小売店店舗やECサイトの販促にARを活用する方法

いま最も大きな変化を求められている業界の一つに小売業界があります。

そして小売業界では「AR」という技術が注目を集めています。

この記事は、実店舗とウェブショップ(ECサイト)の両方で販売促進の武器となるARについて、その活用方法を具体的な事例を交じえながら分かり易く記載したものです。

ウェブショップや実店舗でAR導入を考えている方の参考になれば幸いです。

そもそもARとは?

そもそもARは「Augmented Reality(=拡張現実)」の略です。

ARによく似た技術に「VR」がありますが、VR(Virtual Reality・仮想現実)はVRゴーグルの中の100%バーチャルな仮想世界にユーザーが入り込む体験を指します。

それに対してARは、スマホなどのデバイス越しの現実世界にバーチャル映像を重ねて表示させる技術のことを指します。100%バーチャルがVR、現実世界にバーチャルな味付けをしたものがARという棲み分けです。

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では、そのARが実店舗・ウェブショップにもたらす影響を見ていきます。

ARが小売業界にもたらすメリット

ARの価値は①機能的な価値 / ②情緒的価値の二つに分類できます。

①機能的価値
ECサイトで商品を購入する前に「実物を見ていないけど本当にこれで大丈夫かな」と感じるユーザーの不安に対して、目の前に3Dモデルを表示することで不安を払拭する「バーチャル試着」のような役割を指します。

②情緒的価値
スマホのカメラ越しの現実を拡張することで起きる「楽しい」「可愛い」というよう感情的に豊かになる役割を指します。スマホカメラで撮影する際に、自分の顔に可愛いうさぎの耳が生えてくるような画像や動画を見たことがある人は多いのではないでしょうか。

上記の4つの区分にARの活用方法を分解し、それぞれについて事例と共に解説をしていきます。

 

1-①:ウェブショップの機能的な価値を高めるAR

従来のネットショッピングの課題として「実店舗と違ってサイズの確認ができない」「自分に似合うか確かめたいが試着ができないというポイントがあり、ここで多くのユーザーが離脱しています。

<メガネの試着AR>
海外のD2Cメガネブランド「WARBY PARKER」が提供している試着ARアプリは、この課題を解決する精度の高い試着体験を提供しています。以下の動画は、本物かバーチャル(AR)か見境がつかないほどです。

現在のメガネのオンライン試着はまだ2Dのメガネ画像を自分の顔に合わせる体験が主流です。しかしARを活用すれば2Dよりもさらにリアルな3D試着体験をユーザーに提供できるため、ウェブショップの販売を伸ばすことができます。

例えば、視力検査を必要としないメガネ(お洒落目的のファッションメガネ、ブルーライトカットやUVカットのメガネ、サングラス等)であれば、ウェブショップで購入する前の不安は「サイズは合うかな」「似合うかな」という心理が大きなシェアを占めます。

試着ARはその不安を払拭し、ネットショッピングで購入する前に離脱してしまうユーザーが購入までたどり着くサポートをしてくれます。

<IKEAの家具試し置きAR>
こちらのIKEAが提供している家具を試し置きできるARも同様に、ECサイトでの購入前の不安を払拭する役割を果たしています。

ARを活用したウェブショップ / ECサイトの販売促進は、メガネ、家具以外でもアクセサリー、化粧品、シューズなど様々な業界での事例があります。

ウェブショップ / ECサイトの販売促進を実現するAR活用事例だけをまとめた記事もありますので、ARを活用してオンラインセールスを伸ばしたいという方はこちらのIKEAの記事もご覧ください。

関連記事:ARが小売業界に与える効果とは?店舗やECサイトでの有効活用方法

1-②:ウェブショップの情緒的な価値を高めるAR

ARを活用して販売促進を実現するような実利に直結したアプローチとは別に、商品の世界観やブランドのキャラクターなど、自社商品に関連する情報をユーザーが楽しめる形式で提供することも有効なARの活用方法です。

例えばアウトドアフリーク/キャンパーに人気のカナダ発のアパレルブランド「ジムマスター」では、自宅で焚き火ができるようなAR体験をInstagramで提供しています。

一緒に焚き火をしているおじさんは、ジムマスターで人気のアイテムにプリントされているキャラクターです。

従来の広告であれば企業/ブランド側からユーザーに向けられたPUSH型と呼ばれる形式が一般的でしたが、ARであればジムマスターの事例のように自社のアイテムをユーザーの生活に溶け込む形で提供することができます。

ブランドへの好意的なイメージを生み出す「広告としてのAR活用」は初めに紹介をした試着ARよりも効果は間接的です。

しかし、ユーザーの「自分の意図しない広告表示を嫌う心理」は日増しに高まっており、生活に溶け込む広告フォーマットとしてのARは重要性を増していきます。

2-①:実店舗の機能的な価値を高めるAR

ARは従来の実店舗で起きている様々な問題を解決することができます。

代表的なAR活用方法として「店舗で商品を手に取っただけでは分からない情報」をARで拡張して表示させることで購買促進するアプローチがあります。

こちらは11歳の男の子がアップルのARKit2.0を使って開発したARです。ゲームのパッケージを読み取ると実際に購入をした後の体験が空間に表示され、とてもワクワクします。ARがいかに購買したい心理を生み出すのか、リアリティを持って掴めるのではないでしょうか。

<商品を手に取っただけでは分からない情報の表示
上記の事例以外でも、例えば「値段や原材料・生産国・生産者情報が知りたいけど、商品に表示されていない」といった問題に出くわしたことがある方もいるのではないでしょうか。

商品にスマホをかざすと他の人のレビューや生産者・原材料などの情報が表示されるARの使い方は、今後より一般化していくと考えられています。

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「店舗で商品を手に取っただけでは分からない情報」をARで拡張して表示させることで、購入に向けた心理的な安心・安全を高めることができます。

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<ナビゲーション
また、大型店舗だけでなくコンビニやスーパーであっても「自分の欲しい商品がどこにあるか分からない」「けど店員さんに聞くのはちょっと憚られる」という心理になったことがある人も多いのではないでしょうか。

そのような問題にもARは有効活用されます。以下のように、お店の入り口に至るまでに購入したい物をリスト作成しておき

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欲しいものが陳列されている棚まで迷わずナビゲーションしてくれるような機能もARで提供されていくと考えれています。

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それ以外にも実店舗の機能的な役割を高めるAR活用事例は様々あります。

ARを活用した新しいストア体験、新しいカスタマーエクスペリエンスを提供したいという方は、実店舗でのAR活用事例をまとめたこちらの記事も合わせてご覧ください。

関連記事:ARを活用した新しいストア体験 / 新しいカスタマーエクスペリエンス

2-②:実店舗の情緒的な価値を高めるAR

ARを活用した実店舗の体験拡張は、商品説明や店舗内のナビゲーションにとどまりません。

<Walmartのストア内AR>
2018年のクリスマスにウォルマートが実施したHolidays Campaignの様子を見ると、ARが店舗内のエンタメ性を高めていることを理解できます。

記事の冒頭にも記載しましたが、100%のバーチャル世界に書き換えるVRと比べるとARは現実世界にバーチャル情報を重ねて演出するため商品の陳列棚の間にある通路のようなリアル空間に交通の障害物となるものを設置することなくバーチャル情報を表示することができます。

このような情報を見ると、未来のお買い物がこれまで以上のエンターテインメントになることが直感的に理解できます。

<スタバの桜AR>
ストアへのAR導入の先行者として有名なスターバックスは今年、お花見シーズンよりも一足早くストア内でお花見ができる体験を提供しました。

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ストアへのAR体験導入で最も大きなポイントの1つに「ストアスタッフのオペレーション負荷を抑えた設計」があります。スターバックスはその点も秀逸に設計されたARの導入をしています。

店舗のエンタメ化はかねてから言われていますが、ARであれば店舗の内装工事などを必要としないためコスト面で競合優位性を築きやすく、実用化が加速していくと考えられています。以下の記事にもスターバックスの店舗ARについて詳しく解説されているので、よろしければご覧ください。

スタバの「桜AR」を使ったリアル店舗マーケティングについての考察レポート|#スターバックスさくら

まとめ

今回ご紹介したように、ARは小売業界のマーケティングにおいて非常に有用な武器となります。

その一方で、ARのような新たな技術が登場すると、それを利用すること自体が目的となってしまい、「期待して投資してみたけど、イマイチ成功しなかった」という失敗体験となってしまったプロジェクトもあるのではないでしょうか。

導入することによってどのような効果をもたらしたいのか?どうすれば効果的に利用できるのか?ということを事前に検証し、自社に一番効果的な方法でARを導入することが重要になります。

弊社では、様々な業界/業種でのAR導入事例があります。

もし今回ご紹介したようなAR体験の導入にご興味があるという方は、ぜひお気軽にお問合せ/ご相談ください

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