプリなしで展開できるWebARによって、ユーザーはQRコードを読み取るだけで誰でもARへアクセスすることができます。
実際にドミノ・ピザでは、チラシやリーフレットなど印刷物にQRコードをプリントし、オンラインとオフラインの両面でARを活用して一体的なプロモーションにしていくことに成功しています。
このように現実空間にバーチャルな情報を表示させられるAR技術はデジタル施策だけでなく、オフラインの施策と融合させるプロモーションにも出来るという示唆のある事例でした。
国内でも最先端の事例と言える取り組みでしょう。開発したOnePlanet社とドミノ・ピザ ジャパンの中の方のインタビュー記事も掲載されているので、よりマーケティング目線で深掘りしたい方は覗いてみると参考になるかもしれません。
まとめ
こちらの記事では、ファーストフード業界のARについて紹介させていただきました。
本メディア「ARマーケティングラボ」を運営するOnePlanetでは、記載したドミノ・ピザ ジャパン様のARを開発しているほか、AR技術を活用したソリューションに専門特化して様々な業界での多数の実績を有しています。
また、近年話題のメタバースやNFTに関連した最先端のソリューションも提供しています。
ARやメタバースのビジネス活用を検討していましたら、お気軽にご相談ください。
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