ARとは「Augmented Reality」の略称で、日本語では「拡張現実」と訳されることが多い技術です。
現実世界にコンピュータによって作られた映像を反映させ、現実世界に仮想世界を拡張させることができます。
近年大きく注目を集めている技術であり、日経クロステックによればAR関連の世界市場は2018年には89億ドルだったのに対し、2019年には168.5億ドルにまで達しているのです。
また、EETimesJapanによれば、2023年には1,600億ドルにまで到達することが予測されており、今後ますますARは私たちにとって身近なものになっていくでしょう。
ARの利用例としては社会現象までになったゲームアプリ「ポケモンGO」や、CGの家具を自室に置いてサイズ感や印象を確認できる「家具試し置きサービス」などが挙げられます。
その他にも消費者向け・法人向け問わず、実にさまざまな形で利用されているARですが、中でも注目を集めているのがGoogleが提供している「動物のARサービス」です。
この記事では、その動物のARサービスについて詳しく解説します。
Google検索では動物のARを楽しめる
それでは、早速Googleが提供している動物のARサービスについて紹介しましょう。
2019年6月にリリースされたこのサービスでは、Google検索にて動物のARを楽しむことができます。
例えば「クマ」と検索すると、以下のように現実世界にクマが登場するのです。
Googleで『クマ』とか『イヌ』とか『ネコ』とか打ち込んで『3D表示』をタップしたらARで出現するやつ。アプリ等は不要です。
昨日教室にウミガメを泳がせたらみんなメッチャ喜んでた。 pic.twitter.com/HvysF0ixWw
— さる@小学校教師|Y.SAKAMOTO (@saruesteacher) June 20, 2020
動画を見てもらえばおわかりいただける通り、登場する動物の3Dグラフィックのクオリティは高く、また動いたり鳴き声をあげたりと非常にリアルです。
あたかもすぐそこに検索した動物がいるかのような感覚を味わえます。
リリース直後は検索言語が英語にしか対応していませんでしたが、2019年9月から日本語にも対応するようになり、それを機に日本でも大きく話題になりました。
ペットを飼いたい方や動物好きな子どもを持つ親御さんなどに特におすすめなサービスと言えます。
3D表示される動物は29種類
その高いクオリティから注目を集めるGoogleの動物のARサービスですが、どんな動物も3D表示されるというわけではありません。
3D表示される動物は以下の29種類(2020年6月末時点)です。
- トラ
- パンダ
- ヒョウ
- ライオン
- チーター
- ヤギ
- ウマ
- クマ
- オオカミ
- シェトランドポニー
- アライグマ
- シカ
- ハリネズミ
- ポールニシキヘビ
- ロットワイラー
- フレンチブルドッグ
- パグ
- ゴールデンレトリバー
- ポメラニアン
- ネコ
- コンゴウインコ
- コウテイペンギン
- イヌワシ
- マガモ
- アメリカアリゲーター
- ホオジロザメ
- ウミガメ
- タコ
- アンコウ
イヌやネコ、ウマ、クマといった一般的に知られている動物は3D表示することができるようですね。
また、ホオジロザメやポールニシキヘビなどの危険動物を3D表示すれば、ARとわかっていても思わずすくんでしまう体験をすることができます。
例のGoogle検索AR、サメやヘビもあった…🦈🐍 pic.twitter.com/PruQOffV7n
— マクロン (@Macron69) October 1, 2019
ちなみに、2020年5月のGoogleの発表によると、人体解剖モデルや細胞、アポロ11号などさまざまな対象物でもAR検索が可能になったことが明らかになりました。
主に教育に関わる対象物を重点に置いてAR検索機能を拡大していく予定のようです。
3D表示される動物にイヌが多い理由
上記のGoogle検索で3D表示される動物たちを見て、「イヌの種類だけ多いな」と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
確かに他の動物が1種類のみであるのに対し、イヌは次の5種類となっています。
- ロットワイラー
- フレンチブルドッグ
- パグ
- ゴールデンレトリバー
- ポメラニアン
では、なぜイヌの種類だけ他の動物よりも多いのでしょうか?
その理由の一つとして挙げられるのが、Googleが「Dog Company」であることです。
Googleには「ユーザーへ誠実な姿勢でサービスを提供する」「プライバシーや表現時の自由を重んじる」などを記した、「Code of Conduct(行動規範)」があります。
そして、その中には「Dog Policy(犬のポリシー)」というものがあり、その内容は「We like cats, but we’re a dog company(ネコのことも好きだが、私たちはイヌ好きの会社だ)」となっているのです。
ちなみに全文は以下のとおりです。
Google’s affection for our canine friends is an integral facet of our corporate culture.We like cats, but we’re a dog company, so as a general rule we feel cats visiting our offices would be fairly stressed out.However, before bringing your canine companion to the office, please make sure you review our Dog Policy.(イヌの友達に対するGoogleの愛情は、私たちの企業文化において必要不可欠な側面である。ネコのことも好きだが、私たちはイヌ好きの会社だ。そのため原則として私たちのオフィスを訪れるネコは強いストレスを感じてしまうだろう。なお、イヌの同伴者をオフィスに連れて行く前に、必ず犬のポリシーを確認してほしい。)引用元:Google
このDog Policyによって、3D表示される動物の中でも特にイヌの種類が豊富になっていると考えられます。
よりリアルに動物を感じられる奥行き認識機能
ハイクオリティな3Dグラフィックや動いたり鳴いたりすることによって、高い再現度を実現しているGoogle検索による動物のAR。
これらに加え、「奥行き認識機能」も3D表示される動物をリアルに感じることができる理由の一つです。
2019年12月に実装されたこの機能は、周囲の環境を認識し隠れるはずの部分を隠して動物を表示することを可能としました。
ウマの下半身が家具によって隠れたり茂みの中からクマが顔だけ覗かせたりといった、より自然な3D表示が行えるのです。
この機能は「オクルージョン(隠蔽)」と呼ばれ、デバイスの動きから少しずれた画像を何枚も取得・比較を行うことによって、各画素がどれくらい手前もしくは奥にあるかを認識することができるのです。
大きさを自由自在に変えることも可能
Google検索による動物のARは、動物の大きさを自由自在に変えることができることも特徴の一つです。
デバイス画面をピンチイン・ピンチアウトすることで、1%〜1,000%まで大きさを変更することができます。
最大の1,000%まで大きさを変更すれば、体高10メートルはあろうかという巨大生物を誕生させることができ、室内ではまず画面に収まらないでしょう。
反対に最小の1%にすれば、ホオジロザメやトラといった見た目が恐ろしい生物でも手乗りサイズにすることができ、現実世界では見られないかわいらしさが生まれます。
このようにハイクオリティな3D表示などによるリアルさだけでなく、サイズ変更によって非現実的な生物を誕生させることもGoogleの動物xARサービスの魅力です。
利用できるのはAR対応デバイスのみ
Google検索を行うだけで利用できる動物のARですが、一点注意事項があります。
それは、動物のARを利用できるのはAR対応デバイスのみであるということです。
対応デバイスでない場合は残念ながら、動物のARを日常空間に表示させて楽しむことはできません。
なお、AR対応デバイスであるかどうかは「ARCore対応デバイス Google Developers」(英語)にて確認することができます。
Googleの動物のARサービスを利用する手順
これまで紹介したように、Google検索にて29種類の動物のARを楽しむことできます。
では、どのようにして利用することができるのでしょうか。
早速以下にて、その利用手順を解説します。
- 動物の名前をGoogleで検索する
- 「3D表示」をタップする
- カメラが起動し表示したい場所にデバイスをかざす
- 動物が3D表示される
ステップ①:動物の名前をGoogleで検索する
最初に、動物の名前をGoogleで検索しましょう。
今回は、ハリネズミのARを利用したいケースに沿って説明していきますね。
まず、下のようにGoogleで「ハリネズミ」と検索をします。
ステップ②:「3D表示」をタップする
AR対応デバイスを用いている場合は、下のように検索結果に「3D表示」があります。
この「3D表示」をタップします。
ステップ③:カメラが起動し表示したい場所にデバイスをかざす
「3D表示」をタップすると、自動的にカメラが起動します。
そして表示したい場所にデバイスをかざします。
ステップ④:動物が3D表示される
カメラ起動後、問題なければデバイスをかざした先に下ようにハリネズミが3D表示されます。
以上がGoogle検索で動物のARを利用する手順です。
非常に簡単であることがおわかりいただけたと思います。
使用しているデバイスがAR対応であれば、どなたでも29種類の動物のARを楽しむことが可能ですよ。
AR対応デバイスなのに動物が3D表示されない場合の対処法
利用手順も容易で、誰でも簡単に楽しめるGoogleの動物のARサービス。
しかし、AR対応デバイスであるにも関わらず、このサービスが利用できないというケースが時折見られます。
そのような際に行うべき2つの対処法を紹介していきます。
- 「Google Play 開発者サービス(AR)」アプリをインストールする
- プライバシー検索をオンにする
対処方法①:「Google Play 開発者サービス(AR)」アプリをインストールする
最初に紹介する対処法は、Google Play開発者サービス(AR)アプリをインストール方法です。
このアプリは自動インストールされ、ARCoreで構築されたARを体験することを可能とするものです。
ARが利用できない場合は、何らかの原因でこのアプリうまく作動していないケースが考えられます。
そのため、Google Playの「Google Play 開発者サービス(AR)」ページからをインストールしましょう。
対処方法②:プライバシー検索をオンにする
もう一つの対処法は、プライバシー検索をオンにする方法です。
その手順を画像を交えながら紹介していきましょう。
最初に、Google検索画面にて下のように下部(デバイスによっては上部)にある「設定」をタップします。
すると、「検索設定」が開き、下部に「プライベート検索結果」があります。
そして「プライベート検索結果を使用する」にチェックをすれば、ARが利用できない症状が改善されます。
AR対応デバイスなのに動物が3D表示されない場合の2つの対処法を紹介しました。
が、これらを試してみてもどうしてもトラブルが改善しないということも考えられるでしょう。
そのような際は、Google検索ヘルプを利用してください。
Google以外の動物のARサービス
これまで、Googleが提供している動物のARサービスについて紹介してきました。
しかし、動物のARサービスを提供している企業はもちろんGoogleだけというわけではありません。
動物のARサービスを5つ紹介しましょう。
- ヴォン太のラジオ たいそう だい1(ワン)
動物AR①:ヴォン太のラジオ たいそう だい1(ワン)
最初に紹介する動物のARサービスは、アプリフリーAR「ヴォン太のラジオ たいそう だい1(ワン)」です。
2020年5月に株式会社ヴォンズ・ピクチャーズがリリースしました。
アプリフリーARとは専用アプリを必要とせず、スマホのWebブラウザからARを楽しむことができる技術です。
そのため、どこでも好きなところで犬のヴォン太を登場させ、ラジオ体操を行うことができます。
このアプリを利用すれば、楽しみながら運動不足を解消することができるでしょう。
次の手順で「ヴォン太のラジオ たいそう だい1(ワン)」体験することができます。
- スマホで「特設ページ」にアクセスする
- アクセスを許可後、3Dの「ヴォン太」が現実空間にARとして登場、ラジオ体操が開始される
- ARカメラ起動中の画面右下のカメラアイコンから写真撮影や保存をすることができる。
動物AR②:ひみの海探検館
画像引用元:中日新聞
次に紹介する動物のARサービスは「ひみの海探検館」です。
ひみの海探検館は富山県氷見市にある博物館です。
2020年6月6日にリニューアルされ、それに伴ってARサービスが導入されました。
館内には、大型定置網の中に魚のプレートが吊るされた「ARストリーム」があります。
魚のプレートにはARマーカーがつけられており、スマホをかざすと魚の情報を読み取ることができるのです。
この魚のプレートはいずれも氷見漁港で揚がる種のものであるため、ARによって富山湾の代表的な魚を学ぶことができます。
そのほかにも四面の大型スクリーンを用いて、海中にいたり船上で漁をしたりといった気分を味わえるVRシアターを新設するなど、先進的な取り組みを行っています。
動物AR③:Wildeverse: a wildlife AR game
次に紹介する動物のARサービスはゲームアプリ「Wildeverse: a wildlife AR game」です。
2020年4月にケニアのゲーム会社「Internet of Elephants」がリリースしました。
プレイヤーはARジャングル内を探索し、3D表示された動物や痕跡を探すミッションに挑戦します。
そして、クリアすると動物保護のための知識を学ぶことができるのです。
クリア後に動物保護のための知識が表示されることからわかるように、「Wildeverse: a wildlife AR game」は絶滅危惧種やその保護を行なっている人を世に発信することを目的として作られました。
次の手順で「Wildeverse: a wildlife AR game」を遊ぶことができます。
- 「Wildeverse: a wildlife AR game」をインストールする
- 起動後、ユーザーネームを英語で登録する(日本語では文字化けを起こします)
- ゲームスタート後、「CHAT」に移動し、ミッションや成果について説明を受ける
- 「WILDVERSE」に移動し、ミッションを開始する
動物AR④:Miaotu World
次に紹介する動物のARサービスは「Miatou World」です。
2019年9月に三星サポート株式会社が行なったクラウドファンディングサイトにて公開したサービスで、公開初日で目標金額を達成しました。
スマホの動物が描かれたカードをかざすとトラやラクダ、ペンギンなどのARが登場。
動物の姿とともに各言語の動物の名称も表示されるため、楽しみながら言語学習を楽しむことができます。
なお、16ヶ国の言語が収録されています。
付属されたツールカードを組み合わせると動物がより多様な表情を浮かべるようになるなど、さらに楽しめる工夫がなされているのです。
小学5年生・6年生が習っていた英語教育の内容が3年生・4年から習うように義務化されるなど、英語教育の重要性が高まっている昨今において、非常にニーズが高いARサービスと言えるでしょう。
動物AR⑤:学研の図鑑LIVE~ジャングルの生き物~
出典:株式会社学研プラス
最後に紹介する動物のARサービスは「学研の図鑑LIVE〜ジャングルの生き物〜」です。
2019年6月に株式会社学研ホールディングスのグループ会社である株式会社学研プラスがリリースしました。
この図鑑では無数のワニが群れる川やジャガーに追われ川をジャンプしながら渡るカピバラなど、アマゾンや東南アジアのジャングルに生息している動物たちを生き生きとした姿を見ることができます。
そして、この図鑑の最大の特徴は、指定したページをスマホでスキャンするとジャガーやトラ、キングコブラなど10種類のジャングルに生息する生き物のARを楽しめることです。
「アラプリ」という専用アプリ(無料)をダウンロードすれば、さまざまな角度からジャングルの生き物を観察することができます。
また、一緒に写真を撮ることも可能で、まるでジャングルに探検に行ったかのような感覚を味わうことができます。
まとめ
Googleの動物のARサービスやその利用手順、およびGoogle以外の企業が提供している動物のARサービスについて紹介しました。
現状としてそのクオリティの高さや利用しやすさから「動物のARと言えばGoogle検索」というイメージが強いです。
しかし、冒頭でも触れたようにAR市場は年々成長を遂げており、より多くの企業が動物のARに取り組むようになることが予想されます。
そして、それに応じて動物のARもますます多様化してくことでしょう。
今後はどのような動物のARサービスを楽しむことができるようになるのか期待ですね。
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