AppleのARデバイスの発売など、ARの影響力は日増しに高まっています。 本記事は、試着や店頭施策、EC連動、Instagramなど、アパレル業界におけるAR活用のトレンドと、アパレル×ARの最新事例やポイントを徹底解説した内容になっています。
全体像を網羅するために長い記事になってしまいましたが、気になるパートがあれば目次から遷移してください。参考にしていただければ幸いです。
目次
アパレル業界におけるAR活用の歴史
2016年頃からさまざまな業界での活用が目立ってきたARですが、アパレル業界では早い段階から店頭でARを活用しようとする動きが見られました。 店頭で服を試着する際、実際に着て鏡の前に立ってみたり、試着室を利用したりといった経験は誰にでもあると思います。 しかし、「試着の際に服を着たり脱いだりするのがめんどくさい」と感じたことはありませんか?
手荷物があった場合は着替える際にどこかに置かなければならないし、色違いを楽しむ際に何度も着替えなければならず、手間がかかりますよね。試着室に入りたくても混雑していて数が足りずに順番待ちが発生し、試着まで時間がかかってしまうこともあります。 また着物やドレスなど、試着に時間がかかる服は試着できる数も限られるうえ、店員の接客の負担も大きいという問題点があったのです。
こうした問題を「試着効率をアップする」ことで解決する手段として、早い段階からARが注目されていました。
店頭でバーチャル試着体験ができるARが登場(2010年代)
アパレル業界でARを活用するにあたり、まず注目されたのは「バーチャル試着ができるAR」です。2010年代前半は、店頭でモニター・人を認識するカメラやセンサー・タブレットなどを設置し、着せ替えのシミュレーションをおこなうARが数多く開発されていました。
2012年、ユニクロの海外店で店頭で着せ替えサイネージを導入し話題となりました。「UNIQLO MAGIC MIRROR」と呼ばれたこのサービスは、ダウンジャケットのカラーバリエーションをデジタルで気軽に楽しめるサービスです。 ダウンジャケットを着て店頭に設置されたミラーモニターの前に立ち、設置されているタブレットでカラーを選択すると、ミラーモニターに映ったダウンジャケットの色が変わる、というものです。
一度着てしまえば、あとはいちいち着替えなくてもタブレット操作だけでカラーバリエーションを楽しめる便利さと目新しさが注目されました。 ただ、当時のARには、服のシワや質感をリアルに表現したり、人の動きに正確に追従させたりするのが技術的に難しいという問題がありました。また、スマートフォンのARアプリも少しずつ出始めてはいたものの、端末のセンサーやカメラの精度が今ほど良くなかったため、バーチャル試着というよりは写真に絵を合わせにいくような、違和感が残るものでした。 店頭での試着モニターも、設備導入費がかかるので気軽に導入することもできず、爆発的な普及には至らなかったという経緯があります。
それでもバーチャル試着の精度は、モニター&センサーの精度向上や、CGの描写技術の進化に伴い向上していきました。
2017年頃には、写真をもとに2.5次元データを作成する技術も現れました。ドレスの揺れ具合など、かなりリアルに再現されています。表現技術の進歩が伺えますね。
スマホを使った試着ARの登場(2020〜)
2020年代になると店頭のサイネージ等ではなく、スマホを使ったARによる試着体験が一般化してきました。
一例として、株式会社ニトリが提供するインテリア雑貨専門店「デコホーム」では、エプロンが試着できるARを制作し、SNSでのプロモーションに加えて店頭でのデジタル試着としてもARを活用しています。
ARはデコホームの公式Instagramアカウントを通じて提供されており、まず4つのデザインから好きなものを選ぶ画面から始まり、そのまま選んだデザインを試着まで体験できるARになっています。デザイン選びから試着まで1つのARでシームレスに完結する仕組みになっています。 また、ARはInstagram上でのプロモーションだけでなくデコホーム店頭でも展開されており、POPに印刷されたQRコードからダイレクトにAR体験が立ち上がり、非接触のままでデザイン確認や商品の試着体験ができる仕掛けにもなっています。
店頭でARによる試着体験を提供することは試着スペースの圧縮など限られた面積を有効化するだけでなく、非接触による安心安全までも同時に提供できるということでしょう。 リアル店舗での顧客体験をARによってデジタル化をし、より快適な店舗体験の提供を目指す事例としてご紹介させていただきました。
参考:お家で楽しくショッピング!OnePlanet、株式会社ニトリが展開する「デコホーム」の公式Instagramアカウントに自宅でもエプロンの試着ができるARを提供
参考:Snapchatが提供する「3Dボディトラッキング」
AR試着の分野で世界的に先行するSnapchatは、もう3Dモデルを体に着用させる技術も着々と実用化を進めています。
snapの3D Body Trackingまじで精度高いな…pic.twitter.com/Gfd2kxFczX
— IVAN@AR × Marketing (@van_eng622) September 16, 2021
従来の試着ARは「顔認識」の技術を活用してアクセサリーや帽子などを表示させたり、顔の下のあたりにネックレスや先ほどのエプロンを表示させたりといった、顔周りの認識技術を活用できるアイテムが中心でした。 これがSnapchatのAR技術ではスマホで体にカメラをかざすと3Dモデルを着用させられるようになってきています。 こういった最先端のテクノロジーが実用化すればもはや店舗でざわざわ試着する必要性はますます無くなり、ECサイトとの組み合わせで自宅でも試着〜購入までのシームレスなショッピング体験が完結するようになるでしょう。
現在のアパレル業界におけるARの役割
上記にも記載したように2010年代の後半から徐々にARの技術や表現力は進化し、2020年以降ではスマートフォンで気軽にARを体験できるようになりました。アパレル業界ではeコマース市場が拡大し、「店舗に行かなくてもストレスなく試着できる仕組み」に注目が集まりました。その結果、ARをうまく利用したアプリが数多く開発されています。
同時に、店舗は「ただ服を買う場所」としてではなく「店舗でしかできない体験を提供する」施設へシフトチェンジしています。現実世界に驚きや発見を加えるツールとして、ARはとても相性が良い技術といえるでしょう。
- オンラインショップ・Eコマース×AR
- 実店舗・イベント×AR
- ユーザーによるSNS投稿・拡散効果
- メタバースへの適応
それぞれ単体のAR施策とは限らず、複合させたAR体験を実現しているケースもあります。
役割①オンラインショップ・Eコマース×AR
ARは、アパレル系のオンラインショップやEコマースとの相性がとても良いです。スマートフォンで楽しめるARの精度が向上し、自宅に居ながらリアルな試着体験ができるようになりました。ARによる試着体験により、サイズ違いやイメージ違いによるミスマッチ率を下げる効果が期待できます。 最近では専用アプリ不要・ブラウザベースでAR体験ができる技術も出てきたため、試着体験とオンラインショップがよりシームレスになっていくと予想されます。
参考:米・ShipifyのARによるEコマースの加速
簡単にECサイトの立ち上げができるサービス「Shopify」では、ストアを開設する事業者に向けてARを早くから提供しています。以下のツイートでは驚異的な数値を提示しており、ARとEコマースの関係性は今後も加速していくことを示しています。
3D/ARコンテンツを活用した製品のインタラクションは、AR/3Dを含まない製品よりも94%高いコンバージョン率を示した
役割②実店舗・イベント×AR
アパレルの実店舗やイベントなど、オフラインでARを使ったプロモーションやイベントの事例も増えています。ARを用いたコミュニケーションを通じてブランドのファンを生み出すとともに、来店することでしか得られない特別な体験を演出できるのです。 従来の試着効率アップのARに留まらない、ブランドとファンのコミュニケーションツールとしてARを活用する事例が増えていると言えます。
参考:Adidas Londonによる店舗内の新しいカスタマーエクスペリエンス
Adidas Londonによる店舗内の新しいカスタマーエクスペリエンスを創造する目的で作られたARを紹介します。 3種のアート作品が実際の店内に展示されており、その作品に向けてスマホ(Instagramのストーリーズ内カメラ)をかざすと初めてARが起動する=来店した人にしか楽しめないARを提供しています。 Adidas Londonの実際の公式Instagramアカウントで提供されているARを起動すると、下のような画面が立ち上がります。
「アディダスと共に、未来へ行こう」「ストア内で3つのAR体験を探そう」
上のように表示され、ストアの中でAR体験を探すように促されます。そして、右にスワイプすると以下のようにアディダスのアイテムをモチーフにした作品が表示されます。
実際に店舗でその作品にカメラをかざすことで演出が起きるという仕掛けになっており、お店にいない人は体験を楽しむことができません。このようにARを活用して「場所の価値を高める」というアプローチには大きな将来性があります。近年ではAR制作会社に頼らず、自分たちで写真や動画をアップロードするだけで簡単に店舗限定のARコンテンツを制作できる「プラネター」というツールも登場しました。ARを活用したストア体験の設計にご興味がある方はぜひチェックしてみてください。
役割③ユーザーによるSNS投稿・拡散効果
SNSでは、ユーザーが「おもしろい」「楽しい」と感じた投稿は爆速的に拡散されていきます。アパレル業界においては、拡散されればその分ブランドの認知度向上も期待できます。SNSによるバズを狙ったプロモーションにおいて、最新技術であるARとの組み合わせは相性が良いといえるでしょう。
参考:世界的サーフブランド「Billabong」のARによるSNSプロモーション
こちらは世界的サーフブランド「Billabong」のARによるSNSプロモーションの事例です。プロサーファー、松田詩野選手と共に2021シーズンのアイテムで使用される柄を生かしたARをソーシャルで展開し、SNSで大きな話題を集めることに成功しました。
役割④メタバースへの適応
ARによるバーチャルなアイテムの試着機能は、昨今話題の「メタバース」とも密接に繋がります。 世界でも最先端をいくメタバース時代のスニーカーブランド「RTFKT(アーティファクト)」は物理的なスニーカーは作らず、バーチャルだけでアイテムを展開する未来的なブランドです。
2021年の5月に世界トップとも言えるアメリカのベンチャーキャピタル「アンドリーセンホロウィッツ」をリード投資家として800万ドルの資金調達し、さらにそこからわずか半年後の2021年12月、同社はなんとあの「Nike(ナイキ)」によって買収されました。このニュースから、Nikeは本気でメタバース時代にも最高のスニーカーブランドのポジションを取るつもりだと考えられます。 そして、RTFKTは単に3Dモデルでスニーカーを制作しているだけでなく、以下のように現実世界に表示させる未来を見据えていることがわかります。こういったバーチャルなアイテムを現実世界に表示させたり、実際に人々の足に履かせたりするためには「AR技術」が必須となります。
https://twitter.com/can_murakami/status/1445289277525422083
最先端のアパレル業界においてARが担う役割には、こうした「メタバースへの適応」というテーマも挙げられるでしょう。小売業界におけるメタバースについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
世界でも最先端を行く、H&MのAR活用
H&Mは、最も早いタイミングでARへのチャレンジを続けているブランドです。以下はH&Mの取り組みを紹介します。
SIMONE ROCHA H&Mで利用されたARブック
こちらは配布された本をQRコードで読み取ると、ダンサーやモデルが動作するARになります。このARは2021年3月に発表されていますが、当時新型コロナウイルスによるソーシャルディスタンスの必要性があり、その中でもクリエイティブな発信を行う為に、同社初となるデジタルイベントになりました。
Metaverse Design Story Collection ARフィルター
2022年メタバースからインスピレーションを得て、「Metaverse Design Story Collection」の発表に際して、ARフィルターを提供しました。
H&MoschinoのARファッション体験
ニューヨークで開催されたH&MとMoschinoのコラボレーションのグローバルローンチイベントでMagic Leap Oneの体験を紹介し、その後もアメリカとスウェーデンでいくつかのイベントを開催しました。空間に配置されたアクセサリーに”触れる”ことができたり、コレクションに関連する映像を見たりすることができました。ユーザーは仮想空間上で今までに経験したことのない体験を行えます。
ARグラス「Magic Leap」を活用したファッションショーを開催
2018年、ファストファッションブランド「H&M」が、ARグラス「Magic Leap 1」を使用したファッションショーを開催しました。イタリアのファッションブランド「Moschino」とのコラボコレクションで導入され、コンテンツ提供にはスウェーデンのARコンテンツ企業「Warpin Media」が協力しています。会場には全15台のMagic Leapが用意され、700名限定でランウェイでのファッションショーに引き続き体験できる流れとなっていました。 このARファッションショーにおけるH&Mの狙いは、最新のAR体験を提供することで話題性を高め、ブランドイメージの向上を高めることにありました。
事実、SNS上での評判が非常に良く、瞬く間に拡散されていったようです。 今回使用されたデバイス「Magic Leap 1」は、デバイス内に複数のカメラが内蔵されており、空間認識力に優れています。つまり、現実世界の室内状況をリアルタイムに認識しながらARを出現させるのが得意なデバイスなのです。 新型コロナウイルスの影響で非接触型の体験やコミュニケーションを重視する傾向にはあるものの、Magic Leapの高い空間認識力を活かしたARコンテンツは、今後も増えていくことが予想されます。
H&Mは2018年頃からARグラスを利用したファッションショーやプロモーションなどを行なっており、ARのビジネス活用事例として参考になりますのでご紹介します。
MagicLeap H&M × スターウォーズ
アメリカ発のMRグラスを提供する「Magic Leap」社が開発したARゴーグルを着用し、画面上のガイダンスに沿って操作しプリントする柄をカスタマイズすることができるプロモーションを発表しました。Magic Leap 1を着用し、画面上のガイダンスに沿って操作しプリントする柄をカスタマイズすることができる内容になります。
なぜARグラス?
ARグラスは、例えばファッションショーや店舗内空間でブランドの世界観を表現した空間体験ができるような使い方ができます。こちらは株式会社OnePlanetが提供する「音に合わせて空間を変化させる」、ARグラスを活用した「ML Music Live」という空間×音響アプリケーションです。動画を進めていくと、重低音が響くリズムに合わせて空間が動き出したり、エフェクトが出現してくる様子が分かります。
スマホのARでの試着体験やECサイトでのショッピングなど店舗の役割が自宅に移っていく中で、「お店でしか出来ない特別な体験」は人々のお出かけの際に店舗へ足を運んでもらうためにはますます重要になっていくでしょう。その需要に対して、このようにARグラスを活用したエンターテインメントが店舗へ導入されていくトレンドは加速していくと考えられます。
試着ARやEC連動型のAR事例 7選
ここからは、H&M以外も含めて、実際のアパレル業界でのARの活用事例を用途別に分けて紹介していきます。
アパレルとひとことでいっても、商品は服・靴・時計・アクセサリーなど多岐にわたります。共通しているのは、試着して気に入ったものをそのままネットショップで購入したり、SNSに拡散したりできる機能を持ったアプリが多いという点です。 さまざまなカテゴリで試着体験ができるスマートフォン向けARをピックアップしました。
- ECサイトに実寸大のバッグのARを埋め込んだ「Jill Stuart(ジルスチュアート)」
- GUCCHI公式アプリ
- スウェーデンのアパレルブランド「Chiquelle」
- アメリカのメガネブランド「Warby Parker」
- 韓国のアクセサリーメーカー「Lologem」
- 日本の時計サブスクリプションサービス「KARITOKE」
- メタバースと接続したデジタルアパレルブランド「XXXXTH」
事例①JILL STUARTのEC・展示会と連動したWeb AR
WebサイトとARの連動を考える時、アプリのインストールはどうしても障壁となりますが、TSIホールディングスは「Web AR」を活用することでシームレスなECサイトとARの接続を行いました。さらに、ECサイトへの組み込みに加えて、展示会やInstagramとの連動などARを多岐に渡り活用し、新しいユーザー体験の創出にチャレンジしています。
TSIホールディングス「時代を先取りするファッションエンターテインメント企業として」
https://planetar.jp/interview/h-Gd_HAf
事例②GUCCHI公式アプリ
言わずと知れたファッションハイブランドのGUCCHIが、公式アプリ内でARを導入しています。2019年、GUCCHIの公式アプリ内で高級スニーカー「エース」シリーズの試着サービスが開始されました。
画像引用元:GUCCHI MOBILE MARKET
足にぴったりフィットし、まるで実際に履いているような試着体験を楽しめます。現在ではスニーカーだけでなく、公式アプリ内で次のアイテムを試着できます。
- 時計
- スニーカー
- リップスティック
- アイウェア
- ハット
- 雑貨
- マスク
GUCCHIのアプリ内で、腕時計の試着をやってみました。
カメラを向けた瞬間に手首を認識し、時計の試着ができました。
手首をひっくり返してみても、きちんと時計のベルトが見えています。カラーバリエーションを手早く試着できるのが便利でした。 スニーカーの試着もやってみました。
はだしの状態でカメラを向けてみましたが、一瞬で足を認識して驚きました!模様までしっかり確認できます。アプリ内でカラーバリエーションや形のラインナップを選ぶことで、次々に試着できます。 あまり数は多くありませんが、雑貨の設置シミュレーションもできます。
試しに筆者の部屋にあったランタンと並べてみましたが、GUCCHIの独創的なデザインはパンチが効いています。なかなかの存在感がありそうです。ARでバーチャル試着させるグッズに合わせて、きちんとリアルタイムに空間を認識している精度に驚きました。一連を通して、スマートフォンで体験できるARのクオリティがかなり上がっていることを実感できます。
事例③スウェーデンのアパレルブランド「Chiquelle」
「Chiquelle(シケーレ)」のオンラインショップでは、自分のアバター(分身)を登場させ、着せ替え人形のように試着を楽しめるAR機能がついています。自分の全身をスマートフォンで映すのは難しく、一人で服の試着ARを楽しむのは現実的ではありません。 この問題を、アバターに着せて試着させるというアイディアで解決しています。スウェーデンではとても人気のこのアプリですが、日本でもダウンロードして楽しめます!筆者もやってみました。アプリをダウンロードしたら、まず自分のアバターを作ります。
チャットのような画面で国・身長・体重などを聞かれるので、どんどん答えていきます。骨格も選べますよ。 完成した筆者のアバターの原型がこちらです。
体型が妙にリアルで、ちょっと笑ってしまいました。クビレがなく、全体的に各パーツが大き目な筆者の体型を見事に再現しています。誰もがみんなモデルさんのような、すらっとした体型ではありませんもんね。 原型ができたら、肌の色・顔のパーツ・髪型など、さらに細かく設定していきます。
アバターが完成しました!
マネキンからさらにリアルになりました。 アバターを作った後、商品ページからバーチャル試着ができるようになります。商品ページで気になる商品を選んでみます。
今回はSALEになっている、黒の袖付きワンピースを選んでみました。普段こんな丈の短いワンピースは履かないので、かなり緊張します。バーチャル試着の結果がこちらです。
意外と悪くなさそうです!筆者はよくオシャレな友人から「骨格的にも隠すのではなく、ある程度出したほうがメリハリがついていいよ!」とアドバイスを受けます。勇気が出ずについ隠す服ばかり選んでしまうのですが、確かにある程度出したほうが、すっきり見えそうです。 店頭ではなかなか試そうと思わない商品を気軽に試せるのは、オンラインショッピングのバーチャル試着ならではのメリットですね。せっかくなので、体型隠しの定番のロングワンピースを試着してみました。まったく系統の異なる服ですが、どう見えるでしょうか。
これは絶対にやめておいたほうが良さそうですね。ずんぐりと見えてしまいます。ここまでリアルにはっきりと現実を突きつけられると、ネットで服を買うときにサイズで悩むことも減りそうです。 ARモードにすると、現実世界にアバターが登場します。
ARで表示されたアバターは実際よりも少し大きめですが、雰囲気をみるには十分です。工夫すればおもしろい写真も撮れそうです。 なお試着したアイテムは、気に入ったコーディネートをSNSや友人とシェアすることも可能です。客観的なアドバイスを求めやすいのも、バーチャル試着×オンラインショップの相性が良いポイントと言えるでしょう。
こうしたバーチャル試着が簡単にできると、ネットショップでよくあるサイズや色味の不安解消には大いに役立ちます。ショップ側としても、サイズが合わないことによる返品率の低減効果が見込めそうだと感じました。
事例④アメリカのメガネブランド「Warby Parker」
スマートフォンで体験できる試着ARには、カメラで映しやすい顔回りのアクセサリーやメガネなどが多いです。アメリカのメガネブランド「Warby Parker」では、iPhoneX以降に搭載されている顔面3Dマッピング機能を利用したメガネ試着サービスを開始しました。 アプリ上で試着したいメガネを選び、iPhoneのフロントカメラを起動して自分の顔を映すと、ARでメガネが登場します。顔の向きを変えたり傾けたりしても、ずれることなく追従するのでリアルなイメージを確認できます。この動きの精度の高さには驚きますね!
気に入ったメガネを、自分の顔の形や髪型などに合っているかどうかを客観的に確かめられるのは大きなメリットです。 試着して気に入ったメガネは、そのままオンラインショップで購入できます。 なお、この機能は最近のiPhone X以降の機種のFace IDで使われているTrueDepthカメラを用いています。現時点で対応しているのはiPhoneのみで、Androidは非対応となっています。
事例⑤韓国のアクセサリーメーカー「Lologem」
ピアスやイヤリングは顔に近いところに装着するので、サイズ感がとても重要なアクセサリーです。筆者自身もピアスを集めるのが好きで、ネットショッピングでもよく購入します。 しかし、いざ手元に届いてみると、イメージしてたよりも大きすぎて使いにくくてがっかり……ということもしばしばあります。そんな悩みを解決してくれるのが、「Lologem」が開発したイヤリング試着ARアプリです。 Lologemは、2017年からAR技術を基軸にファッションの課題を解決するシステム開発に注力してきた経緯があり、人の顔を3Dで認識してイヤリングを試着できるアプリをリリースしました。
スマートフォンやタブレットのほか、タッチモニタータイプも開発されているようです。 デバイスのカメラに自分の顔を映し、気になるイヤリングを選ぶことで自動的に装着イメージを確認できます。このアプリ導入により、同社のイヤリングの売上は20%以上も向上しました。オンラインショッピングでの「サイズ感のミスマッチ」を解消することの重要性がうかがえる事例です。 なお、試着された商品のデータを収集し、今後の商品開発や販売戦略に活かすこともできます。ARでのバーチャル試着は、eコマース市場が拡大してる現在におてい、顧客の興味関心やトレンドをよりリアルタイムに知れる重要なツールとも言えるでしょう。
事例⑥日本の時計サブスクリプションサービス「KARITOKE」
ブランド腕時計を月額制でレンタルできるサブスクリプションサービス「KARITOKE」が、AR試着サービスを開始しています。 KARITOKEのARは、腕時計型の専用メジャーを手首に巻いて使用します。専用アプリで気になる時計を選び、カメラを起動してメジャーをかざすことで試着体験ができます。メジャーを実際に巻いている感覚があるぶん、よりリアルな感覚で試着できそうです。
本日3月13日(金)新宿マルイ本館にて、KARITOKE STOREオープン!
— nanashi.inc (@NanashiInc) March 13, 2020
ネット商品も店舗で受取りが可能になり、更に便利になりました♬︎
1100種類の腕時計をバーチャル試着できる、KARITOKE・AR専用メジャーも本日より配布しております✨ pic.twitter.com/JCI5D0zhN3
専用メジャーはインターネット上での申し込みか、店頭での配布で数量限定となっています。メジャー入手に少し手間がかかりそうですが、サイズ感や装着感のミスマッチを防ぐためにはとても効果的な手法といえそうです。
事例⑦デジタルファッションブランド「XXXXTH」のメタバース対応
こちらの事例はNFTでデジタルファッションアイテムを提供するファッションブランド「XXXXTH(フォックス)」の事例です。こちらのブランドは、これまで紹介してきた事例とは逆に物理的なアイテムは販売しておらずデジタルだけでアイテムを展開するメタバース時代の未来的なブランドです。
同社はスマホやPCの画面内でしか見ることができなかったスニーカーやタトゥー、ネックレスなどのNFT商品をAR技術によって現実世界でも物理的に装着できるようにして、話題を集めました。
デジタルだけで提供されるアイテムのAR化や、物理的なアイテムの3D化およびNFT対応までフォローする、ARに特化したスタートアップである株式会社OnePlanetが技術提供をした最先端の事例となっております。
店舗・イベントでのプロモーションAR事例 7選
eコマース市場が拡大している今、店舗は商品を見る場所・探す場所から、エンタメ化・体験型ショールームという考え方へシフトしつつあります。この動向はアパレル業界では特に顕著で、店舗やイベントにARを導入している事例が増えています。 商品購入を目的とするだけではなく、ブランドメッセージやリアルでしかできない「体験」を通じてファンを増やすことに注力していると言えるでしょう。
- ZARAが世界120か国の店舗で期間限定ARファッションショーを展開
- Foot Locker×NikeがARを使ったイベント「The Hunt」を実施
- オンワード樫山がARファッションショー「PORTAL BY JOSEPH」を実施
- H&MがARグラスを活用したファッションショーを開催
- 中国のファッションブランド「HIPANDA」がARで店舗をエンターテインメント化
- 渋谷パルコ内の「calif」で3Dバーチャルフィッティング「FXMirror」を導入
- 渋谷パルコ内「JINS」でメガネをかけたままメガネ試着ができるサービスを開始
事例①ZARAが世界120か国の店舗で期間限定ARファッションショーを展開
2018年、ファッションブランド「ZARA」が2週間限定でAR体験を実施しました。対象店舗の店頭オブジェ・ディスプレイ・オンラインストアで商品を購入した際に送られてくる専用ボックスのARコードにスマートフォンのカメラをかざすと、2018年春夏コレクションを身に付けたモデルが登場。まるで本当にそこで歩き回ったり話したりしているかのような体験ができるというイベントです。
SNSでのシェアがしやすいよう、スクリーンショットや動画が撮影できる機能も搭載していました。また、モデルが着用している商品は、公式サイトで購入できるようになっていました。ARというデジタル技術を導入することで、「新しいことに挑戦し続ける」というブランドメッセージを体現した例ですね。 従来とは違う取り組みを提供することで、ブランドファンの好奇心をくすぐることが狙いです。また店舗のARで見つけた新作の商品をオンラインで購入できるようにするなど、オンライン×オフラインの掛け合わせに挑戦した事例とも言えます。
事例②Foot Locker×NikeがARを使ったイベント「The Hunt」を実施
2018年、シューズを中心に扱うアメリカのアパレルメーカー「Foot Locker」が、ARアプリを使用したイベント「The Hunt」を実施しました。「Nike」の新しいエアジョーダンのプロモーションイベントで、専用アプリに表示されるヒントを参考にしながら、街中のあちこちに隠されたARマーカーをハンティングしていくというものです。 ハンティングが進むにつれて新商品の全貌が明らかになり、最後までたどり着いた人だけが新作のエアジョーダンを購入できるという特典がありました。
多くの参加者がARハンティングに挑戦し、新作のエアジョーダンはイベント開始からわずか2時間程度で完売したそうです。 特別な方法で手に入れたモノって、思い入れがありますよね。そして思い入れのあるモノは、SNSなどで広めたくなるものです。実際、このイベントで新作のエアジョーダンを手に入れた人は、喜びと興奮を写真と共にSNSに投稿する人がたくさんいて、大きな話題を呼びました。 ただ商品を購入するだけではなく、新商品を手に入れるためのARハンティングを通して、ワクワク・ドキドキ体験を提供したイベントの事例と言えます。
事例③オンワード樫山がARファッションショー「PORTAL BY JOSEPH」を実施
2019年、オンワード樫山が手掛けるアパレルブランド「JOSEPH GINZA SIX店」「JOSEPH 六本木ミッドタウン店」の2店舗において、ARを駆使したバーチャルファッションショーが体験できるイベントが開催されました。 来店した人がイベント会場内のポスターにスマートフォンやタブレットのカメラをかざすと、ARコンテンツが起動します。
まるでポスターから飛び出してくるかのようにランウェイが登場し、実店舗ではまだ販売されていない秋冬コレクションを先取りしたARファッションショーを楽しめる、というイベントでした。 ARコンテンツを導入することで、店員とお客さんとの会話が生まれたり、ブランドへの関心が高まったりといった効果を引き出した事例です。
https://twitter.com/k_programming/status/1167639173034938369?s=20
事例④中国のファッションブランド「HIPANDA」がARで店舗をエンターテインメント化
2019年、中国のストリートファッションブランド「HIPANDA」が、日本の表参道に「HIPANDA OMOTESANDO FLAGSHIP SHOP」をオープンしました。ブランドの旗本店となるこの店舗には、ブランドの世界観をARで楽しめる仕掛けがたくさん施されています。 ショップのデザインを務めたインテリアデザイナー「グエナエル・ニコラ」氏は、店舗のコンセプトを「お化け屋敷×パンダ屋敷」と設定しました。リアル店舗にARを使ってエンターテインメント性をもたせることで、来店すること自体を楽しめるようデザインしたのです。 上記の動画を見ると、HIPANDA OMOTESANDO FLAGSHIP SHOPの「店舗の体験コンテンツの充実度」はアパレルショップという枠を飛び越えて、エンターテイメント施設と呼べるようなレベルに到達していることがわかるでしょう。
スマートフォンで店頭の外壁に設置されたオブジェクトをかざすと、シンボルキャラクターのパンダが花びらと共にダイナミックに飛び出してきます。実は外壁だけでなく、店内のありとあらゆるところにARの仕掛けが施されています。スマートフォンやタブレットを持ちながらARを楽しんでいる様子がうかがえますね。
#HIPANDA のAR体験 pic.twitter.com/wT8uUMptr1
— Nobi Hayashi 林信行 (@nobi) September 15, 2019
なお、OSのバージョンなどの都合で手持ちのスマートフォンでAR体験ができない場合は、店頭でipadを借りることもできます。豊かなモノよりも、体験やコトを重視する傾向にある若者にとって、ショッピングに新たな楽しみ方を提供することはブランドのファンづくりの上でも重要です。 またパンダを探すことで店内を隅々まで見て回り、滞在時間が長くなるほか、顧客満足度が向上する効果も期待できます。
このHIPANDAの事例は、店舗でブランドの世界観を表現するためにARを導入し、エンターテインメント化させることに成功したモデルケースと言えるでしょう。 ECサイトが充実しARでアイテムの試着ができるような社会が到来し、「単に商品を買うだけであればネットショップで十分、わざわざ実店舗に出向くのであれば体験を楽しみたい 」と考える若者たちに支持されています。 この事例のように、ARは店舗のエンタメ化という文脈でもコマースに大きな影響をもたらします。
事例⑤渋谷パルコ内の「calif」で3Dバーチャルフィッティング「FXMirror」を導入
2019年、渋谷パルコが約3年越しにリニューアルオープンしました。リアルとバーチャルが融合した「次世代デジタルファッションビル」を掲げており、館内のいたるところでデジタル技術を発見できます。渋谷パルコ内のアパレルショップ「califSHIBUYA」は、ミラー型のモニター内で自分のアバターを作成し、バーチャルに着せ替えを楽しめるバーチャルフィッティングミラー「FXMirror」を導入しました。 AR技術がさらに進化したMR技術とトラッキング技術をベースにしており、体型・表情・体の向き・動きなどをリアルタイムでアバターに反映できます。
フィッティングルームでいちいち着替える手間が不要で、気になるアイテムの着用イメージを効率よく確認できます。バーチャル着せ替えなので、限定商品や在庫切れなど、店頭に実物がない商品を試着することができるのも便利です。 なお、試着したデータは、QRコードで自分のスマートフォンへ送信し、あとでオンラインショップで購入することが可能です。オンラインショップとオフラインの融合が図られた、新しい店舗形態のモデルケースとなりそうです。こうした技術がもっと広がっていくことで、店頭での顧客体験やコミュニケーションのあり方はさらに変化を遂げていくでしょう。
事例⑥渋谷パルコ内「JINS」でメガネをかけたままメガネ試着ができるサービスを開始
FXMirrorに続いて、渋谷パルコ内でデジタル試着ができるサービスです。メガネショップ「JINS」では、メガネをかけたままメガネが試着できるモニター「MEGANE on MEGANE(メガネオンメガネ )」を導入しています。 まずはメガネをかけた状態でモニタの前に立ち、試着したいメガネを指定の位置に置いて、付属しているタグのQRコードをスキャンします。すると、モニタ内の自分の顔からメガネが消え、3Dでバーチャル試着ができるようになるのです!これにより、視力を保ったままメガネの試着ができるようになるという大きなメリットがあります。「メガネを試着したいのに見えない……」という問題を解決できるようになりました。
さらに、試着したメガネをAIが似合い度判定してくれる機能がついています。ARとAI、最新技術が組み合わさることで、デジタルを使った施策はさらに広がっていくことでしょう。元々JINSは、スマートフォンでのAR試着サービスを配信したり、AIによる似合い度判定を積極的に導入したりと、テクノロジーによる新しい購買体験をいち早く導入してきました。ゲーム感覚で試着を楽しめるサービスが充実しているのは、似合わせが重視なメガネメーカーならではと言えそうですね。
事例⑦ARファッションショー「Season」
こちらはOnePlanetが提供するARファッションショーを開催できるサービス「Season」の事例です。色のないショールームとマネキンが動き出し、自宅にいながらブランドのファッションショーを観覧しているような疑似体験を味わうことができます。
ARグラスで体験をすると、まるで目の前で本当にファッションショーが行われているような体験ができるため、ユーザーのスマホ端末向けだけでなく、店舗にARグラスと共に設置するような活用方法も良いでしょう。
アパレル・ファッション業界のARフィルター活用事例 4選
アパレル・ファッション業界ではInstagramのARフィルターも積極的に活用されており、代表的な活用事例を紹介します。
事例①ファッションブランド「Dior」|試着体験を提供
ファッションブランドDiorは、サングラスとヘッドバンドの試着体験をインスタグラムのARエフェクトで提供した事例です。商品の試着だけでなく、フォトジェニックな演出をすることで高い拡散性を発揮しました。提供したエフェクトは260万以上のインプレッションがあり、フォロワーの獲得にも効果がありました。
事例②ファッションブランド「Dior」|ARクリエーターとコラボし、ブランドの発信に活用
ARクリエーターとコラボによるメイクアップエフェクトの事例です。
世界観の近いアーティストとコラボすることによって、ブランドの発信の強化や新しいファン層へのリーチが期待できます。
事例③ファッションブランド「Carlings」|ARで着せ替えが出来るデジタルTシャツを販売開始
ファッションプランドCarlingsはSNSだけにメッセージが表示されるTシャツの販売を開始した事例です。専用のTシャツを専用のフィルターでかざすと、柄とメッセージが出るような演出になっています。現在20種類の柄が配信されて、ユーザーは好みのものを選んでインスタグラムに投稿することができます。ユニークな発想で、企業のブランディングに成功した事例になります。
事例④ファッションブランド「Moncler」|店舗集客にARを活用したキャンペーンを実施
こちらはMonclerの新店舗の開店に合わせて、記念エフェクトを配信した事例です。高い拡散性をもつARフィルターはSNSキャンペーンとの相性がとても高いです。また、フィルターは永続的に残るので、インスタグラムアカウントの資産になります。
まとめ
AR技術により、アパレル業界ではオンライン・実店舗ともに大きな変化を遂げています。 オンラインでは、リアルな試着体験による購入後のミスマッチ率を低減させ、満足度の高い買い物を実現できるようになりつつあります。 実店舗では、店頭で大量に商品を並べたり、その都度衣替えをしたりといったモノに頼った店舗施策から、「体験」をベースとした施設のエンターテインメント化へとシフトしていくでしょう。
また、記事の中で登場した「メタバースへの対応」といったテーマは非常に専門性が高く、高度なAR技術に加えてNFTと呼ばれる別のテクノロジーまで扱えるパートナー企業が必要となります。 「ARマーケティングラボ」を運営するOnePlanetでは、アパレル業界でも多くのクライアントへAR技術を提供してきました。ARを活用したSNSプロモーションやブランディング、店舗での新しいユーザーエクスペリエンスの導入、ARグラスやメタバースへの対応など、ARを切り口にさまざまなご支援ができます。
ARのビジネス活用を検討していましたら、お気軽にご相談ください。