本記事は、AppleのARグラスの発表に伴って大きな注目が集まっているAR体験ができるメガネ型デバイスについて、ARの専門会社が丁寧に解説をした記事となってます。AppleのARグラスについては以下の記事にもまとまっていますので、そこだけ知りたいという方は以下よりご覧ください。
「ARグラス」「スマートグラス」「VRゴーグル」の特徴と違い
まずは、混同しやすいARとスマートグラス、そしてVRゴーグルの違いについて整理していきましょう。
上記のようにスマートグラスにはそもそもAR機能は搭載されておらず、「え、スマートグラスってAR使えないの?」という声も聞こえてきそうです。その辺りも含めて、丁寧に解説していきます。
ARグラスの特徴
ARグラスとはその名の通り、メガネ(グラス)のように顔に装着するARデバイスです。メガネをかけると、レンズの向こう側にさまざまな情報が表示され、まるで現実世界にCGが存在しているかのような感覚を味わえることが特徴です。
具体的な例としては、ARグラスの Magic Leap 2 を装着すると以下のように、机の上に仮想上の物体を設置操作する事が可能です。ARエンジニアによる検証動画では、仮想空間上に設置されたピアノを操作したり、物体を操作しています。
Magic Leap 2 の MRTK ハンドトラッキングのデモ#MRTK#MRTKv2#LEAPERSJAPAN pic.twitter.com/R3q1j2200b
— Sadao Tokuyama (@tokufxug) December 17, 2022
ARグラスとスマートグラスの違い
メガネ型ARデバイスは、大きくわけてARグラス・スマートグラスの2種類に分類されます。境界線はあいまいですが、一般的には次の基準で分けられます。
- ARグラス:自分の動きに合わせてリアルタイムで目の前の状況を分析し、情報を表示させる。AR特化。
- スマートグラス:情報を表示するのがメイン。AR特化ではない。
シンプルに言うと、ARに特化しているか・していないかがポイントです。ARグラスは、現実とARの融合感がより高い体験を楽しむためのデバイスとして開発されています。目の前の状況をリアルタイムに分析するためのセンサーやカメラなどが内蔵されています。コントローラーが付属しているタイプもあり、精度の高い操作が可能です。しかし、センサーやコントローラーがある分、見た目が大きく・重たくなる傾向にあります。
一方、スマートグラスはARグラスに比べて軽く、機能的にもシンプルです。現実との融合感は少なく、スマートフォンで閲覧するような情報を表示することがメインです。しかし、メガネ型ARデバイスは年々進化しており、ARグラスとスマートグラスの境界はあいまいになりつつあります。ARやVRの上位互換として、MRグラスという呼ばれ方をされる場合もあり、メガネ型ARデバイスの呼び方や機能はさまざまなので混乱しがちです。
調査が足りないまま最新のデバイスを買ってしまうとミスマッチが起こるため、スペックや機能の確認が重要です。
目的別に2つに大別されるARグラスの種類
さらにARグラスを大きく分けると、大きなコンピューターを搭載したものと、一般消費者が日常使いできるもので、BtoB/BtoCそれぞれに違ったタイプのデバイスとして各社が開発を進めています。
BtoB
メガネ型ARデバイスは、手を使わずにAR体験できるのがメリットです。たとえば、ものづくりをしながらマニュアルを確認したり、資料をみながらディスカッションしたりといった、作業をしながら情報を閲覧するシーンで利用されることが多いです。中でもHololensはARグラスの先駆者的な存在で、さまざまなビジネス分野で導入されています。
しかし、メガネというよりはヘッドマウントディスプレイに近く、大きさもあります。大型のコンピューターを搭載したARグラスはビジネスで使用される事例も増えているものの、装着するのが大変だったり、長時間利用には適していない点がデメリットです。
BtoC
そこで、一般市場向けには、スマートで軽いメガネ調のものが注目されています。見た目は従来のスマートグラスに近いのですが、技術が進化して小型センサーなどを搭載しているARグラスが増えています。
機能は限定されますが、スマートフォンと接続して使用することができ、さらに価格もおさえながら、サングラスのような使用感を実現することに成功したARグラスもあります。これは以下のARグラスの種類を解説するパートで説明します。
最新のARグラス 10選
まずは、スペックが公開されている代表的なARグラス6種類の比較表です。発表はされたもののスペックは未公開のデバイスもあるため、AppleのARグラス等については現時点で公開されている情報を抜粋して後述します。
スペック | HoloLens2 | XREAL | Magic Leap 2 | ThinkReality A6 | GLOW | MOVERIO BT-300 |
---|---|---|---|---|---|---|
ディスプレイ方式 | 両眼シースルー方式 | 両眼シースルー方式 | 両眼シースルー方式 | 両眼シースルー方式 | 両眼シースルー方式 | 両眼シースルー方式 |
画素数 | 静止画 8-MP、1080p30 ビデオ | ー | 1.3mp | 1080p | 1080p | 1280×720(HD画質) |
視野角 | 52度 | 52度 | 70度 | 40度 | 45度 | 23度 |
重量 | 566g | 88g | 248g | 380g | 98g | 69g |
OS | ー | Android | Android | Android Oreo™ | Android、UNITY | Moverio OS |
CPU | ー | ー | • AMD 7nm Quad-core Zen2 X86 core (8 threads) • 14 core CVIP engine • Up to 3.92 GHz max with 512kB L2 per core • 4MB total L3 cache |
Qualcomm® Snapdragon™ 845 Processor | ー | ー |
バッテリー | 2~3時間 | ー | 約3.5時間 | 4時間 | 5時間 | 5時間 |
内部メモリ | 4 GB LPDDR4x システム DRAM | ー | RAM8GB(ROM128GB) | ー | ー | メインメモリー2GB
ユーザーメモリー16GB |
センサー | ヘッドトラッキング
アイトラッキング 深度センサー ジャイロスコープなど |
SLAM (自己位置推定)
6DoF 自由度 平面検出 画像トラキング |
ー | ー | ー | GPS
地磁気センサー 加速度センサー ジャイロセンサー 照度センサー |
価格 | 3,500ドル | 499ドル | – | 2023年で未定 | 49,702円 | 69,980円 |
①HoloLens2
HoloLens2は、マイクロソフトが開発するARグラスです。前作よりも、視野角や付け心地がアップしています。
ディスプレイ方式 | 両眼シースルー方式 |
---|---|
画素数 | 静止画 8-MP、1080p30 ビデオ |
視野角 | 52度 |
重量 | 566g |
OS | ー |
CPU | ー |
バッテリー | 2~3時間 |
内部メモリ | 4 GB LPDDR4x システム DRAM |
センサー | ヘッドトラッキング
アイトラッキング 深度センサー ジャイロスコープなど |
価格 | 3500ドル |
直観的な操作性
HoloLens2には、ハンドトラッキング・アイトラッキング・音声認識が搭載されています。ユーザーは、ホログラムを動かしたり、目でログインしたりすることが可能です。高機能の音声処理が施されているため、雑音の多い環境でも、スムーズに音声コマンドを利用できます。
広範囲の視野角と高い解像度
HoloLensよりも視野角と解像度が約2倍になっています。一度に多くのホログラムを見られ、3D画像や文書の細部まで確認可能です。
ストレスフリーの付け心地
マイクロソフト社によると、HoloLens2はよりフィット感が増し、人間工学に基づいたデザインになっているそうです。長時間使用しても疲労感は少なく、眼鏡をかけたままの装着も可能です。
カメラ
HoloLens2には、8MPカメラと1080pのビデオが搭載されており、解像度の高い動画写真撮影が可能となっています。
②XREAL(旧:NrealLight)
洗練されたデザインで注目を浴びているARグラスです。コンパクトサイズなのにスペックが優秀で値段も安いため、市場の期待が高い製品です。
ディスプレイ方式 | 両眼シースルー方式 |
---|---|
画素数 | ー |
視野角 | 52度 |
重量 | 88g |
OS | Android |
CPU | ー |
バッテリー | ー |
内部メモリ | ー |
センサー | SLAM (自己位置推定)
6DoF 自由度 平面検出 画像トラキング |
価格 | 499ドル |
日常生活に溶け込むデザイン
XREALの見た目は、おしゃれなサングラスそのもの。デザイン性が高く、街中で使っても違和感はありません。重量は88グラムと軽量であり、移動中でも重さを感じることはないでしょう。
優秀な機能性
XREALは、USBケーブルでスマホと接続して使います。Bluetooth接続できないのは残念ですが、ケーブルでも特に問題はないでしょう。両目付近にカメラとスピーカーのほか、4つのセンサーが搭載されているため、外部センサーは不要。視野角は52度もあるため、大迫力の映像を楽しめることでしょう。
圧倒的コストパフォーマンスの良さ
一般消費者向けの値段は499ドルと手ごろなことも魅力的。開発者向けキットはすでに1,199ドルで販売されています。
③Magic Leap 2
Magic Leap 2 の MRTK ハンドトラッキングのデモ#MRTK#MRTKv2#LEAPERSJAPAN pic.twitter.com/R3q1j2200b
— Sadao Tokuyama (@tokufxug) December 17, 2022
Magic Leapはアメリカ合衆国のスタートアップ企業で、Googleからの資金調達で話題になりました。
ディスプレイ方式 | 両眼シースルー方式 |
---|---|
画素数 | 1.3mp |
視野角 | 70度 |
重量 | 248g |
OS | Android |
CPU | • AMD 7nm Quad-core Zen2 X86 core (8 threads) • 14 core CVIP engine • Up to 3.92 GHz max with 512kB L2 per core • 4MB total L3 cache |
バッテリー | 約3.5時間 |
内部メモリ | RAM8GB(ROM128GB) |
センサー | 環境光センサー |
価格 | ー |
正確に空間を把握
ヘッドセットには9つのセンサーが搭載されており、どこにいても正確な空間認識が可能です。デジタルオブジェクトをスムーズに動かしたり、家具の上に置いたりできます。さらに、空間認識力に優れているため、ユーザーが動いてもデジタル物体の位置はずれないのです。
鮮やかなグラフィックス
Magic Leap 2の強みは、ゲームのように鮮やかなグラフィックスです。ヘッドセットを装着すると、顔の前からずっと先にまで、鮮やかで見やすいオブジェクトが配置されます。
OSはAndroid
Magic Leap1のOSは独自OSのLuminでしたが、Magic Leap2についてはAndroidOSを利用します。これにより既存のAndroidスマホアプリの開発者も開発しやすくなり、Androidアプリとの連携もスムーズに可能です。
日本発売日について
2023年より、ついに日本で発売となったMagic Leap 2については、以下の記事で専門家が詳細を説明しています。
④ThinkReality A6
ThinkReality A6は、レノボが開発する法人向けARグラスです。主に製造や建築業などの作業員を対象に開発されたようです。
ディスプレイ方式 | 両眼シースルー方式 |
---|---|
画素数 | 1080p |
視野角 | 40度 |
重量 | 380g |
OS | Android Oreo™ |
CPU | Qualcomm® Snapdragon™ 845 Processor |
バッテリー | 4時間 |
内部メモリ | ー |
価格 | 2023年で未定 |
高い解像度
ThinkReality A6の解像度は1080pであるため、まるでその場にあるかのようなリアリティある映像表示が可能です。視野角は40度ですが、フィールド作業中での活用なら十分な広さでしょう。
直観的操作
ThinkReality A6の操作は、手や音声、もしくは視線で可能です。また、付属のコントローラーでの操作も可能なので、あらゆる状況に適した操作を実施できます。
作業中でも安心のデザイン性
ARグラスの重量は380グラム未満です。グラスは後頭部を抱えるように装着するため、フィット感が高まり重量負担の軽減にもつながっています。作業中でも、ARグラスがずれる心配はありません。
⑤GLOW
GLOWは、香港拠点のスタートアップMAD Gazeが開発するARグラスです。Campfireで即座に目標達成したことで大きな話題を呼びました。
ディスプレイ方式 | 両眼シースルー方式 |
---|---|
画素数 | 1080p |
視野角 | 45度 |
重量 | 98g |
OS | Android、UNITY |
CPU | ー |
バッテリー | 5時間 |
内部メモリ | ー |
センサー | ー |
価格 | 49,702円 |
洗練されたデザイン
一般消費者向けに開発されているため、GLOWはデザイン性が極めて高いです。高級ブランドのサングラスのようなスタイリッシュなデザインなので、日常使いに最適です。カラーは6種類用意されています。
コンパクトなのに大画面
重量は75グラムとコンパクトなものの、一度ウェアを着用するとそこには鮮やかな大画面が広がります。視野角は45度で、3メートル先を見ると90インチの大画面が映ります。解像度も720pと十分なので、ゲームや映像視聴を十分に楽しめるでしょう。
豊富な機能性
取り付けられたカメラで動画撮影や自動翻訳、ジェスチャー操作を行えます。NetflixやYouTube、Amazonなどアプリも豊富。Bluetooth接続をすれば、目の前にデジタル文書を映しながら、文書作成なども行えます。
⑥MOVERIO BT-300
エプソンのMOVERIO BT-300は、幅広い用途で活用できるARグラスです。もともと、一般消費者向けに開発されましたが、今では遠隔支援を希望する法人にも活用されています。
ディスプレイ方式 | 両眼シースルー方式 |
---|---|
画素数 | 1280×720(HD画質) |
視野角 | 23度 |
重量 | 69g |
OS | Moverio OS |
CPU | ー |
バッテリー | 5時間 |
内部メモリ | メインメモリー2GB、ユーザーメモリー16GB |
センサー | GPS、地磁気センサー、加速度センサー、ジャイロセンサー、照度センサー |
価格 | 69,980円 |
光学技術が可能にしたシースルー映像
周囲を見ながら、大迫力の映像が楽しめます。飲食物を楽しみながら映画視聴できれば、ドローンを見ながらデジタル情報の確認も可能です。
長時間のバッテリー稼働
バッテリー稼働時間は、業界トップクラスの6時間にもなります。長時間の動画視聴や遠隔支援でも、安心して使用できるでしょう。
まるでメガネのようなデザイン
MOVERIO BT-300の重量はたったの69グラム。これは、メガネよりもわずかに重い程度です。さらに、頭を抱えるような設計なので、安定したフィット感を得られます。
⑦Vuzix Blade
アメリカの「Vuzix Blade社」が発売しているスマートグラスです。サングラスのような見た目で、右目単眼タイプなのが特徴です。メガネのツル部分に搭載された小型タッチパネルで操作します。
Vuzix Blade Companion Appをインストールしたスマートフォンを介し、音声・画像・文字などのデータ送受信するのが主な使用用途です。しかし、視界に映し出される情報の精密度は、従来のスマートグラスより格段に進化しています。
Vuzix Blade Smart Glass:重さ約90g・解像度480×480・視野角度19度(調整することで28度まで可)
Amazoneなどのネット通販で約66,000円で購入できます(2020年9月時点)。
⑧am glass
中国の「PACIFIC FUTURE 社」が発売しているスマートグラスです。広角・高解像度のカメラを2台搭載し、より現実との融合館が高いAR体験ができます。
メガネ型デバイスの中では新しい機種で、まだまだ事例は少ないものの、すでにマレーシアの博物館に導入されはじめています。
広角・高解像度のカメラを2台搭載しており、没入感の高いARを体験できるとのこと。開発者には専用の「am glass SDK」が用意されており、基本的な各種認識機能やSLAM機能の開発環境も用意されているようです。
am glass:重さ約95g・解像度1920×1080・視野角度52度
⑨GoogleのARグラス
2012年には「Google Glass」が一般向けに発表され、大きな話題を呼びました。
しかし、実際に使ってみると「役に立たない」「見た目に違和感がある」というコメントが殺到し、2015年1月に販売終了してしまったのです。
その後、Google Glassは2017年にビジネス利用に特化したエンタープライズ・エディションとして復活したものの、一般市場向けのARグラスの発売については息をひそめた状態が続いています。
しかし、AR業界ではGoogleが完全にARグラスを諦めた訳ではないという見方もされています。
実際にGoogleは2022年3月に、ARグラスの性能を改善するためのディスプレイの技術を有するスタートアップを買収しており、今後の動向にも注目したいところです。
⑩AppleのARグラス「Vision Pro」
2023年6月、ついにAppleのARグラス「Vision Pro」が発表されました。日本での発売は2024年末からです。楽しみですね!詳細は以下の記事でも説明していますが、これまで市場に投入されてきたどのデバイスよりも高性能なスペックになると予想されています。直感的な操作ができる新しいUIUX、高いインタラクティブ性やリアルタイム性など、様々な新体験が人類を待っています。
AppleはARグラスに関する特許を数多く取得している
それもそのはず、AppleはARグラスを発売するにあたって、メガネ型のウェアラブルデバイスに関する特許をたくさん取得してきました。
- 視覚矯正
- 外部センサー無しで装着者の向きや動きを検知する
- メガネのつる部分を交換することで機能を使い分ける
- 心拍数や脳波測定機能
- 装着者だけがみえるプライバシースクリーン
など
これらが2024年の発売においてどれだけ反映されるかはまだ分かりませんが、いずれもARグラス開発に関係する技術ばかりです。もし全部反映されたら、かなりハイスペックな夢のあるARデバイスとなりそうです。
ARグラスの選び方|4つのチェックポイント
上記のように、市場にはすでに多くのARグラスが投入されており、選び方が難解です。ここからは、4つの項目に分けてARグラスの選び方を解説していきます。
- 視野角
- デザイン
- 重量
- バッテリー稼働時間
ポイント①視野角(FOV)
ARグラスを選ぶ際に重要になるポイントとして、まず「視野角」があります。視野角はFOV(Field of View)と表記されることもあります。
普段着用するようなメガネと異なり、ARグラスは装着した向こう側の全てがARの世界になるわけではなく、グラスの中に内蔵されたディスプレイの視野角によって体験できる広さ・幅が異なってきます。これはAR体験において非常に大きな差分となります。
以下は、人間工学における視野角の限界を示した図ですが、当然、視野角が広くなるほど人間の本来の目の視野角と差分がなくなるため、より現実味が高まります。
ARグラスを選ぶ時には視野角(FOV)の広さは一つの指標としてください。ただ、視野角だけで選ぶと他の重要な要素が抜け落ちてしまうため、他の主要なチェックポイントも確認することが重要です。
ポイント②デザイン
業務や家のほか、外でも使う予定ならデザイン性を最重要視しましょう。ヘッドセットのようなグラスを街中で使うには、違和感があります。サングラスのようなARグラスもありますが、機能性が豊富になるほど搭載されるコンピューターは大きくなるので、デザインを優先すると機能が劣ってしまう傾向にあります。デザインと機能性は常にトレードオフになる関係性にあります。
ポイント③重量
ARグラスやスマートグラスは、頭と鼻に装着する性質上、重量を確認してください。グラスが軽量になるほど機能性もシンプルになる傾向がありますが、長時間使用する際には重さを感じないものが良いでしょう。
ポイント④バッテリー稼働時間
当然、バッテリー稼働時間は長ければ長いほど良いです。そしてグラスのサイズが大きいほど大容量バッテリーの搭載が可能ですが、重くなります。ストリーミング配信の動画視聴やビデオ通話はバッテリーを大きく消費しますが、マニュアルや文書確認などはバッテリー消費量が少なくて済むため、使用用途でARグラスを選定する必要があります。
ARグラスの利用シーン|具体的な活用例
紹介した通り多数あるARグラスですが、利用シーンに応じて最適なデバイスが選定され、すでにさまざまなシーンで活用されています。ここではARグラスの具体的な活用例について解説します。
①建築現場
建築現場では、ARグラスに点検箇所や設計図を映し出して活用しています。ARを使うと、設計図などの情報を現場に重ねて表示できるため、より正確に情報を把握できるというメリットがあります。建築現場では、資材を運ぶ作業などには両手を使います。ARグラスは、両手が自由な状態でARを利用できるため、作業しながら設計図の確認が可能です。ARグラスによって、設計図の目視確認と現場作業とを繰り返す必要がなくなり、安全に効率的な作業ができます。
②仕分けやピッキング
大量の荷物の仕分けや、広大な倉庫でのピッキング作業などにも、ARグラスが活用されています。ピッキングしたい商品がどこにあるのか、運ばれてきた商品をどこに搬入すべきかなど、ARを使うと瞬時に把握できます。倉庫業大手のDHLでは、スマートグラスのAR機能を使ってピッキング業務を効率的するプロジェクトに取り組みました。
スマートグラスに表示されるAR映像を通じて作業員に指示を出すことで、ピッキング作業の迅速化とミスの削減を実現しています。常に両手を使って作業できることで、ピッキング作業効率を従来比較の25%も向上できたそうです。出荷指示や搬入場所を紙で確認するのは、時間がかかるうえに、内容を読み間違える可能性もゼロではありません。ARグラスを使えば、これらの情報も視覚的に把握できるため、ミスも減らせます。
③遠隔地からのサポート
現場にいる人がARグラスを装着して、その映像を遠隔地にいる指導者と共有してサポートを受けるという活用方法もあります。ARグラスに指示内容を表示させて、音声と併せて指示ができるため、遠隔地にいても直接的な指示が出せます。新型コロナウイルス感染症の広がりにより、同じ空間に多くの人が集まりにくい状況になりました。また、熟練の作業員不足という問題もあります。ARグラスによる遠隔地サポートは、これらの問題を解決できると期待されています。
④ゲームなどのエンターテインメント
ARグラスは、ゲームなどのエンターテインメントにも使われます。ゲームの映像をARグラスに表示させると、スマートフォンやタブレットでゲームをするよりも、よりリアルな感覚が味わえると話題です。ARグラスで映像を見ながら両手でコントローラーを操作できれば、実装できるゲームの幅が広がる期待もあります。また、物理的な装置の作成が難しい、脱出ゲームなどにも応用されています。
商業スペース向けARグラスゲーム「Giant Pizza Tower」
株式会社OnePlanetが提供するARグラスを活用したゲームをご紹介します。こちらは商業施設や自宅など空間を認識し、天井に穴を開けて、天井から落ちてくるピザをキャッチして遊ぶという空間を生かしたARグラスならではのゲームです。ピザ以外のオブジェクトを降らせることも可能なので、ブランドの世界観を消費者に楽しんでもらう新感覚のアプリケーションとしての利用を見込んでいます。
現実世界と映像がリンクするため、目の前にピザが降ってくるような感覚になれるゲームです。ARグラスの特徴を存分に楽しめるでしょう。
イベント会場向けARグラスアプリケーション「ML Music Live」
同じく、こちらもOnePlanetが提供するARグラスを活用した空間音響アプリケーション「ML Music Live」です。
ARグラスのコンピューターが利用者のいる空間を個別に認識して空間をメッシュデータにし、音に合わせて空間が変化するという体験をすることができます。従来のDJやVJとはまた違い、イベント会場などでこれまでと違った全く新しいユーザー体験を提供できるでしょう。こちらの音に合わせて空間を変化させるというアプリケーションは、その斬新性が話題を集めて日経新聞でも取り上げられました。
⑤医療現場
医療現場では、遠隔地からの診療にARグラスが活用されています。先述のとおり、ARグラスを使用すると遠隔地から現場への指示が、より正確に伝えられます。そのため、在宅患者のもとへ看護師が訪問して、遠隔地から医師が診療する在宅医療が可能です。また、ARグラスは両手が自由になるため、手術のシミュレーションなどにも役立つでしょう。患者のCT画像を利用して、本番同様のシミュレーションもできます。
⑥教育現場
ARグラスは、教育現場での活用も期待されています。例えば、どの場所にどの星があるのかわかるアプリなど、天気が悪くても子供が楽しく学習できるARグラスが提供されています。教科書や図鑑だけではわかりにくいものも、ARグラスを使うと、目の前に実物が存在しているようにみえます。ARグラスを教育現場に導入すれば、子どもたちがより好奇心を刺激しながら飽きずに学習できるようになるでしょう。
まとめ
ARグラスは”ポストスマートフォン”と呼ばれていますが、AppleがARグラスを発表したことで、現実になる日が刻一刻と近づいています。私たちOnePlanetはスマートフォンとARグラスの両方を活用し、AR技術に専門特化してさまざまなソリューションを展開しており、ご相談を賜っております。
特にいま注目が集まるAppleのARグラス「Vision Pro」や「Magic Leap 2」などの最新のデバイスについても高い専門性を有しています。国内ではまだ新しいARを活用したサービスの展開にご興味がありましたら、お気軽にご相談くださいませ。