SnapのARハードウェア「Spectacles 3」開発チーム責任者インタビューからの考察:AR(拡張現実)の未来とは

この記事は海外メディア「IndianExpress.com」に掲載された、Snapのハードウェア「Spectacles 3」の責任者へのインタビュー記事を参考に、スマートグラスとAR(拡張現実)の未来について考察した記事です。

この記事でわかること
  • Snapが開発しているARグラス「Spectacles 3」はファッション性と機能性を兼ね備えたハードウェアなのか
  • 開発チームは「深度マップ」と呼ばれる3D空間をデータ化する技術に挑戦している
  • SnapはそこまでしてARに投資をする理由はARグラスがスマートフォンの次のデバイスと呼ばれるからである
  • Snap以外にもARグラスの市場を狙うプレイヤーは多数おり、GAFAMの動向もウォッチしておく必要がある

 

Snapの秘密のハードウェアユニットSnapLabとは

Snapのハードウェア「Spectacles」の開発を担うSnapの秘密のハードウェアユニット「SnapLab」。

このチームを率いるのは2018年にSnapのハードウェア部門の製品設計のディレクターとしてSnap Incに入社し、ハードウェア開発の責任者を務めているSteen Strandです。

彼の仕事は、テクノロジーの世界で最も挑戦的であり刺激的な仕事の1つと言えるでしょう。

彼はチームとともに、拡張現実を備えた新ジャンルの製品である「ARグラス」を中心とした新しいエクスペリエンスの創出を任されています。

同社の最新のスマートグラスである「Spectacles 3」には2台の高解像度カメラが搭載されており、それらを介して3Dビデオと写真を撮影、キャプチャしたショットにAR効果を追加できます。

日本での販売については、欧州の有名百貨店でデジタルガジェットのセレクトショップを展開するSmartech(スマーテック)により阪急メンズ東京(有楽町)と阪急百貨店(大阪・梅田)の2店舗で販売されており、価格は約5万円で販売されているようです。

Steen Strand氏によると、「Spectacles 3はファッションアクセサリー、ARグラスとしての機能の両方がこの市場で成功するためには非常に重要であると考えている」と語っています。

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Image Credit:Snap Inc

ファッション性についてはプラスチック製の以前の2つのバージョンとは異なりSpectacles 3ガラスは金属製であり、モダンであるだけでなく高級感があります。

SnapのARグラスのファッション性へのこだわりとしては、過去にラグジュアリーブランドのGucciとコラボした限定版を発売したことさえありました。それほどにこだわっているという意思が垣間見えます。

機能については3D画像とビデオをキャプチャする2台のHDカメラを搭載して、ユーザーが新しいAR効果を適用できるように常に構想されています。

ARグラスにおいてユーザーが満足できるような体験を提供するためにはどのような機能が必要となるのか、Steen Strand氏は以下のように述べています。

私たちは複数のプロトタイプに取り組みましたが、製品の焦点は常に深度”にありました。そのためこれらのプロトタイプにはすべて2台のカメラを搭載するように設計されていました。

 

深度(Depth)とは

ここで言う「深度」とはDepth(デプス)とも呼ばれ、要約すると「3次元空間の奥行きのデータ」のことです。

この深度を計測できるデバイスから取得した3D空間のキャプチャデータのことを「深度マップ」と呼びます。

深度マップを生成することがなぜそこまで重要かと言うと、その大きな理由の一つには“オクルージョン(Occlusion)”と呼ばれる技術があります。

オクルージョンとは、「デジタルオブジェクトを現実世界の物体の前後に正確に表示すること」を指します。

オクルージョンがないAR体験では、あらゆデジタルオブジェクトが人や物の手前に表示されるなど、表現にリアリティを欠如してしまいます。

オクルージョンを実現することで、デジタルオブジェクトを実際の光景と合成し、それが実際にその場にあるかのように感じさせることができるようになります。

オクルージョン技術を紹介する代表的な事例として有名なのが、以下のポケモンGOの動画です。この技術によって、デジタルオブジェクトがまさにそこにいるように感じられることが分かるかと思います。

 

 

Spectacles 3をリリースするまでのSnapの苦悩

そもそも2台のカメラをSpectaclesに追加するのは比較的簡単に見えるかもしれませんが、実際のプロセスははるかに複雑だったとのことです。

舞台裏では、ハードウェアとソフトウェアの両方で多くの複雑な処理があります。

2つのカメラから画像を取得し、それらを処理して“深度マップ”と呼ばれるものを作成するために必要となる多くの作業があるためです。これはかなり複雑なアルゴリズムです。

また、洗練された正確な深度マップを取得するためには、多数のステップがあります。

それが私たちが実際にこれらのビデオデータを取得して、そのデータをクラウドに転送し、そこで処理を行ってから、携帯電話に送り返す理由です。

Spectacles 3のようなスマートなアイウェアの設計においてSteen Strand氏は、

テクノロジーを兼ね備えたファッション性の高いアイウェアを実現する上での課題は、最終的には見栄えのよいフォームにする方法に関するものが多くを占めます。必要なすべてのものを小さく、軽く、快適にする必要があるのです。

日常的に身につけるARグラスは、スマートフォンとは大きく異なる課題を抱えていることが理解できます。

インタビュー:Snapのハードウェアヘッド、Spectacles 3、拡張現実の未来

Image Credit:Snap

すべての構成要素や回路をARグラスの中の小さなスペースに収めると、(発熱して熱くなってしまう/バッテリーの消耗が激しいなど)電力と熱の管理にいくつかの大きな課題が生じる可能性があります。

上記のようなハードウェアの問題と合わせて「製品がスマートフォンやクラウドとどのように通信し、深度情報とデジタルオブジェクトの前後をどのように認識して、どのように視覚的な効果を処理するか」などのソフトウェアの問題にもチームは同時並行で対処していく必要があります。

ARが社会において重要な役割を果たすことは明らかですが、その実現には多くの困難があります。

Steen Strand氏の率いる「SnapLab」は、それらをSpectaclesで実現しようとしています。

 

 

SnapがARグラスに投資し続ける理由とは

Snapは、2016年後半に発表された最初の「Spectacles」、続いて発表された「Spectacles 2」でも商業的に成功していません。それにもかかわらず、Snapは年々新しいバージョンのSpectaclesをリリースし続けています。

SnapのCEOであるEvan Spiegel氏は、この「Spectacles」プロジェクトに初日から関与しており、徹底した投資の姿勢を貫いています。

Snapは明らかにARの未来を見ており、Snapのあとを追うように後発参入は続いています。

AppleFacebookはARメガネに取り組んでいると噂され、MicrosoftはすでにHoloLensと呼ばれるARヘッドセットを開発者限定で販売しています。また、Googleは直近でARグラスを開発するカナダのスタートアップ「North」を買収しました。

eコマースの巨人であるAmazonでさえ昨年、「Echo Frames」と呼ばれるAlexa対応のメガネを発表したので、スマートグラス市場は加熱するばかりです。

ARグラスに参入する各プレイヤーは最終的にはスマートフォンに取って代わるスマートグラスを見ていますが、それにはしばらく時間がかかります。Steen Strand氏は以下のように述べています。

将来的にARグラスの使用は劇的に増えると私たちは考えていますが、十分な機能を備え、非常にアクセスしやすい価格帯で提供し、この事業で成功するためには、少なくとも10年はかかるでしょう

この先もARグラスを巡る各社の展開から目が離せません。

 

まとめ

日本ではあまり馴染みのないSnapchat(スナップチャット)ですが、彼らは自社のことを「カメラ会社」と呼んでおり、今後ハードウェアにおいてもその影響力を延ばす可能性が十分にあります。

「ARマーケティングラボ」を運営するOnePlanetでは、Snapchatが提供しているようなブランド向けの特別なARエクスペリエンスを国内で先駆けて開発・提供しています。

ARのビジネス活用を検討していましたら、お気軽にご相談ください。

 

参考記事:Interview: Snap’s hardware head on Spectacles 3, future of augmented reality