ARアバターをSNSで活用する5つのステップ!TikTokにおける実例とその過程

カナダの人気アーティストCARYS(カリーズ)を知っていますか?

彼女の楽曲は「TikTok」を通じて大ヒットを記録しました。

そして、ワーナーミュージックでは、CARYSのファンのための魅力的なコンテンツ体験として「ARアバター」を作製し、ファンとの新しいコミュニケーションの在り方を示しました。

この記事では、ワーナーミュージックがARアバターを作製する過程を追いかけていきます。

なお、この記事は英語の「Making AR Avatars With BrioVR – From Scanning To AR」を日本語に訳し、解説を加えたものです(原文へのリンクは記事の一番下にあります)。

この記事を読むとわかること
  • ARアバターを活用したTiktokキャンペーン
  • ARアバター制作からSNS展開までの5つのステップ

ARアバターを活用したCARYS(カリーズ)のTikTokキャンペーン

カナダの人気アーティストCARYSが2019年にリリースした「Princesses Don’t Cry」は、若年層に人気のSNS「TikTok」を通じて大ヒットを記録しました。

この曲を使用した動画が850,000本以上も制作されたことで多くの人のその楽曲が届きました。

ワーナーミュージックは、CARYSのファンのための魅力的なコンテンツ体験として、ARアバターを作製しました。

ファンたちは #PrincessDanceChallenge ハッシュタグで彼女と一緒に自分のダンスをキャプチャしたかったのです。

この動画の後半に、その様子を見て取ることができます。

 

この記事では、人気アーティストCARYS(カリーズ)がSNSのキャンペーンで導入した「ARアバター」について、その作製方法を5つのステップに分けて解説していきます。

ARアバターの作製ステップ
  1. 3Dスキャン
  2. 3Dモデルのクリーンアップ
  3. テクスチャ
  4. アニメーションのモーションキャプチャ
  5. ARアバターの準備

ステップ①:3Dスキャン

CARYSをスキャンするために、144のデジタル一眼レフカメラを備えたSpinVFX社の3Dスキャンリグが利用されました(下の画像を参照)。

リグは可動式であり、通常、Netflixで人気のドラマやTV撮影のスキャンに使用されます。

このプロジェクトでは、CARYSは単一の3Dスキャンでキャプチャされました。

SpinVFX社の3Dスキャンリグ

さらに、SpinVFXスキャンチームはスキャンリグを使用して、参照用にダンスのあらゆるポーズをキャプチャしました。

顔の表情を変えることもダンスの一部なので、彼女の顔のクローズアップ写真も撮影されました。

優れた3Dスキャン設備や3Dモデルがある場合でも参照資料は常に重要になるため、できるだけさまざまなシーンをキャプチャすることが大切です。

 

ハリウッドのような3Dスキャン装置がなくても、品質に差はありますが3Dスキャンは可能です。

オンラインでスキャンソフトウェアが利用できることに加え、Display.Landなどのアプリであればモバイルでも利用できます。

ピクセル数が多いほどスキャンで得られる詳細が高まるため、高解像度のカメラを使用することを推奨します。

ステップ②:3Dモデルのクリーンアップ

メッシュがスキャンされた後、数百万のポリゴンで構成されるモデルになります。

ただし、これではモバイルデバイスで実行するには重すぎます。

ARでアバターがスムーズに表示されるためには、スキャンを「クリーンアップ」してサイズを最適化する必要があります。

これによりスキャンしたデータがアニメーションに適したものとなり、ARで適切に表示されます。

 

スキャンをクリーンアップするには、スキャンに適合する新しいポリゴンをトレースする機能を持つ3Dツールが必要になります。

Maya、Mudbox、3D-Coat、Zbrush、Blender、Meshlab、Meshmixerなどの3Dツールにはすべて、ポリゴンをトレースするための優れた機能を備えています。

SpinVFXでは今回、Mayaとその中のリトポロジーツールを使用してCARYSのクリーンな結果を取得しています。

このような3Dツールを利用して穴を埋め、ノイズを平滑化していくことができます。

この際、アニメーションのステージに到達したときに正しく変形できるように、キャラクターの関節の周りに十分なエッジループがあることも確認してください。

 

ここまで準備が進んだら、次の「テクスチャ」の工程に進むために「UV処理」を行います。

UV編集ツールは、Maya、3D Max、Rizom UV、Blender、Modo、Zbrush、3DCoatなどの3Dツールに機能として含まれています。

ステップ③:テクスチャ

写真測量のメリットは、3Dモデルに貼り付けるテクスチャに最初に撮影した写真をそのまま再適用できることです。

これにより、美しい外観をすぐに作製することができます。

テクスチャ

CARYSの場合、クリーンなモデルをRealityCaptureソフトウェアにインポートし、写真をモデルに投影し直しています。

ステップ④:アニメーションのモーションキャプチャ

CARYSモデルの準備中、彼女はSpinVFXスタジオに招待され、ストラップベースのモーションキャプチャスーツでダンスを披露しました。

彼女を正確に再現するには、彼女の動きを非常に正確に捉える必要があるためです。

カメラは、彼女がいくつかの「テイク」を実行している間、2つの異なる角度から彼女を記録するように設定されていました。

この参照資料は、主要な関節だけでなく、指などの小さい付属肢の精度を確保するためにも重要でした。

ダンスを披露

リギング

モデルとモーションキャプチャが完了すると、単純化された一連のコントロールを使用して関節の役割となる「リグ」が作製されました。

この作業をリギングと呼びます。

関節のバランスを取るように細心の注意を払いながら、ARデバイスでの再生中に解剖学的に動きが正しくなるように調整されました。

アニメーション

アニメーションに微妙な指、頭、肩の動きを加えることで、より現実的でリアルに見せることができます。

ARのアニメーションはループで再生されるため、アニメーションがループをスムーズに完了することを確認してください。

CARYSの場合、開始位置に強引に戻ってループを始めるのではなく、ポーズを最後に追加して単一のまとまりのある動きに見えるようなループバックの演出が行われました。

アニメーションのフレームが多いほどファイルサイズが大きくなり、それに伴い読み込み時間が長くなりパフォーマンスが低下するため注意が必要です。

ステップ⑤:ARアバターの準備

次に、モバイルアプリで使えるようなファイル形式に変換していく工程を経て、ようやくiOSとAndroidで同じように実行される一意のURLが提供されます。

そのリンクは、すべてのソーシャルメディアプラットフォームを含め、リンクを持つオンラインのどこでも共有できます。

また、Webサイトに埋め込むこともできます。

 

ARはモバイルデバイスとタブレットデバイス専用ですが、デスクトップユーザーはシーンを3Dで表示することができます。

よりリアルなARアバターは、こうした長い道のりを経て初めてSNSで人々に利用されるところに到達するのです。

まとめ

テレビのようなマスに向けられた一斉プロモーションの在り方は、これからますます一人ひとりに個別化されたプロモーションへと移行していくことでしょう。

この不可逆な流れの中で「タレント」「アーティスト」のような限りある存在は、今回のように多数のデジタル一眼レフで撮影されて生成される3Dアバターのようなフォーマットに変換することで、本人のリソースを使わずとも一人一人のユーザーに個別化された体験として提供できるようになります。

 

「ARマーケティングラボ」を運営するOnePlanetでは、企業がユーザーに表示させたい情報を3Dコンテンツ化してユーザーの空間へと表示させるAR体験の開発のお手伝いをしています。

ユーザー一人ひとりに個別化された体験の創造はますます重要になっていきます。

こういったニーズに対して3DモデルとARの組み合わせはベストソリューションです。

3DやARのビジネス活用を検討していましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

 

参照記事:5 Steps for Making AR Avatars