スピーカーの「BOSE」はみなさんよくご存知かと思います。
ただ、BOSE社がAR開発にチャレンジしていたことは知らない方も多いのではないでしょうか?
残念ながら、この記事はBOSEによる「音のAR」の挑戦が終了してしまう内容になりますが、「音」がARビジネスにおいて重要であることに変わりはありません。
たとえば、空間にあるバーチャル物体を触った時に音声フィードバックを返すことで視覚情報に一層リアリティを感じさせる「OUTPUTの補強効果」としての音が期待されていたり、Siriのような「声のINPUT」による操作が期待されていたり、「音×AR」はさまざまな可能性に期待が集まっています。
そこでこの記事では、今後重要になる「音のAR」に挑戦したBOSEの取り組みとクローズまでを振り返って行きます。
- BOSEによる「音のAR」とはどのような体験だったのか
- BOSEはなぜ撤退することになったのか
- 音のARの未来について
BOSEの目指したAR体験
Image Credits: Bose
元々のBOSEのARはサングラス型でした。
位置情報を活用した展開を狙っていたようです。
面白いですね。
サングラスのような外観に、ボーズ史上最小、最薄、最軽量という音響システムと、9軸ヘッドモーションセンサーを搭載し、耳を塞がない独自のオープンイヤー設計を採用。スマートフォンのGPSやBose ARアプリを介して、ユーザーの現在地などに合わせた音声コンテンツを提供可能
また、音質については、
完全ワイヤレスヘッドホンのように機能しながらも、その筐体サイズからは想像できないほどのパフォーマンスで、驚きのリスニング体験を提供する
とのことでした。
この辺りはさすがスピーカーメーカーという印象です。
左右両方のグラスのつるの内部に超極小の音響パッケージをシームレスに搭載し、ユーザーにしか聞こえないように音声を出せる設計となっていました。
操作方法は、①タッチコントロールと②音声コントロールの両方に対応し、右側のグラスのつるに搭載されたマイクとボタンで、電源オン、モバイル端末とのペアリング、SiriやGoogleアシスタントの起動、通話、音楽の一時停止/スキップなどの再生操作ができるようになっていました。
特徴としては、他のARグラスやARプラットフォームと異なり、視覚的な体験を提供していない点にありました。
レンズを通して視覚的な変化を与えたり、カメラレンズを統合したり、視界にオブジェクトを重ね合わせるためにスマートフォンのカメラを必要としない点が一つの特徴となっていました。
代わりに、9軸ヘッドモーションセンサーと、iOSまたはAndroidデバイスからのGPS情報を使用して、ユーザーの現在地や向いている方向を把握。
Bose ARアプリを介して、旅行や勉強、エンターテイメント、ゲームなど、様々な分野のオーディオコンテンツを提供して現実世界を拡張できるような仕様になっていました。
BOSEのAR開発 撤退の背景
BOSEのAR開発においては、重要なARチームメンバーが退職し、サードパーティの開発者のサポートは2020年7月中旬に終了することが決定しました。
元々は徒歩のナビゲーションからフィットネスの指示まで、あらゆるシーンでオーディオコンテンツが展開される予定でした。
しかし、BOSE社の広報担当者によれば、「特定の使用例」ではうまく機能したが、「日常の幅広い使用」にはあまり適していなかったとのことでした。
Boseは2020年1月に、世界119店舗の直営店を閉鎖するとも発表していました。
これはオンラインにシフトするためとの理由でしたが、AR開発のクローズについても財政面の苦しさが少なからず影響があったのではないかと考えられます。
他の新規ビジネスの開発と同様にAR開発は不確実性が非常に高く、多くの失敗を前提とした大きな予算が重要であり、その点も今回のクローズの背景にあったのではないでしょうか。
まとめ
音のARには大きな可能性が眠っている一方、それを事業化するには十分な資本力が必要であり、ハードウェア開発に注力しているAppleやFacebookなどのテックジャイアントが優位になる展開が予想されます。
「ARマーケティングラボ」を運営するOnePlanetでは、音を活用したAR体験の開発にもチャレンジしています。オリジナルのARの開発、ARを活用したキャンペーンやブランディングに興味がある方は、お気軽にお問い合わせ・ご相談ください。
関連記事:Bose shuts down AR development(英語)
関連記事:Bose gives up on its augmented reality sound project(英語)