
現在、様々な業界でマーケティングソリューションとして注目される「AR」。
御多分に洩れず、スポーツ業界のマーケティングにもARの波は押し寄せており、先行して海外では非常に面白い事例が出てきております。
国内のスポーツ業界でもAR活用が広がればもっと楽しくなるはず!ということで、そこで本記事では海外で先行しているスポーツ業界でのAR活用事例を集めてみました。
とくにチームだけでなくスポンサー側を巻き込んだAR施策の事例もあり、企業側も含めてやはり先行しているなと感じさせます。
この記事では特にInstagramのAR活用に絞って特集していますが、InstagramのAR以外も含めた様々なスポーツ×ARの可能性にご興味がある方は以下の記事をご参照ください。
そもそもARとは
ゴーグルをはめるVRの方がイメージが湧きやすいと思うのですが、VRは「Virtual Reality」の略で、VRのゴーグルがスマホに置き換わった版がARと考えるとわかりやすいかもしれません。ARとは「Augmented Reality」の略で、一般的に「拡張現実」と訳されます。
ゴーグルの中のバーチャルワールドではなく、実在する風景にバーチャルの視覚情報を重ねて表示することで、目の前にある世界を“仮想的に拡張する”というものを「AR」と総称します。
VRとの違い
ARと似た言葉としてVRというものがあります。VRとはVirtual Realityの略であり、VRゴーグルを装着した向こう側の世界が100%バーチャルな世界になる体験を指し、まるで自分がデジタル世界に入り込んだような感覚になります。VRも3Dなどのデジタル表現を駆使したものですが、現実世界にバーチャルな視覚情報を重ね合わせるARとは異なる体験といえるでしょう。
ARとマーケティングの相性がいい理由とは
ARとマーケティングは、相性のよい組み合わせです。なぜARとマーケティングは相性がよいといわれているのかを解説します。
ユーザーも楽しめる
ARの大きな特徴が、ユーザーが楽しみながら情報を得られることです。ARを取り入れた広告は、企業側が伝えたい情報を届けるだけではなく、ユーザーが能動的に楽しめます。結果として、ユーザーの記憶に残るうえに、企業に対し好印象を持つようになるというメリットがあります。スポーツ業界であれば、スタジアムに行けなくても目の前の現実世界に選手が出現してくれるようなAR体験はファンの心を動かしますよね。
情報が拡散されやすい
先述のとおり、ARはユーザーに楽しい経験を与えながら、情報が届けられます。楽しかった、興味深い体験だったという印象が残れば、ユーザーがその経験を誰かに伝えたくなります。SNSなどのユーザー数が多いプラットフォームで紹介されると、さらに拡散されて多くの人にリーチできるでしょう。
スポーツ業界のAR活用事例10選
海外では様々なスポーツビジネスのマーケティングでARがすでに取り入れられています。それではさっそく具体的な活用事例を見ていきましょう!
事例①Mavericks(マーベリクス|NBA)
NBAチームMavericksのARマーケティングの事例です。こちらはInstagramのARを活用した事例となっています。
Dennis Smith Jr.選手のスラムダンク
ポイントガードであるDennis Smith Jr.選手の巨大な壁画が実際に設置され、その壁画を画像として認証すると、同選手のAR(拡張現実)を介したスラムダンクを見ることができる、というものです。2018年のものですが、めちゃくちゃ格好良いのでぜひ一度ご覧ください。
この事例について、マーベリックスのCMO(最高マーケティング責任者)であるJerome Elenez氏は当時、以下のようにチームプレスリリースで発表しました。
「私たちは拡張現実でこれほど大きなことをした最初のチームであり、そのことをファンに誇りを持ってもらいたいです」
また、クリエイティブ制作会社側でも以下のようと述べています。
「スポーツ業界はデジタル時代の消費者とのコミュニケーションに、広告の次のフロンティアを模索しています。今回の取り組みは、スポーツチームがARを使用してファンと交流するより創造的な方法の1つです。」
確かにこのARが自分の友人のInstagramのストーリーなどで表示されたら「自分も現地の壁画を見に行って、ARを体験してみたい」と感じる人もいるのではないでしょうか。
Which Mav are you?
残念ながらNBAチームMavericksの公式アカウントで先ほどのARは現在は使えなくなっていますが、別のARが使えるようになっていました。
頭の上にランダムに選手のイラストが表示されるルーレットのような機能があり、ファンとのコミュニケーションに活用されています。
選手の顔を知るファンからすると、「xx選手が出た!」というストーリーの投稿が多く溢れたのではないかと想像します。ぜひ一度覗いてみて下さい。
事例②Warriors(ウォリアーズ|NBA)
ウォリアーズとは、カリフォルニア州サンフランシスコに本拠を置く全米プロバスケットボール協会(NBA)のチームです。
こちらもInstagramで楽しめる、所属選手のルーレットが楽しめるフィルターです。
選手がイラスト調になっており、ポップな雰囲気のフィルターです。
事例③Boston Red Sox(ボストン・レッドソックス|米プロ野球)
複数回ワールドチャンピオンを経験している伝統あるメジャーリーグベースボールを代表するプロ野球チームのInstagramを活用したARマーケティングの事例です。
which player are you
こちらはインカメラで楽しめるルーレットフィルターです。頭の上に選手のイラストがランダムに表示される定番のフィルターになります。
Winter Weekend
こちらも同じくインカメラで楽しむフィルターです。
ベースボールキャップを被りながら、冬の雰囲気を楽しむことができます。
事例④Bundesliga(ブンデスリーガ|ドイツ プロサッカーリーグ)
ブンデスリーガはドイツのプロサッカーリーグです。1部、2部それぞれ18クラブ、3部20クラブの合計56クラブが所属しており、観客動員数では世界第1位の人気なプロサッカーリーグとなっています。
Borussia Dortmund
こちらはブンデスリーガの強豪チーム「ドルトムント」のペイントを楽しめるフィルターです。
ほっぺたにブランドのロゴが表示され、チームカラーのペイントを楽しむことができます。
その他のフィルター:1部に所属する全てチームのフェイスペイントが楽しめる!
ブンデスリーガのアカウントの特徴は1部に所属する全てチームのフェイスペイントが楽しめるのが特徴です。
リーグアカウントの取り組みとしてとても面白い事例です。
国内でもリーグ全体を盛り上げる施策として真似をして展開できると理想ですね!
事例⑤レアル・マドリード(スペイン プロサッカーチーム)
国際サッカー連盟(FIFA)世界ランキング上位を誇るスペインの1部リーグに所属する強豪。「銀河系集団」「白い巨人」などの異名を持ち、純白のユニホームで知られている。各国からスター選手をかき集め、ジダン、ロナウド、ベッカムらがプレーしたクラブチームです。
Instagramで楽しめるARフィルターをマーケティングに活用しており、レアル・マドリードのフェイスペイントを楽しめるフィルターになっています。
c
事例⑥ペプシ(スポンサー編)
面白い番外編として、スポンサーである企業が逆にスポーツを活用してARマーケティングを仕掛けている事例として「Pepsi」ご紹介します。
国内でもスポンサーとチームがタッグを組んだAR開発が加速すると理想的ですね!
以下は補足として、スポンサーとスポーツとの関係性からARのご紹介をさせていただきます。
ペプシとフットボールとの関係性
ペプシコーラは、アメリカ合衆国ニューヨーク州に本社を置くペプシコ社の所有により全世界で展開されているソフトドリンクブランド。日本ではサントリーが展開しています。
ペプシとフットボールの関係をまとめた「ペプシがサッカーに恋している理由」という以下の記事によると、
フットボールのファンと繋がることで、ペプシはポップカルチャーの象徴的なブランドになった
という表現があります。
フットボールはポップカルチャーを代表する存在であり、そのフットボールを楽しむ空間をさらに盛り上げる演出としてペプシが存在してきた、ということでしょうか。マーケティング戦略から見ても、両者は共に成長してきた重要なパートナーだと考えられるのでしょう。
以下からARの詳細を見ていきます。
Play × Messi
実際のARフィルターを見てみましょう。
同アカウントでは7つのARが提供されていますが、どれも同じく選手が自分の目の前に出現してリフティングをする様子を見ることができるというAR体験になっています。
流れとしては、まず何もない自宅の床のようなスペースにペプシのロゴが目の前の床に出現し、そのロゴから穴が空いて、地下から選手が出現するという3Dアニメーションの演出が起こります。
画面をタップすると、その選手のリフティングが始まります。
しかもゲームになっており、タイミングよくタップをすることでリフティングが続くようになっています。
自宅などプライベート空間の目の前であのスター選手がリフティングをしているなんて!というユニークなAR体験を提供しています。
3Dモデルを活用したARゲームはブランドとファンを楽しく繋ぐ非常に有効なマーケティングです。日本でもどんどん増えていって欲しいですね!
事例⑦adidas Originals(アディダスオリジナルス|スポーツシューズ編)
スポーツブランドとしては世界的に認知度の高いブランドadidas(アディダス)。
そのadidas(アディダス)のアパレルラインがadidas Originals(アディダスオリジナルス)です。アディダスオリジナルスは2001年からスタートしたライン。ロゴマークの「トレフォイル(三つ葉)」が特徴的です。
こちらは同ブランドの台湾のアカウントから配信されているフィルターです。
ほっぺたにブランドのロゴが表示され、複数の背景から好みのものを選択して壁紙の切り替えを楽しむことができます。
事例⑧RIPNDIP(リップアンドディップ|スケートボーダー向けアパレルブランド編)
こちらはスケートボーダーに人気のアパレルブランドのARマーケティングの事例です。
RIPNDIPとは「スケートスポットで技をMakeしてすぐにその場を去る。」ということを表す言葉であり、RIPNDIPはスケートカルチャーと共に成長してきたブランドです。もう格好良いですね。
このアイコニックな猫ちゃん、ブランドを知らない方もどこかで見たことあるという方もいるのではないでしょうか。日本では原宿にSTOREをオープンしています。
公式Instagramのフォロワー数は134万人。世界に誇る大人気ブランドとして多くフォロワーを抱えており、かつARの種類も非常に多いです。
そのうち、より特徴的な二つをいかに解説していきます。
①スプリング
こちらのARではRIPNDIPのアイテムで使われているであろう春らしい花柄と、メガネが表示されます。
特に空間中に出てくる花にはアニメーションがついており、その独特の世界観をより一層楽しむことができます。以下のリンクから試してみてください。サムネイルからもユニークさが溢れ出ています。
②ARゲーム
こちらはゲームのARです。
余談ですが、Facebook社のAR審査は倫理・モラルに対して時に厳しい態度を取るため「うんこ」のオブジェクトが(少なくともこのAR審査時には)審査基準をクリアできたということがわかります。
こちらのARフィルターはタップすると障害物をジャンプして超えていくゲームになっています。
人気のネコのキャラクターが、OLLIE(オーリー = スケートボードと一緒にジャンプするスケボーで最も代表的な技)を繰り出しながらゲームを進めていく演出は、ブランドのファンを喜ばせる演出ではないでしょうか。
専用アプリ不要の「WebAR」活用も
インスタグラムのようなアプリを使ったARの活用は国内でも増えてきていますが、どうしてもアプリを持っていない層にまで幅広くリーチしようと思うと「いちいちアプリをインストールするくらいなら、面倒なのでARはやらなくても良いか」とせっかくのWow!な体験を提供する前に離脱してしまうケースもあります。
そういった課題に対して、専用アプリ不要の「WebAR」を使ったソリューションが一般化してきています。
WebARの技術によって、従来はARの体験に必要だったアプリを不要にし、スマホで特定のWebサイト(URL)にアクセスしてカメラをかざすだけでARを体験できるようになりました。
以下の事例は、プロバスケットリーグ「Bリーグ」の広島ドラゴンフライズのアリーナ限定ARの事例です。
外部のAR制作会社に頼ることなく、自前でARコンテンツを制作できるAR制作ツールを活用することで、安価にWow!なアリーナ限定ARコンテンツを制作することに成功し、話題を集めました。
詳しくは以下の記事にも紹介されていますので、興味のある方は覗いてみてください。
まとめ
バスケ、野球、サッカー、どのスポーツでも海外はARマーケティングの事例が先行してますね。
そして、企業側もスポーツを活用したブランディング、マーケティングを活用しており、スポーツチームのみならずスポンサー側を巻き込んだAR施策はますます重要になりそうです。
ARを活用したマーケティングは日増しに重要になっており、スタジアムへの誘客や、SNSでの認知拡大には今後必須のアプローチとなるでしょう。
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