この記事は、社会普及が期待されてはなかなかそのタイミングがやってこない「ARグラス」について、その普及のキーとなる技術について解説したものです。
- 「ARグラス」はそれ単独ではなくスマートフォンとの接続でより高度な処理ができるようになるため、初期のARグラスはスマートフォンとセットで社会普及する可能性がある
- 5G通信でなければより高度なAR体験を実現できないため、ARグラスの普及にはデバイスの問題に加えて5G通信の普及も必要
現状のARグラスの課題
仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)と呼ばれる領域のデバイスやアプリケーション、およびサービスは日々改善してはいるものの、まだ依然としてニッチ市場のままです。
特にARグラスに関して言えば、普及の障害となる背景としてデバイスに電力を供給する技術が依然として高価であることが挙げられます。ARグラスの多くはまだサイズが大きく、長時間に渡って着用するには適していません。
多くの人がARグラスの社会普及に必要だと考えている問題は「機能的な魅力」に加えて「軽量であること」です。
そして、それらを実現するために必要な新たなテクノロジーが目の前までやってきています。そのキーとなる技術は「スマートフォンとの接続」と「5G」です。
ARグラスの社会普及は「スマートフォン」が担う
ARグラスが日常的に顔に着用されるためには、サングラスまたは通常の眼鏡と同程度の重量や大きさのものでなければなりません。
しかし、高品質のAR体験を提供するために必要なコンピューティング、グラフィックス、およびディスプレイテクノロジーをそのサイズに適合させることは、現時点では困難な状況です。
その結果、ARグラスの社会普及を目指す多くの企業は計算要素をメガネ型デバイスから分離する設計を実験し始めています。具体的にはスマートフォンとARグラスを有線で接続することで現時点では不完全なエクスペリエンスを補完し、完全な形で提供しようとしてます。
ほとんどのAppleウォッチャーは「Appleグラスはウワサされているほど現実味はなく、まだフィクションである」と考えており、まだ数年先になるだろうと考えています。
しかし最近、Appleもスマートフォンと接続する思想でARグラスをデザインしているとウワサされており、さらにはiPhoneとメガネ型デバイス間のワイヤレス接続に挑戦している可能性も考えられます。
高度なAR体験を実現するもう一つの鍵は「5G」
今週に開催されたAugmented World Expo(AWE)で、5G対応の半導体チップメーカーであるQualcommは、世界中の多くのスマートフォンメーカーおよび通信プロバイダーと協力し、このARグラスとスマートフォンの2部構成タイプの新しいデザインについて今年中にリリースされる予定であると発表しました。
このWEでのQualcommのスピーチの中でも特に重要だったこととして、ARグラスとスマートフォンの技術仕様が互換性のあるものとなり、シームレスに連携できるようになると言及されましたことが挙げられます。
その結果、NReal、Panasonic、Pico、Oppoなどのヘッドマウントディスプレイは、USB-Cケーブルを介してQualcomm Snapdragon 855または865搭載の5Gスマートフォンと接続します。
これらのデバイスの動作において重要となる技術が5Gです。
メガネ型デバイスとスマートフォンの組み合わせでユーザーにリアルな画質や場所固有の情報を提供するためには、クラウドから高解像度の画像をリアルタイムで取得する必要があります。
大容量データの表示や場所固有のコンテンツ提供など、超高速・低遅延の5G接続を使用したクラウドコンピューティングによって初めてARグラスのユーザー体験が魅力的になります。
マイクロソフトは先週、ビジネス向けのHoloLens 2 MRヘッドセットに5G機能を追加すると発表しました。HoloLens 2はスマートフォンと接続したARグラスの展開とは逆に、ヘッドセット内にすべてのコンピューティング要素を統合しています。その結果、より重く、より高価なデバイスになっています。
まとめ
この記事では、社会普及が期待されているARグラスの普及に必要となる技術的なハードルと、解決のためのアプローチについて解説しました。ARグラスと5Gの社会普及が進むとどのような社会になるのか?という点については、こちらの記事を参考にご覧ください。
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ARマーケティングラボを運営する株式会社OnePlanetでは、ARグラスと5G時代の新しいユーザー体験の創造に挑んでいます。次の時代を見据えたARのビジネス活用を検討している企業様がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
参考記事:How 5G could make augmented reality and mixed reality more real